第23話 もう誰も……
アカネと連絡が取れなくなりしばらくすると、周囲に騒音が鳴り響くようになった。
「アカネちゃん…」
ラピスラズリに抱きしめられていたプリンセス・アリスは騒音を聞いても、動こうとしなかった。ラピスラズリはプリンセス・アリスの身体の震えを感じる。プリンセス・アリスは何度もアカネの名を口にしたが…身体が震えて動けない様子だった。
そろそろ、5分…この状態のプリンセス・アリスを連れて戦いに向かっても、プリンセス・アリスが殺されて全滅になるだけだと判断したラピスラズリは手に持っていた転移宝石を割った。そして、目一杯、遠くへ…ラピスラズリはプリンセス・アリスと2人で離脱した。
「え………」
「ごめんね。アリスちゃん…」
突然転移したことに驚くプリンセス・アリスに、ラピスラズリは一言、謝る。
「ラピィちゃん、戻って!お願い!アカネちゃんが……」
「今のアリスちゃんを連れて行くわけには行かないよ。アリスちゃんに死なれるわけには行かないからね。アリスちゃんを1人にもしておけない……」
ラピスラズリは、珍しく強い口調でプリンセス・アリスに言う。
「それでも……」
「ごめんね。アリスちゃん…」
「ラピィちゃんは…謝らないで………」
転移した場所は人気の無さそうな池の近くだった。近くに小屋があったので、ラピスラズリは転移宝石を割り、プリンセス・アリスを連れて小屋の中に転移する。
小屋に入り、ラピスラズリはプリンセス・アリスの様子を伺うが、プリンセス・アリスはもう、泣く気力すら残っていないようだった。
ラピスラズリは恐る恐るスマホの画面を開いた。スマホの画面を一眼見て、ラピスラズリはスマホを落としてしまう。
「また……私のせいで……」
ラピスラズリの行動を見て、プリンセス・アリスは察したのだろう。ラピスラズリのスマホの画面から、アカネのアカウントが消滅していたことに……
「アリスちゃんのせいじゃ……」
「私のせい…だよ……」
ラピスラズリの言葉を遮り、プリンセス・アリスは自分を責めた。
「また…失っちゃった……また、何も出来なかった……また、助けられて、それでも、まだ…私は震えて…動けなくて……何も……できない……」
「アリスちゃん、あまり自分を責めたらダメだよぅ。アリスちゃんは悪くないよぅ」
「ラピィちゃん……ここで、お別れしよう」
「え?」
唐突に、プリンセス・アリスから告げられた言葉を聞き、ラピスラズリは言葉を詰まらせる。
「私と一緒にいたら…ラピィちゃんまで、しょうちゃんやアヤカちゃんに祭神ちゃん、アカネちゃんみたいになっちゃう…だから、お願い。もう、私の側から離れて……」
「アリスちゃん……」
「お願い…お願いだから……」
プリンセス・アリスは恐れているようだった。ラピスラズリを失うことを、大切な人を失うことを…自分の前で誰かが倒れることを…
「もう、誰も…失いたくないの…」
プリンセス・アリスの小さな声が小屋の中に大きく広がった。
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