恋と過ごした36ヶ月
たかな
始まりの季節 1ヶ月目
「今までありがとうね
僕は君から沢山のものを貰った。
何より君と出会えたことが1番の宝物だ」
「私もあなたと出会えたことが嬉しい
あなたとならこれからも、末永く、死ぬまで上手くやっていけるって確信がある」
「僕もそう思うよ」
そのまま2人は互いの顔を少しずつ近づけていく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
それから目を瞑る。視界が真っ暗になり相手の熱い吐息が唇に当たるのが伝わってくる。
その音もだんだん大きくなり
唇が重なるまであと数センチ、数ミリ……
「うわぁぁ!」
私はベットで身を飛び起こし、状況を理解できないまま、あわあわとする。
数分経って落ち着きを取り戻し、状況を把握することができた。
「なんだ、夢か…」
と同時に気恥ずかしい感情が私にふつふつと湧き上がってくる。
「夢だとはいえ何?!
(あなたと出会えたことが嬉しい)とか
(上手くやっていける確信がある)とかいう
小さい頃の好奇心でやったことを大きくなってから思い出してみるとめちゃくちゃ黒歴史だった時のようなとんでもなく恥ずかしいセリフは!!!!」
と早口で独り言を呟きながら枕に顔を埋めて足をバタバタさせる私。
顔を真っ赤に染めたまま数十分バタバタしていた。すると
「なつみー早く起きないと遅刻するよ!高校初日からそんな恥ずかしいことしていいの?」
と私の母親が声をかけてくる。
はっ!っと時計に目を向けると家を出る予定の時間まであと5分になろうかという時間まで迫っていた。
学校に着いてすら無いのにもう既に遅刻するくらい恥ずかしい気持ちになってるけどね!と心の中で呟いた後身支度を整え、朝食を食べ、玄関から飛び出すようにして高校に向かった。
私の名前は
地元の高校に合格し、今日からその高校に入学する。中学では特に目立ってる訳でもなく、逆に少し控えめな性格だった。顔もこれといって美人!ではなく、かと言って残念な顔だな…ということでも無かった。極めて普通の女子高生だ。(それはそれで複雑だけどね)
高校まで8割くらいの力で走っていると幸いなことに遅刻になることはなく校門をくぐり、教室の席に着いた。
すると前に座っていた女子生徒に声をかけられた。
「おはよう!ちょっと息切れてるけどどうしたの?!寝坊しちゃったとか?」
心配したような目で私に問いかける。
「ううん、そうじゃないけど…」
少し濁すような言葉で話す。
寝坊したのかと聞かれて今日の朝のことを思い出してしまったのだ。顔の温度が少し上がったように感じた。
「顔ちょっと赤くなった?
ふふ、もしや朝恥ずかしい夢を見て悶えてたとかぁ?」
「…………っ…………」
何この子!他人の思考が読める超能力でも持ってるの?!的確に当ててきたし!こわっ!こわっっ!
「なにそれ、遅刻にそんな理由なわけないじゃない! はっ、はははー」
国民的女優も目を疑うような演技力を披露した。主演女優賞も夢じゃないわね!
「と、ところであなたの名前は?」
話を逸らすように問いかける。
「あ、まだ自己紹介してなかったね!私の名前は
「私は霧上夏美。夏美って呼んでくれると嬉しい!じゃあ、川下さんは……ゆめゆめって呼ぶね!」
「却下」
「ええっーー即答!なんでもいいんじゃなかったの…」
「さすがに高校にもなってゆめゆめは恥ずかしいじゃんー」
「うーーん、じゃあ、シンプルに優芽にするねー」
「うん!これからよろしくね夏美!」
そうしている間に先生が入ってきてHRが行われ、自己紹介など一通り終わると、校舎を見回って来てもいいとの事なので優芽と一緒に回ることにした。なにしろこの高校は驚くほどに広いのだ。
「ねえねえ、図書館とか行ってみない?私本好きでさ、気になってたんだよね!」
「うん、私もちょっと見てみたいと思ってたんだよね」
優芽の誘いを受けながら歩いてると、角から黒い人影が現れて私とぶつかった。
そしてその衝撃に耐えれず転んでしまった。
「いてて…」
「わっ!ごめんね、大丈夫?怪我とかしちゃってない?」
「はい、大丈夫でーーー」
顔を上げるとぶつかった思われる人と目が合った。そのまま数秒間時間が止まったように動かなかった。
「あっ、用事があったんだった!ごめんね!もう行かないと」
「このくらい大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」
と彼が伸ばしてくれた手を取って立たせてもらいながら話した。
彼が去っていくのを確認すると優芽がテンションが上がったように話しかけてきた。
「なになに!彼誰?知り合い?同じ学年?超イケメンだったじゃん!知ってたら私に紹介しーーー」
「優芽、急に質問しすぎ!私もあの人とは初対面。学年は学章の色が同じだったから同学年じゃない?紹介は…って優芽…欲に忠実すぎ」
優芽の言葉を遮るようにして答える。
「女子高生にもなったらこれくらい普通でしょ!それより本当に知り合いじゃないの?なんか見つめ合ってた気がしたけど…しかもイケメンだし…」
「あれはなんというか、その…確かに驚くくらいイケメンだった………って!イケメンだから知り合いってわけじゃないでしょ」
見惚れていたとは言えないので誤魔化した。
「いいなー私も角でぶつかるみたいな神イベント降ってこないかなぁ」
「確かによく聞くシーンだけど…そんなによくあったら恋愛に困まる人ないでしょ」
「それもそうかー」
「そういえば図書館に行こうとしてたんだっけ、すっかり忘れちゃってた」
「あ、そうだった!それじゃあ、図書館にレッツゴー!」
そんなことを話しながら私たちは校舎を見て回った。
イケメンだったなぁ……………
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