21.ブーメラン
「スキル欄を読め。いつまでマイクで殴るつもりだ? それだとインスタンス突入したら1秒で死ぬぞ」
レベルも徐々に上がり、草原から洞窟に移ってもまだストロベリィ・ピンクはマイクで通常攻撃を続けていた。バフを掛けているとはいえ、そろそろ誤魔化しが効かなくなってくるレベル帯だ。
「レベル上げて殴れば大丈夫だって! ほら、まだ倒せるよ」
「ダボが。まだ倒せるってことは、これから先通用しねえってことだろ。殴る前にバフ掛けろ。スキルプリセット送るから、一切アレンジしないでその通りに攻撃しろ」
「わー! 優しい」
なおも先に進もうとするストロベリィを制し、その場でスキルコンボの練習をさせた。
連れがMOBに試し撃ちしている中、スラストはなんとかタイマンでもディーバが使えるようにならないか試行錯誤する。
バフを切らさないのは大前提として、なるべく無防備な状態を作らないように努める。スキルモーションキャンセルは……駄目だ、最近の職は無駄にしっかり作ってある。初期職のロイヤルナイトとは違った。
あれこれ試し、大体こんなものかと頷く頃になれば、ストロベリィもなんとかコンボを使えるようになっていた。
「スラストくん強くない? 同じ装備だよね」
「使っているコンボが違うのと、立ち回りが違う」
前衛に出られて死んでも困るので、ストロベリィは後衛としてバフを掛ける係である。スラストは数少ない攻撃スキルを繰り出し、敵の攻撃を右に左に避けながら経験値を集めていた。
「これから先、2人だと流石に厳しいかもしれんな。ほか2人はどうした?」
スラストが指す2人とは、普段つるんでいる革命的敗北主義者とパインキラーのことだった。なんとなく新職はまだ触っていないんだろうと思いつつも、呼び出す。
『早く来い。惑星ガーデニアでストロベリィ・ピンクとディーバやってる』
返事はあっさり返ってきた。
『ディーバって新職? レベル1のまま放置してるんだが』
『そもそもそのジョブに就く前提クエストをやってないな』
『なんでもいいから早く来い。後でパワレベするから、今パワレベしてくれ』
2人は渋々了承し、スラスト達がいる惑星に向かうと伝えた。
惑星ガーデニアというのは、初心者用惑星の1つである。スラストが初心者狩りに使っている砂漠の惑星と似たようなものだ。
似ているということは、つまり。
「出たよ。低レベル帯プレイヤーを狙ってPKしに来る面の皮極厚プレイヤー」
「スラストくんそれもちろん冗談だよね……?」
「当たり前だろ」
呼んでもいないのに3人のプレイヤーが武器を構えて立っていた。名前の横に浮かぶのはPKの証拠だ。
「逃げる?」
「いや、返り討ちにする」
言うが早いか、スラストは武器をしまっていつものタワーシールドとランスを取り出した。闘技大会個人戦優勝報酬の外装で、銀色に輝く本体から黒いオーラが禍々しいほどに溢れている。タンク、アタッカー、ヒーラー分のこの世に3つしかない武器だ。防具はわからせるためにこのセーラー服のままで戦う。
PKしてこようとした3人組が煽ってくるので、ゲーム内VCに切り替えて煽り返した。
「おい雑魚。お前ら俺のこと知らねえの?」
「知らねえよ馬鹿」
「有名人気取りとかきっついわ」
「ニートじゃん」
3冠王たる己を知らないばかりか、更に煽ってくる。速攻でわからせて煽り散らしてやろうと決意し、スラストは突撃槍を振りかざした。
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