15.パーティー戦予選

「スラスト、ストロベリィのおっさんを守れ。ストロベリィ、オーバーヒールでもいいから絶対に死なせるな。パインキラー、落ち着いていけ。以上」

4人のまとめ役を気取って革命的敗北主義者が最後の注意事項を伝える。スラストはぞんざいに「わかったよ」と言い、十全にバフを掛けた状態で転移を待った。


その間、ストロベリィ・ピンクは早口でスキル回しの復習をし、パインキラーはトイレで離席中だ。革命的敗北主義者は落ち着かなさそうにうろついたりしており、啖呵を切った割には微妙な姿を見せていた。


20時ちょうど。昨日の集団戦の時のようなロスタイムはなく、すぐにローディングが入った。画面が暗転する。



Vanguardの決闘場にも似た場所だ。

4人はインスタンスダンジョンの周回と同じようにスラストを先頭、中間に革命的敗北主義者とパインキラー、ストロベリィ・ピンクを殿として菱形に並んだ。


離れたところに相手が見える。スラストにとっては全員知った顔だった。

タンクはロイヤルナイトの洛叉、ヘビーガンナーという遠距離アタッカーのユキカゼ、侍で近接アタッカーのアータル、そしてハイプリーステスのヒーラー、零夜。

スラスト達と同様の布陣を組んで相対している。


集団戦とは違ってパーティー戦は現地に移動してもすぐに戦闘開始ではなく、カウントダウンが入る。


10秒。

5秒……4、3、2、1。

スタート。


スラストは誰よりも早く動いた。

全体バリアスキル【ホーリーシールド】を発動させる。発動までの僅かな間にユキカゼがガトリング砲で銃弾の雨あられをこちらに浴びせてくるが、銃弾が届くかどうかといったところでかち合ったようにバリアが発動し、銃弾は激しく音を立ててブロックされ、地面に落ちた。


弾幕が途切れた瞬間にパインキラーはつがえた弓を発射し、革命的敗北主義者は組んだ印を発動させる……と、スラストはアタッカー2人の方を見るのをやめた。洛叉の大剣が頭上に来ている。間一髪でタワーシールドで防いだスラストは勢いで後退したが、盾で大剣を斜めに振り払い、その隙に既に発動していたランスチャージを繰り出した。洛叉はまともに食らってノックダウンし、スラストはコンボを叩き込む……と、全回復した。ヒーラーか。


洛叉はノックダウンから起き上がると、コンボを入れるチャンスを伺うように攻撃を仕掛けてくる。盾でいなしながら、戦況をちらりと見ると、こちらのアタッカー2人がかりでアータルと戦っており、ユキカゼがノーマークだ。


ユキカゼのアンチマテリアルライフル弾がスラストに直撃し、HPバーがみるみるうちに削れる。避けられるが、クラウドコントロールを入れられる方が不味いので一方的に弾をもらっている状況だ。

ヒール。ヒールはどうした。


少数で戦っているときはいつも黙り込む癖のあるスラストだったが、今回ばかりはVCで叫んだ。


「ストロベリィ! 今すぐ俺をヒールしろ!」

やっとこさヒールにありついたスラストは、なぜユキカゼがノーマークなのか一瞬考え、次の瞬間に答えを出した。


タンクは体力が多い。よって使い手の技量次第では同格か、少し格上の攻撃なら2人くらいなら凌げる。一方のアタッカーはどれだけ本人やヒーラーが上手かろうが、2人に総攻撃を受けたら確実に死ぬ。つまり、スラストがユキカゼと洛叉の猛攻に耐えている間にアータルを仕留めるというわけだ。


危ない橋を渡るものだ。

アタッカーが1人死んだだけでもかなりの痛手だが、万が一タンクが死ねば次の瞬間には全滅しているというレベルのリスクを背負っている。

信頼されているという実感はあるが、それの数倍の重さのプレッシャーがスラストにかかっていた。


だからこそ死に物狂いで生き残らなければならないのだが、それにしても痛い。

1秒おきに死にかけている。

HPバーの数値が1桁になる。

今回防御寄りのバフ構成にしてきてよかったと、スラストは心から思った。


もしバフが1つ足りなければ、装備が1つ下のランクなら、ロイヤルナイトでなければ、盾と突撃槍装備でなければ、そしてなによりスラストでなければおそらく最初のユキカゼの1発で既に死んでいたレベルの攻撃だ。スラストはありったけのバフをかけ、攻撃力を犠牲にしても耐え忍ぶことにした。それにしてもヒールはどうしたと、再びVCで金切り声を上げて怒り狂う羽目になった。


そして遂に画面に、スラストの待ち望んでいた情報が表示される。


アータル撃破。


これでフリーになった2人は零夜を攻撃し……なぜ洛叉の方に加勢に来た。


「違ぁう! ヒーラー狙えヒーラー!」

スラストはVCで咆哮を上げて怒り狂い、2人はやっとヒーラーの方を攻撃し始めた。零夜も必死で自己を回復させるが無駄な足掻きだ。


零夜撃破。


これで勝敗は決した。

2人は今度こそ洛叉を殴り、4人でフルボッコにするとHPバーは消し飛んだ。しかし洛叉による最後の悪足掻きで残りHPがギリギリだったパインキラーも道連れにされた。


パインキラー撃破。

洛叉撃破。


テロップが表示され、闘技場の中にはスラスト達3人と、パインキラーの死体だけが残された。



……勝利だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る