第18話 魔法少女強化クエスト
「何これ……」
ミッションの内容を確認して、プリンセス・アリスとラピスラズリは驚愕した。
『魔法少女強化ミッション:魔法少女対抗紅白戦』
と、楽しげな感じで告知されたわけだが、内容は全然楽しげではない。
『それでは、ミッションについて説明するのだ』
周囲にアカネ以外の気配がないことを確認して、プリンセス・アリスとラピスラズリはミッションの説明をピクセルに求めた。たぶん、今頃はいろいろな場所で魔法少女たちがピクセルを呼び出しているだろう。
『まず始めに、プリンセス・アリス、あなたは白組の大将に選ばれたのだ。今現在、残りの魔法少女の人数は73名、皆様の殺し合いのおかげで、順調に魔法少女が減っているのだ。そんな感じで激化している戦況を更に激化させて強い魔法少女を育てることが今回のミッションの目的なのだ』
ピクセルは淡々と、チュートリアルを読み上げるように明るい声で告げる。
『さて、今から行う魔法少女対抗紅白戦、カーロスを除く魔法少女たちは36人ずつ、紅組と白組に分かれてもらうのだ。同じパーティーに所属する魔法少女は同じ組にいるから安心するといいのだ』
「じゃあ、ラピィとアカネちゃんも白組なんだねぇ」
ラピスラズリはホッとした様子で安堵するが、ミッションの詳細を聞いて青ざめた。
『紅組と白組、それぞれに大将がいるのだ。大将が死んだら…その組は全員道連れなのだ』
「え…」
ピクセルの言葉を聞いて、プリンセス・アリスは震えた。プリンセス・アリスが死ねば、ラピスラズリやアカネ他の白組の魔法少女が全員死んでしまう。36の命を預かる重みを感じ、プリンセス・アリスは震えが止まらなくなる。
『魔法少女を殺せば1人につき1,000マジカルコインなのは変わらないけど、組が違う魔法少女の場合、ボーナスで1,000マジカルコインが追加で受け取れるのだ。そして、大将の魔法少女を殺した場合、10,000マジカルコインを入手できるのだ』
10,000マジカルコイン、魔法少女の固有アイテムを購入するのに必要な量のマジカルコイン、固有アイテムがとても強力なものだと言うことはピクセルから聞いている。生き残るために、固有アイテムは喉から手が出るほど欲しいものだ。
『以上がミッションイベント、魔法少女対抗紅白戦の概要なのだ。紅組の大将は魔法少女スナイプなのだ。白組の大将プリンセス・アリスか紅組の魔法少女スナイプの脱落で、イベントは終了、同時に最大で36人脱落なのだ。各組の大将の魔法少女の名前、容姿は全魔法少女がスマホで確認できるのだ。ただこれだと、大将の魔法少女があまりにも可哀想だから、大将の魔法少女はマップアプリで自分と同じ組の魔法少女の居場所を把握できるのだ。大将として、このイベントを盛り上げて欲しいのだ』
と、無慈悲に明るい声でピクセルはプリンセス・アリスに告げて画面から姿を消す。
「すぐにどこかに身を隠せ、仕方がないからお前を守ってやる」
ピクセルの説明を聞いたアカネが姿を現してプリンセス・アリスに告げる。プリンセス・アリスに身を隠せ。というアカネの意見にラピスラズリは同意だ。プリンセス・アリスが生きてさえいれば白組が全滅することはない。
「ダメ、ここで私が隠れたらあいつの思うままだよ。この状況を逆手に取る」
アカネの意見をプリンセス・アリスは速攻で拒否した。
「私が大将である限り、白組の魔法少女は私を殺せない。それに、私に死なれたら困るし私が無茶しようとすれば協力するはず…」
「アリスちゃん?」
「このイベントを、カーロスを倒すことで終わらせる。白組全員でカーロスを討つ」
プリンセス・アリスは宣言した。イベントを逆手に取り、カーロスを撃破する。と…そして、このイベントをこの殺し合いを終わらせる。と…
「ラピスラズリ、このバカ止めろ。自分の身を餌にして白組全員でカーロス討伐とか、理想論すぎる。まず間違いなく崩壊する」
「うーん。無理だと思うよぉ…こうなったアリスちゃんは止まらない気がするぅ…」
アカネの言葉にラピスラズリは笑顔で答える。笑顔で答えるラピスラズリを見てアカネは「何故、笑ってられるんだ…」と、ため息を吐きながら呟く。
そうやって、アカネとラピスラズリが話している間に、プリンセス・アリスはマップアプリを開いて同じ組に所属している魔法少女の居場所を調べ始める。
「あ、近くに2人いるよ。合流しようよ」
「こいつ…自分が同じ組の者に殺される可能性がかなり低いことを利用してやがる……普通はもっと怯えたりするだろう…」
「あはは、さっきまで震えてたのにねぇ…」
プリンセス・アリスが走り出す後を追い、ため息混じりにアカネが呟くとラピスラズリは笑う。アカネはやれやれ。と言った様子で刀に手を伸ばした。
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