お出かけと挑戦状 3ヶ月目
中間テスト終わって周りは随分と楽しそうにしていた。
実は期末テストがちょっとずつ近づいてきているのにはまだ気づいていないようだが、時間の問題だなと考えていた。
それは私の友達にも当てはまるものだった。
「夏美ー今日の放課後遊ぼ!」
「私は良いけど…優芽は勉強しなくて大丈夫なの?期末頑張らないとさすがにやばいしさ」
「中間終わったばっかりじゃん!今はまだ気にしなくて大丈夫!」
あ、これは期末も勉強できてないパターンだ……
「そういえばさ、デートの予定はいつになったの?」
「でっ…デートって言い方恥ずかしいからやめて!」
そういえばまだ決まってなかったな……
「まだ決まってないから今日LINEしてみる」
「うんうん。ついでに私にも山之上くんのLINE送っておーーー」
言い終わる前に優芽の頭を軽くチョップした。
「いたぁー!それくらいいいじゃんー」
「欲しかったら本人に直接言いなさい!山之上くん優しいから普通に交換してくれると思うよ」
「確かに優しいからねー!好きになっちゃうかも……な、なんてね、ははー!」
私が優芽に無言の圧力を放つとすぐに言葉を誤魔化した。
強欲と思われるかもしれないが、こればっかりは譲れないのだ。
学校が終わり家に帰った。お風呂に入るため浴槽にお湯を出して部屋に戻り、お風呂に入る前にLINEをしておこうか迷っているとちょうど山之上くんから連絡が来た。
突然のことにびっくりして心臓の鼓動が早くなる。
書かれていた内容はやはり今度出かけることについてだった。
『来週の日曜の午後とか空いてる?』
『うん、大丈夫だよ』
『集合場所はショッピングモールの最寄りの駅でいい?』
『いいよ、ところで頭はあれからなんとも無い?』
『霧上さんがすぐに氷袋を用意してくれたおかげですぐに腫れが引いたよ、痛むこともないから問題なし!』
『良かった…それでもし頭に重傷を負ってたらどうしようかと思ってた…』
『まあ、結果的に大丈夫だったんだから一件落着って事で!じゃあまた来週の日曜日に!』
その返事の後私がスタンプを送ったところで会話は終わった。
そのままベットで横になり今さっきまでやりとりをしていたLINEを見てにやけていた。今周りから見るとヤバい顔になってるんだろうなと思いつつも嬉しさを噛み締めていた。
だが、それも束の間、すぐ大変なことに気づく。
「あ、お風呂……」
顔から血の気が引いていくのがわかった。
LINEでやりとりしているうちに何十分も経っていたので明らかに浴槽の容量は超えている。
お風呂場に向かって全力で走り扉を開けると浴槽から溢れている大量の水が……無かった。
「え?なんで…?」
一瞬疑問に思ったがすぐに原因がわかった。
お湯を貯め始める時に栓を閉めるのを忘れていたのだった。
不幸中の幸いと思ったが水もタダではない。
「後でお母さんに謝っておこう…」
そう呟きながらお風呂は諦めてシャワーを浴びた。
それから時間は進み、日曜日の午前
予定を決めた翌日、優芽にLINEのことを聞かれ月曜日楽しみにしておくね!と言われたことを思い出す。
今日のこと洗いざらい聞かれるだろうなぁと思うので何かやらかしてしまうのは避けたい。
そう考えていると少し緊張してきた。
家を出ようと玄関に向かっているとリビングにいるお母さんに声をかけられた。
「どこか出かけるの?普段より気合い入ってるわね……あっ!もしかしてデートかしら?」
少しにやにやしながら含みのある声で聞いてくる。
「ちっ…!ちがう!デートじゃなくてただ友達と出かけるだけ!」
「友達は女の子?」
「うっ……お、おとこ……」
「やっぱりそうじゃないの!」
否定したかったがかえって勘違いされそうなので諦めた。
「じゃあお母さんと話してる場合じゃないわよね!遅くなるなら連絡してね。あと、今日の話楽しみにしてるねっ!」
「だからデートじゃない!」
そう言いながら家を出た。
はぁ…話さないといけない人が2人に増えたなぁ…尚更やらかさないようにしよ。と心の中で呟いた。
電車で集合場所まで向かった。
待ち合わせの時間の十分前に駅に着いたのでまだ来ていないと思っていたのだが山之上くんは改札を通ってすぐのところで壁に寄りかかりながらスマホを見ていた。
私には気付いていなかったようなので近づいて声をかける。
「山之上くん!早いね、待たせちゃったかな?」
名前を呼ぶと私に気づいた。
「霧上さんこんにちは!まだ集合時間になってないし来たばかりだから大丈夫だよ」
「そっか…良かった!」
「今日は私服でなんか新鮮だね!霧上さんその服似合ってて可愛いよ!」
急に可愛いと言われたせいで思考が止まる。
そして身体の温度が高くなっていくのを感じた。
多分今顔が真っ赤になっているだろう。
「そ、そ、そうかな?ありがとう」
とりあえず返事をしたが声が強張ってその場が変な雰囲気になる。
「じ、じゃあ行こっか!」
なんとかして空気を変えるためにそう声をかけた。
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