16.残念な事実

スラストを文字通り盾にした作戦で、ユキカゼや洛叉との戦いに勝利した。

トーナメント形式なので連戦となるが、間の時間で切れたバフを掛け直す。


「次の対戦相手はどれくらいの強さだったっけ。スラストさんこの名前知ってる?」

試合の終了によって自動的に蘇生させられたパインキラーが問いかける。


スラストは対戦表の名前を見るが、知ったかぶりで有名な配信者グループだった。配信者のことならパインキラーの方が詳しいんじゃなかろうかと思ったが、女限定か。確かにこの配信者グループは全員男だから、パインキラーが知らないのも無理はない。

スラストも視聴しているわけではなかったが、フォーラムに信者とアンチがいつも大量に発生しているので嫌でも目についた。

ちなみにわざわざ語るまでもないが、雑魚だ。


「実を言うとな、Vanguardのあの4人が多分対戦相手の中で1番強かった」

「……え…………」

「おいスラスト、まだわかんないぞ。無名の猛者が全一だった、なんてことはザラにある話じゃないか。好敵手が見つかったりするんじゃねえの」

「だったらよかったけどな。見る限り、ほぼ全員名前知ってる。そこそこ長くやってる奴らばっかりだし、しかもあんまり上手くねえ。ストロベリィよりも下手くそなのもいる」

パインキラーと革命的敗北主義者は黙り込んだ。


パーティー戦出場のためにスラストにPKを禁じ、パインキラーを勧誘し、ごねるスラストをなだめ、パインキラーの装備を全員で整え、万全の準備で挑んだパーティー戦の、ここ1番の大盛り上がりというのがさっき過ぎたばかりの1戦目だ。決勝だったら盛り上がるんだろうが、決勝で当たる可能性がある奴らも残念ながらもれなく雑魚である。


2人には申し訳ないが、公式大会で巡り合わせなんてものに期待しても仕方がない。別のゲームでの話だが、スラストも何度も経験があった。自分以外の全員が棄権して不戦勝のまま優勝だとか、逆に味方の遅刻で不戦敗したりだとか。あまり気合を入れすぎても疲れるだけだ。


エンジョイ勢で戦闘が不得手なストロベリィ・ピンクは「よかった。山場は越えたんだね」とほっと胸を撫で下ろしていたが、戦闘好きの2人はあまりの呆気なさに気を取られているようだった。



「あ、10分休憩そろそろ終わるから準備しとけよ」

「……おう」

「……了解」

モチベーションを削いでしまったようだ。心なしか元気のない2人の返事に、余計なことを言ってしまったかもしれないとスラストは心の中で反省した。


さて、次の配信者集団だが、手加減するつもりは全く持って一欠片もない。どうせ配信しているだろうから、自分達が無様に秒殺させられるところを全世界に永久公開していただこう。

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