第8話 決別





魔法少女タクトの魔法は魔法の指揮棒で指したもののテンポを変えること、物も者もタクトの指揮棒に指された時点でタクトの前でなす術がなくなる。今現在のアヤカがその状態だ。タクトはアヤカを指揮する。ゆっくりと指揮棒を振り、テンポを遅く変化させていた。


「見つけたぞ…お前がアヤカに何かしている魔法少女だな」


建物の中…ウェディングに指示された場所でアヤカ目掛けて指揮棒を振るだけ…ドリームはタクトと対峙するが黙々と指揮棒を振り続けるタクトの反応に困惑していた。


罠か…とも思うがアヤカたちの状況を考えると時間はない。ドリームは剣を握った。




「アゥア、静かにしているんだよ」

「あぅぁー」


スナイプが優しく声をかけるとアゥアは無邪気に微笑む。そしてスコープに目を通してターゲットに狙いを定める。虹色の魔法少女…純白の魔法少女…鎧を着た何かに抑えられている赤色の魔法少女…白色の魔法少女…巫女装束の魔法少女…虹色の箱に閉じ込められている現状、撃つなら……





「通して」

「通さない」


アヤカを助けるためにアヤカの元に向かおうとする祭神をウェディングは止めていた。このまま…順調に皆殺しの予定だった。


「はぁ?」


突如、ウェディングの指示でプリンセス・アリスたちを閉じ込めていた虹色の箱が消滅した。次いで、近くの建物のガラスが割れて、タクトとドリームが落ちてきた。タクトの指揮棒がアヤカとは違う方向を向き、アヤカは自由になる。動けるようになったアヤカは迷わず、落下してきたタクトを殺した。


残り-93人


「もう1人、閉じ込めてちゃったのかな…撤退するよ」


ウェディングは舌打ちをしながらボムボムを解放して、ボムボムと共に撤退した。ウェディングたちの後ろには虹色の魔法少女が倒れていた。


残り-92人


「私たちも撤退しよう…きっと、以前、私を撃ったやつが潜んでいるみたいだしな…」


ウェディングと一緒にいた虹色の魔法少女の急所が撃ち抜かれて血で濡れているのを見てドリームは呟いた。





「とりあえず…1人か……できればもう1人やりたかったが……」

「あなたがペイートちゃんを殺った犯人かなぁ?」


スナイプが振り返ると、そこには3人の魔法少女がいた。


「クリスタルちゃんの魔法のおかげですぐに見つけられてラッキー…計画狂わせたお礼、しっかりさせてよ」

「クソッ…」


どうするかをスナイプが考えているとボムボムがスナイプ目掛けて走り出した。


「アゥア、この前みたいに出来るか?」

「あぅぁー」


スナイプに応えるようにアゥアは超音波を放つ。アゥアの超音波を聞き、ウェディングは苦しそうにするが、ボムボムとクリスタルには効いていない。


「クソッ…」


スナイプは咄嗟に建物に入り逃亡を試みる。


「クリスタルちゃん、あの子から目を離さないでね。ボムボムちゃん、追うよ」


クリスタルとボムボムを連れて、ウェディングはスナイプの後を追う。クリスタルの魔法がある限り…スナイプは逃げ切ることは出来ない。






「とりあえず、拠点に戻ろう。ラピスラズリの宝石も回復させたいし、パーティー登録にお互いの魔法の情報共有もしないといけないしな…」

「わかった。同行しよう」

「アリス、頼む」

「開け。魔法の扉」


ドリームの提案にアヤカが同意して、プリンセス・アリスは魔法の扉を開く。魔法の扉を開いた先に絶望が待ち受けているとも知らずに……


「お帰りなさい♪お待ちしてましたよ♪」


プリンセス・アリスが扉を開いた途端、悪魔の声が鳴り響いた。


「アリス、扉を閉じろ」


ドリームがアリスの前に出て言うと、ドリームの片腕が吹き飛んだ。


「え……」


プリンセス・アリスは状況が理解できなかった。何故、拠点に繋げたはずの魔法の扉から黒の魔法少女…カーロスが現れたのかが…





少し前…


「取引の内容♪教えてください♪」

「私の魔法は魔法のスコープで見た者の居場所を把握できるものだ。私の魔法で、魔法少女3人組を捉えている。その者の現在位置を教える。1人は剣を持っていて戦闘に特化した印象があった。どうだろう?」

「まあ、情報に加えて…ピクセルが気にかけていた魔法少女への温情って感じですね。わかりました。チャンスをあげましょう。次は…見つからないようにしてくださいね。あなたに狙われるのを楽しみにしてますよ♪」


カーロスはそう言い残してスナイプとの取引を終えて、教えられた場所に向かう。教えられた場所にカーロスが到着するとそこには何もなかった。


「空間が捻じ曲がってますね…」


カーロスはそう呟いて周囲を適当に破壊する。すると洞窟が露わになり、カーロスは魔法の扉を発見した。

そして、現在に至る。


「いやぁ…」

「下がれ」


困惑するプリンセス・アリスを後ろに引っ張り、アヤカが飛び出した。


「ダメだ」


ドリームは片手で剣を握り地面に突き刺す。そして、魔法を発動してアヤカとカーロスの間に壁を作った。


「あぁ…強そうな剣士…それに、魔法少女が5人♪取引した甲斐がありましたね♪」

「ドリーム、助かった」

「ラピィ、転移は?」

「さっき、使い切ったよぅ…」


クリスタルの追跡で転移宝石を使い切ったラピスラズリは申し訳なさそうにドリームに答える。


「………アリス、魔法の扉を頼む。アヤカ、片手を失った私よりもアヤカの方が強い。アリスを…夢を頼む…私がいなくなれば4人だ。4人で生き延びて欲しい」

「………わかった」


ドリームと同等、もしくはそれ以上の実力を持つアヤカも感じ取っていた今の自分たちではカーロスに勝てない。と……


「ラピィ、アリスを…夢を頼んだ」

「頼まれたよぅ…」

「しょうちゃん…何を……」

「志穂、ラピィ、アリス、扉を潜るぞ」


アヤカの掛け声に従い、ラピスラズリと祭神は一直線に先程プリンセス・アリスが開いた扉を目掛けて進む。


「逃がしませんよ♪」

「悪いが、お前の相手は私だ」


ドリームは片手で剣を握り、カーロスと対峙する。


「ドリーム…」

「来い」


アヤカはプリンセス・アリスを強引に連れて、祭神、ラピスラズリに続いてプリンセス・アリスを連れて扉を潜ろうとする。


「夢、心配するな。すぐにこの殺し合いを終わらせるからさ…生きてまた会おう。好きだよ。夢」


ドリームの…翔太の笑顔に見送られてプリンセス・アリスはアヤカと共に魔法の扉を潜る。プリンセス・アリスとアヤカが扉を潜った瞬間、魔法の扉は消滅した。


「逃がしましたか…♪まあ、でも…楽しめそうだからよしとしましょう♪」


カーロスは目の前にいるドリームを眺めて呟き、レイピアを構える。


「私は魔法騎士ドリーム、プリンセス・アリスを護る剣だ」

「かっこいいですね。お別れの言葉に付け足すことがあれば、伝言を請け負いますが?」

「伝えたいことは伝えた。悔いはない。それに、お前を倒してもう一度、夢と会って…直接伝えるさ…」


好き。と……


残り-91人










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