蒼星のイストリア ~ニュクス・セレーネ~

Noacht

第1部 異世界の月

序章

001 天上の蒼い星

 少年は、眼前の『蒼く輝く星』に、ただただ心を奪われていた。


 直前まで消滅の危機にあった少年だ。だが今は、そんなことは些事と言わんばかりに、空を食い入るように見つめていた。


 地平線の彼方まで続く、見渡す限りの白磁の荒野。雲ひとつない深蒼しんそうの空には、無数の星々が絶え間なくまたたく。一際大きく輝く天体は、光条を走らせ日暈ひがさをまとっている。


 しかし、少年の意識はそこにはない。蒼い宝石のように見える星が、心を掴んで離さないのだ。


 外周部を陽光が覆い、新たに生まれ変わろうとしているかのような煌めき。神秘の誕生に立ち会うかのような、得も言われぬ高揚感。人類史上、いまだ一握りの存在しか成しえていない快挙。


 まさに、『月面から地球と太陽を見ている』ような視点だった。


 隣に立つ白衣の男性が微笑みを浮かべ、何事かを語りかけている。


 しかし少年はそちらに意識を向けることなく、ただ一重に蒼い星を眺めているのだった。

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