第23話
「オラッ!」
「クッ! こいつら……」
コルヴォがいなくなってから少しして、アルヴァ―ロたちの所にも敵が現れた。
警戒していたのが功を奏していたのか、すぐに護送中の犯罪者を収容している牢の側へと集まり、迎え撃つことに成功した。
アルヴァ―ロと冒険者たちを取り囲んだ敵たちは、すぐに襲い掛かってきた。
ギルマスのアルヴァ―ロは元A級。
その経験上、数回攻防を重ねるとなんとなくだが相手の実力は分かる。
襲ってきた敵の実力の高さに、アルヴァ―ロは思わず歯を食いしばった。
「お前ら! 何としても牢と自分を守れ!!」
先代に世話になっていたこともあり、アルヴァ―ロはローゲン領のギルマスとしてセラフィーナの領地再建に助力したいと思っていた。
しかし、領地が赤字に転落したことで、ローゲン領の高ランク冒険者たちが他へと去って行ってしまったため、集めることができたのはB級たちばかりだ。
それでも、彼らは将来有望な者たちばかり。
期待を込めて、護送中の犯人を守りつつ、自分たちも死なないように指示するのがやっとだった。
「んな無茶な」
「だからって逃げられるわけではないしな」
「やれるだけやるしかないか……」
敵との数は同数。
しかし、自分たちはB級冒険者ばかりで、敵はA級並の実力がありそうな連中ばかりだ。
そのため、冒険者たちはアルヴァ―ロの言葉に文句を言う。
逃げられるなら逃げたいところだが、周囲は敵に囲まれている状況。
なんとか生き残るために、彼らも向かってくる敵に対処していた。
「邪魔だ!!」
「俺たちゃそいつらを殺らねえとならねえんだ!!」
敵の者たちとしては、コルヴォに捕まった者たちの暗殺を指示されている。
本当は、セラフィーナの暗殺が第一という長の考えにより、一番実力があるステファノが宿屋の方へと配置され、その間自分たちはコルヴォを足止めしていることを指示されていた。
しかし、作戦決行前にコルヴォはいなくなり、ヴィロッカのギルマスと冒険者たちだけになった。
コルヴォがいれば、自分たちが殺される可能性があったが、いなくなったことでそれも低くなった。
後は、目的の暗殺を済ませて早々にこの場からずらかれば、大金が手に入ることになっている。
村はずれとは言っても、時間がかかってしまえば村人が集まってきてしまうかもしれないため、敵の者たちは冒険者たちを倒すことを急いだ。
「くそ! B級ばかりって聞いていたが、思ったより手強いじゃねえか!」
「そいつはどうも!」
戦い始めると、冒険者たちは善戦した。
押されていることは間違いないが、何とか大怪我を負わないで済んでいる。
敵からしたら、B級程度をなかなか倒せないことにイラ立っている様子だ。
「有望株ばかり連れてきたんだ。お前ら冒険者崩れのバカどもにそう簡単に殺られねえよ!」
A級並の実力があるのは分かるが、所詮敵は犯罪の道に落ちた者たちだ。
暗殺なんかに手を出すくらいなのだから、碌に訓練もしていないような連中なのだろう。
そんな奴らが、常に上を目指して訓練をしている彼らを簡単に倒せるわけがない。
襲い掛かってくる敵を相手にしながら、アルヴァ―ロはそんな思いと共に敵に啖呵を切った。
「まずっ……」
「ギルマス!」
「もらった!!」
啖呵を切ったはいいが、完全にこちらが押されている。
冒険者たちを援護しながら戦ってい細かい傷を負ったアルヴァ―ロは、集団に攻め込まれてバランスを崩す。
助けに行きたいところだが、冒険者たちも敵の相手で手いっぱいで無理だ。
この機会を逃すまいと、敵の1人が更にアルヴァ―ロへと攻めかかった。
“ドサッ!!”
「「「「「っ!!」」」」」
迫り来る敵の剣に、アルヴァ―ロは死を覚悟した。
しかし、その剣が迫り来ることはなく、襲いかかってきた敵が崩れるように倒れた。
大量に血を流して動かなくなっている所を見ると、死んでいるようだ。
何が起きたのか分からず、アルヴァ―ロや冒険者たちだけでなく敵たちも目を見開いて固まった。
「待たせたな」
「コルヴォ!!」
呆然としているアルヴァ―ロだったが、突如コルヴォが現れたことでようやく声をあげた。
セラフィーナの方へと向かったはずのコルヴォが、こちらへ来たということはあっちは片付いたということだ。
死ぬ寸前だった所を助かった喜びと、セラフィーナの方の安全を確認できたアルヴァ―ロは、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「何っ!? こいつがっ!?」
「何でコルヴォがこっちに!?」
「長やステファノはどうした!?」
コルヴォの名前が聞こえ、この場にいる敵たちは驚きの声をあげる。
宿屋方面へ向かったはずのコルヴォが戻ってきたのだから、驚くのも仕方がない。
しかし、そうなると疑問が湧く。
宿屋の方には、長とステファノと共に結構な数の仲間が向かっていたはずだ。
それなのに戻ってきたと言うことが、どういうことなのか敵の者たちには分からなかった。
「あっちは全員片付いた。ステファノとか言うでかいのも殺した」
「なっ!!」「そんなっ!!」「バカなっ!!」
セラフィーナの暗殺を確実にするために、数は少なくともあちらの方が戦力的に上だった。
最高戦力のステファノまで連れていく過剰ぶりだった。
それなのに、全員やられてしまうなんて信じられないため、敵たちはコルヴォの言葉に驚愕の表情へと変わった。
「じ、冗談じゃねえ! 金になんねえならら俺は降りる!」
「あっ!!」「おいっ!」
ステファノの特徴までちゃんと知っている所を見ると、コルヴォの言うことは嘘ではない。
そうなると、ステファノ以上の強さを持つコルヴォを相手にしなければならない。
片付いたということは、長もただでは済んでいないということ。
長がいなければ暗殺に成功しても金が入る保証はないため、敵の1人は逃げることを決断した。
「なっ!? 動けない!!」
逃げようとした者に追随するように、敵たちは四方へ散らばるように逃げ出そうとした。
しかし、数歩進んだところで、敵たちは全員足が動かなくなった。
「こ、拘束魔術!?」
何が起きたのかと足元を見てみると、魔法陣が浮かんでいる。
敵たちはそれが拘束魔術だと理解した。
この状況では、抵抗することもできない。
死を待つしかない状況に、敵たちは顔を青くした。
「逃がすわけないだろ?」
“パチンッ!!”
「「「「「っっっ!!」」」」」
恐怖に慄く敵たちに、コルヴォは無情ともいえる言葉を告げる。
そして、指を鳴らすと、足元の魔法陣から強力な火炎が沸き上がる。
それにより、拘束されていた敵たちは全員声をあげる間もなく、あっという間に灰へと変わった。
「ハァ、ハァ……、大丈夫か?」
「あぁ……助かったぜ」
さすがに多くの人間の拘束と殺害は魔力を消費した。
コルヴォは魔力消費で息切れをしつつ、アルヴァ―ロへと話しかけた。
目の前のとんでもない現象を起こしたコルヴォに引きつつ、アルヴァ―ロは感謝の言葉を返したのだった。
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