18.消化試合の準決勝
集団戦、パーティー戦ときて次の日は当然、個人戦である。
個人戦はタンク、アタッカー、ヒーラーでそれぞれの頂点を決める一対一の戦闘であり、当然だが個々人の力量が最も現れるところだ。
スラストは全一を標榜するだけあって、個人戦には相当な自信があった。いちプレイヤーの足掻きではどうにもならない集団戦、パーティーとしての力も試されるパーティー戦で優勝すれば、3冠は確定したようなものだ。
スラストを半分茶化しながら崇めているフォーラムの住民も、どうせ盾職はスラストが勝つだろうと見越してアタッカーとヒーラーの最強談義を展開している。
そして勝ち上がって準決勝トーナメント。
スラストは1回戦から全く同じ倒し方で倒し続けていた。対策されようがお構いなし、その場の機転で乗り切れば充分。
「なんで突撃槍使い居ねえんだよ。猫も杓子も大剣か? 大剣使い増えすぎじゃねえか」
Vanguardのボイスチャットで愚痴りながら配信をするスラスト。無意識のうちに出る煽りと野菜ジュースのパックをズーズー吸う音でギルドメンバーの何人かに既にミュートされていたが、昔からスラストを知っている古参は話半分で聞き流していた。
「洛叉!」
「なんだ」
「お前も当然勝ってるよな」
「今のところはね」
パーティー戦に参加していた洛叉は、個人戦でも勝ち進んでいた。何回か会話の中で言ったはずなのに、話を聞かないスラストには全く届いていない。
「勝ってるってことはよ、決勝お前と当たるってことだよな。もう俺の勝ち確定ですねこれは。勝ったな、風呂入ってくるわ」
「おい! 勝手に負かすな」
軽口の応酬をしていると、準決勝のカウントダウンが始まった。誰かに相槌を打つように気合を入れる洛叉、それを茶化すように真似して消化試合に臨むスラスト。尤も、スラストにとっての個人戦は全戦消化試合なのだが。
また大剣使いだ。猫も杓子も大剣使い、騎士の誇りはどうしたとばかりにスラストは眉を顰める。実際、大剣は今の仕様で強いのだ。SS勢やまったり勢でもない戦闘民族が大剣以外を使うことは自己満足に過ぎないとまで言われていた。
「まあ俺にはそんなこと関係ないが」
相手はスラストのランスチャージを警戒している。当然だ。今まで戦ってきた相手も全員警戒して、それで策に溺れて床を舐める羽目になっているのだから。
初手を避けようとするから負けるのだ。ここでランスチャージを正面から受け、スラストがコンボを出す前に硬直を与えれば勝機は充分にある。先を読もうとしすぎて、足元が疎かになっているぞ。スラストは煽りの意味も込めて敢えて雑にコンボを入れ、起き上がろうとすればクラウドコントロール、またコンボと嵌め殺しにして倒した。
ワンパターンすぎてクソゲーだなんだと言われているが、スラストに言わせてみれば笑止の一言である。
クソゲーで結構。どうせ職差が激しすぎてクソゲー確定なのだ、このゲームは。
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