愚かな感情と行動 12ヶ月目
雄貴と付き合い始めて半年ちょっとが経った。
付き合い始めは雄貴の彼女ということにあまり実感が湧かなかったけど、今ではしっかりと実感できている。
最近学校では雄貴が私たちの教室に来てくれるので4人でよく集まって話している。4人とも結構気が合うと思っているから一緒にいても居心地がいい。
「夏美、次の授業なんだっけー?」
「数学じゃなかった?」
「うわぁー数学かぁ……もう数字見たくないぃ!」
「また授業中に寝てテスト前慌てるようなことはするなよー」
「なっ!そう言われなくてもわかってるよ!と言いたいところだけどあんたに言われると説得力があるなぁ……」
村下くんはテストでいつも上位を取っていて学年2位にもなったこともある。
そのため説得力があるのだろう。
話をしながら次の時間の用意をしていると気づいた。
「あっ……筆箱無くなった?どこいった…………?」
「夏美どうしたの?」
雄貴が心配して聞いてきた。
「筆箱が無くなったんだけどどこかで見なかった?」
「筆箱?消しゴムとかだったらよく聞くけどそんなに大きいもの無くなるのは珍しいなぁ………シャーペンと消しゴム貸そうか?」
「うん、貸してもらっていい?ありがとう!今日帰る時に返すね」
「早く見つかるといいけどね……」
その時、どこからか『ちっ…』と舌打ちのような音が聞こえたが気のせいだと思って気にしないことにした。
午後になり、体育の授業が始まった。
今日はバレーをするらしい。
「夏美はバレー得意?」
いつものように優芽が私に聞いてきた。
「いや、そんなに自信ないかなぁ……優芽は得意なの?」
「小さい頃に少しやってたからちょっとは出来ると思うけど、感覚はもう忘れちゃってるかも」
「へぇーー小さい頃やってたんだ!優芽って運動はめちゃくちゃできるよねー!」
「うん、運動は得意中の得意だからね!任せとい………ん?運動“は”?
えーー何が言いたいのかな?夏美さん?」
やってしまったと思った頃には既に遅かった。
「こ、これはつい口が滑っちゃったというか……」
「口が滑ったってことは心の中では思ってたってことだよね?覚悟はできてるのかな?」
「や、やめぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
やめてと言わせてすらもらえず、私の頭をぐりぐりしてきた。
優芽のせい(自分のせいでもあるが)で体育が終わるまで頭が痛いままだった。
「頭がじんじんして響く……」
「ちょっとやりすぎたかも、ごめんごめん!でも、夏美にも非はあると思うけどなー」
体操服から制服に着替えるために教室へ向かっていると正面から女子生徒が3人歩いてきた。
私と優芽は避け、通り過ぎようとしたがすれ違う直前で3人のうちの一人が急に体を寄せてきた。
そのまま肩と肩がぶつかり、咄嗟のこともあり私はバランスを崩してふらつく。
「あら、ごめんなさいねぇ、歩いてきてるのに全く気づかなかったわ」
「いや、今の絶対わざとでしょ!夏美に謝りなさいよ!」
優芽がぶつかってきた人に向かって言った。
「わざとなわけないじゃない。そうやって難癖つけて来ないでよね」
「っ……!あんたねぇ!」
「優芽!もういいよ、行こ」
「でも……………」
「ああいうのは無視するのが1番だよ、話すだけ時間の無駄」
「そうだね」
時間を取られて次の授業に遅れそうだったため急いで着替えて席に座った。
そこで異変に気づく。
「鞄が無くなってる?!」
机の横に掛けてあった鞄が無くなっていた。
周りを見てみても全く見当たらない。
机の中を覗くと見覚えのない紙が1枚入っていた。
不思議に思ってその紙を取り出して見てみた。
『放課後体育館横の裏庭に来い』
紙にはそう書かれていた。
そこで私は怒りがふつふつと湧いてきた。鞄が取られたことも許せないが、何よりもその鞄には雄貴から貰ったキーホルダーを付けているため、特に許せなかった。
「夏美、どうしたの?そんなに怖い顔して……」
「ん?大丈夫 、何も無いよ。さっ、授業始まるから席に座った方がいいよ」
「ならいいけど……」
このことで優芽に迷惑をかける訳にはいかないし、自分でしっかりとケリをつけたかったため隠した。
そのため、次の授業は全く頭に入ってこなく、どんどん怒りの感情だけが湧いてきて冷静で居られなかった。
恋と過ごした36ヶ月 たかな @takana2002
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