第14話 遭遇、袴姿の魔法少女





道橋綺羅と丸山南は昔からの幼馴染みだ。臆病で控えめな性格の南を明るくてヤンチャな性格の綺羅が引っ張る。そんな感じの関係だ。


この殺し合いが始まってからも道橋綺羅は魔法少女キララとして、丸山南は魔法少女マールとして共に行動していた。


キララは綺麗な銀髪の美少女というような感じのアバターで戦闘服のような装いの魔法少女だ。魔法少女っぽくないな。とマールは内心では思っていた。

マールは金髪のショートカットの可愛らしい女の子、白色の服に黒ニーソ、ステッキを持っている。このアバターを作った時、南はめちゃくちゃかわいい。と自画自賛したほどのかわいさだ。キララもマールを見て真っ先にかわいいじゃん。と言ってくれた。


「キララちゃん…えっと、その…」

「マールちゃん、生き残るの。生き残るためには仕方ない…」


先程、キララとマールが倒した魔法少女たちが光となって消えていくのを涙目で見つめているマールに言い聞かせるようにキララは言うが、キララはマールだけでなく自分にも言い聞かせていたのかもしれない。キララとマールは襲われたから倒しただけ。生き残るためには仕方ない。


「行こう…」


この場にいてもマールが罪悪感を感じて苦しめだけだと思い、キララはマールの手を引いて歩き出した。





「警告だ。それ以上、近づいたら、迷わず斬る」


マールを連れて、森の中を歩くと、開けた場所のど真ん中に陣取っていた魔法少女が、凛々しい声でキララとマールに告げた。


マールとキララの前に立つ魔法少女は綺麗な茶色寄りの黒髪をポニーテールに纏めている整った顔の女の子、長い日本刀のような刀を持ち、袴姿の魔法少女で、魔法少女というよりかは無事に近い感じの装いだった。


「マールちゃん、魔法、使う準備して…」

「う、うん……」


マールはステッキを構える。マールが魔法を使う準備を出来たのを確認したキララはマールと共に慎重に後退する。


マールとキララが後退している際、袴姿の魔法少女は鞘に納められている刀を握っている。


「っ…マールちゃん!」

「う、うん」


袴姿の魔法少女が抜刀した瞬間に、マールは魔法を発動した。次の瞬間に何が起こったのか、マールとキララは理解できなかった。


ドサッ。という音と共に、マールとキララの背後から真っ二つになった魔法少女が地面に落下した。魔法少女は血を流しながら光へと変わり消えていく。


「ひっ…ひぃ……」


突然の状況に驚き、消えていく魔法少女の方を振り向いていたマールは怯えながら後ろに下り袴姿の魔法少女に近づいてしまった。


「マールちゃん!!」


キララは咄嗟にマールを突き倒して自分もその場に伏せる。キララとマールが伏せた瞬間、先程までマールがいた場所の側にあった木が切り倒された。キララがマールを突き倒さなければ真っ二つになっていたのは……


「ウッ……」


先程の光となって消えていく魔法少女の姿に自分の姿を重ねてイメージしてしまったマールは吐き気を覚えてその場に軽く吐いてしまう。


「マールちゃん、逃げるよ」

「言ったはずだ。近づいたら斬る。と…お前たち3人に…」


マールとキララが気づいていなかった存在に袴姿の魔法少女は気づいていた。マールとキララが気配に気づくことすらできなかった魔法少女を一瞬で倒してしまう程の実力がある魔法少女、分析をするが、マールとキララに勝ち目はない。とマールは理解する。


「マールちゃん、戦って勝てる?」

「無理だよ。格が違う」


キララが応戦する可能性を示唆すると、マールは即答で拒絶した。マールとキララの戦い方は成績優秀なマールが分析、魔法で防御も担当して、キララがマールの指示に従い倒す。そういうやり方だ。キララとマール、2人の脳であるマールが無理。と即答するということは余程勝ち目がないのだろう。とキララは察する。


「どうする?」

「逃げよう…さっきの魔法少女と切られた木…どちらもあの魔法少女が刀を振った直後に斬られたよね?」

「ん?さあ、そんなの見てなかった。まあ、でもマールちゃんがそう言うならそうなんだろうね」

「うん。だから、あの刀の動きに注意して、刀が振られたらすぐに伏せたりするのがいいと思う……」

「そうか、さすがマールちゃん、細かいところまでよく見てるねぇ」


この観察力と分析の速さと分析の冷静さは、前々からマールはずば抜けて優れていると、キララは感じていた。マールはキララとは考えの根本が違う。キララはこうなればいいな。と思い行動するが、マールは違う。マールは最悪の場合や、最善の場合、様々な場合を瞬時に分析して行動の目標を探る。その分析の精度のおかげで、マールとキララはこれまでの戦いで生き延びることが出来ていた。以前3人を倒した時も全てはマールの策略だ。自分が、マールに勝っているのはせいぜい直感力くらいだろう。とキララは考えている。


「私の魔法と、木とかの障害物を上手いこと使いながら離脱するよ。今のところ考えられる可能性ね、1つ目は視界内に斬撃を飛ばす。2つ目は空間把握をしてピンポイントに斬撃を飛ばす。3つ目は事前にこの開けた場所に細工をしている。その場合、細工箇所を抜ければこちらの勝ち。ぶっちゃけ、これだとかなり楽…かな、あとはその他…」

「どれが一番怪しい?」

「1つ目、だから木とか障害物に隠れながら離脱した方がいいと思うの…」

「わかった。それでいこう」


小声でやり取りを済ませたキララだが、マールの考えを聞き、納得した。可能性としてはどれもあり得る。それを踏まえてマールが導き出した手段ならば、キララは疑わない。


「キララちゃん、フェイントで1発撃って…その後、私の魔法を限界まで使う。そうやって時間稼いでる間に隠れて逃げよう……」

「りょーかい」


マールの作戦開始の狼煙を上げるために、キララは人差し指を袴姿の魔法少女に向けた。





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