お出かけと挑戦状 3ヶ月目
ショッピングモールに着いて、歩きながら店を見回っていた。
「友達にプレゼントをあげるんだったよね?」
「うん、女の子に渡すんだけど今までプレゼントをあげるってこと全く無かったんだよね。ましてや女の子になんて」
今までプレゼントを渡したことないなんて意外だなぁ、
それよりやっぱり彼女いるんだ…まあ、こんなにイケメンだから彼女の1人や2人いてもおかしくないもんなぁ…2人いるのはそれはそれで問題だけど(笑)
そんなことを考えていると山之上くんが私に話しかけてくる。
「そうだ!霧上さんがプレゼントをもらうとしたらどんなものが嬉しい?」
私の意見なんて参考になるかなぁと思いつつも考える。
「うーん、私は形に残るプレゼントが嬉しいかな。大事にしようって思える」
「確かに、形に残るものだったらそれを見ると貰った時のことを思い出したりできるもんね…そうしよう!」
「えっ?そんな簡単に決めちゃっていいの?」
「うん!霧上さんが嬉しいって思うなら大丈夫だって!」
「なら良いけど…」
プレゼントを貰った人があまり嬉しくないと思う物でありませんようにと心の中で願った。
「ちょっと疲れたしアイスでも食べて休憩しない?」
時間を見るとプレゼントを探し始めてから1時間くらい経っていた。
私も少し疲れたなと思っていたので丁度良かった。
店に並び、山之上くんはチョコのアイス、私はいちごのアイスを頼み、ベンチに座った。
「ん!これいちごがそのまま入ってて美味しい!」
「こっちには薄く切ってあるチョコが入ってる!」
素材がそのまま入ってるアイスは珍しかったため私達は少し興奮ながら食べていた。
が、美味しそうに食べている山之上くんを見てチョコのアイスが物凄く気になった。
どんな味なんだろうと考えながら釘付けになっていると山之上くんと目が合った。
恥ずかしくなり目をそらすと私にアイスを差し出しながら言った。
「1口食べる?」
「美味しそうに食べてたから気になっちゃって……ありがとう、1口貰うね」
できるだけ意識しないようにした。
なにせ、私が貰おうとしているのは山之上くん食べかけのアイス。いわゆる関節キスだった。
思い切ってパクッと一口食べる。
十分に味わう余裕がなかったが美味しかった。
乗り切った…と思ったがすぐに重大なことを忘れていたことに気づく。
貰ったのなら相手にもあげるのが普通というものだ。
「わ、わ、私のも…た、食べていいよ」
ぎこちなかったがそう言ってアイスを差し出す。
「ありがとう!僕も気になってたんだよね!」
拒否されずに喜んでくれたのは安心した。
私の手からアイスを受け取り口元に近づけていく。その距離が近づくほど私の身体の温度が高くなっていくのがわかった。
やがて、アイスとの距離がほぼゼロになり、口を閉じていく。
触れるまであと数センチ、数ミリとなり…
「ぷしゅぅーーーー」
私はそれに耐えることが出来なかった。
身体の温度はどんどん上がって、顔が真っ赤になりオーバーヒートした。
「えっ?霧上さん!大丈夫?」
心配して声をかけてくれたが顔の赤さが引くまで、数分間机に伏したまま気づかなかった。
そんなアクシデントがあったが私達は引き続きプレゼントを探して歩いていた。
「そういえば中間テスト学年で一位ってほんとすごいね!結果見た時凄く驚いた!」
「小さい頃から親が勉強しろってうるさかったからね…今はそんなに言われないけどその頃の習慣が抜けなくて今も家で勉強してるんだよね。
あ、霧上さんも点数凄く良かったでしょ?僕的にはそっちの方が結果を見て嬉しく思ったよ!」
普通自分より上の人に凄いと言われると嫌味に感じるが山之上くんは心からそう思ってくれてると感じたため嬉しかった。
「あっ!じゃあさ、今度の期末テストの結果勝負しない?」
「いいね!でも勝負には何をかけるの……?」
「うーん、負けた方は勝った方のお願いを1つ聞く…とか?」
「それ面白そう!そうしよう!」
「了解!私負けないからね!」
こうして勝負をすることが決まった。
自分から言い出した事だしお願いを聞いてもらえる絶好のチャンスだから絶対勝たなきゃと思い気合いが入った。
「あ、ちょっと待って」
そう言って急に山之上くんの足が止まる。
振り返るとキーホルダーがずらっと並んでいるところで商品を見ていた。
数分間悩んだ後「これかな」と言って1つ手に取りレジへ向かっていった。
なんだろうと思って近くで見ると光沢のある石に花が描かれているという変なキーホルダーだった。
タグを見てみると
【 アサガオ , スズラン 】
そう書かれていた。
朝顔と鈴蘭ってこれまた変な組み合わせだなと感じた。
数分すると山之上くんが戻ってきた。
「おまたせ」
「いいの買えた?」
買ったものを知っていたがそう聞いた。
「うん、おかげさまでいいプレゼントが思いついたよ」
「霧上さんはどこか寄りたいところとかある?」
「ううん、今はなにも買いたいものはないから大丈夫」
そう言ったが行きたいところが無くてもどこか言っておけばもう少し長く一緒にいられたのに、と後悔した。
「じゃあ、霧上さんも疲れただろうから帰ろっか」
山之上くんが私に向けて言い、一緒に駅へと歩いていく。
わかっていたのだが少し寂しくなる。
でも、今日一日一緒に居れて楽しかったし、プレゼントを選ぶ手助けをできたのは嬉しかった。隣で歩くことができた、それだけで幸せだった。
駅に着くまでの時間はあっという間に感じた。
「今日は本当にありがとうね」
「ううん、元は私がお礼をしたかっただけだからさ!今度会った時にプレゼントあげた時の反応聞かせてね!」
「うん、じゃあどんな反応か聞かせてあげる」
「えっ?どういうこと……?」
私が状況が把握できなくて混乱していると山之上くんがさっき買ったプレゼントを私に差し出した。
「……それ彼女へのプレゼントじゃなかったの?」
「ん?僕彼女いないし、それにプレゼントは初めから霧上さんにあげようと思ってた物だよ。
霧上さんお礼をしないと引き下がらなそうだったし気づかれずに霧上さんの嬉しいものが渡せるなって思いついたから黙ってたんだよね」
照れくさそうに笑って私に説明した。
「じゃあ、今度こそまたねっ!ばいばい!」
少し恥ずかしいのか、そう言うと駅構内へ少し早歩きで向かって行った。
私は返事を忘れるほど衝撃を受けて固まっていた。
彼女いないのとか私へのプレゼントを真剣に選んでくれたことなどで人生1と言っていいほど混乱している。
結局、家まで頭が真っ白で無心なまま帰り、そのままベットに倒れた。
後日お母さんと優芽に事細かく出かけた時のことを聞かれたのは言うまでもない。
【花言葉】
アサガオ: 固い絆,愛情………………etc
スズラン: 純粋,愛らしさ……………etc
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