23.秩序破壊職
ディーバに対してはかなり懐疑的だった革命的敗北主義者だったが、パワーレベリング中にディーバの2人が掛けてくるバフがあまりにも強力であることに気付いた。
最初は表記間違いかと思い、次に読み間違えだとばかり思っていた。しかし体感でもそれくらい上がっているのだ。明らかに火力が普段の1.5倍に膨れ上がっている。スラストが「ぶっ壊れ」と評したことにも納得した。ゲームバランスを粉々に砕き、既存の秩序を全て吹っ飛ばしている。これでは動くパワージェネレーターだ。
この職を作った人物はよほど開発会社に反逆したかったのか、それとも携わった人間が全員寝ぼけていたのか、はたまたプレイしていない確信犯だったのかはプレイヤーの預かり知らぬところではあるものの、これは上げなければ現仕様の戦闘でお話にならなくなってしまう。
「やっぱり上げたくなってきただろ。俺らのパワレベがひと区切りついたら、逆にパワレベするからさ」
「頼むわ。人権剥奪されたくないんで」
前提クエストに行っていたパインキラーはスタートからして遅れているため、革命的敗北主義者と一緒にパワレベされることになった。
「結局スラストSS勢になんの? 姫プして課金代稼ぐつもりか」
「俺がさっき言ってたこと的確に当ててくるな。いやあ、マジでSS勢の姫になるのも悪くないと思って。別に時間取られるわけじゃねえし『お前そんなにダサ装備なのに、SS勢のかわいい姫ちゃんに負けて恥ずかしくないの?』って煽れるからな」
ダサ装備というところに革命的敗北主義者が反応した。
「お前それ俺に言ってる?」
「ストロベリィ・ピンクはスクリーンショット撮ってたら1日終わらせてるような奴、パインキラーもちゃんとしたアバター着てるとなれば、後はあべこべ装備トンチキ初期顔スペースノイドのお前しかいなくね?」
パワーレベリングをして貰っている立場の割に態度はいつも通り大きいスラストは、後方でふんぞり返って革命的敗北主義者を煽った。
頭に来た初期顔スペースノイドが、MOBを殴る手を止める。
「このMOBをけしかければお前は死ぬわけですが」
「すみません言い過ぎました」
手のひらを返した謝罪に満足し、パワレベは再開される。
スラストはSS勢になることに乗り気だったが、それ以上に集団戦でのディーバの有用性に興味があった。いつも独り善がりで暴走しがちなタイプと見られがちだが、キルを取ることにしか興味のないタイプならそもそもタンクなどやっていない。独善的な部分も人並み以上にあるものの、正当に評価されるのならばバッファー系アタッカーをすることにも忌避感はなかった。
「まあ、1週間で調整されるかもしれないからな。それまでに楽しめるだけ楽しんでおこう」
パインキラーは早くギルドに認められたいようで、それならバフを掛けて支援するディーバはうってつけだと思える。スラストはロイヤルナイトで参戦することを期待されているため、首脳陣に相談の1つはしないといけないだろうが。
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