第6話 魔法少女たちの取引
「貴様、そいつの仲間か?」
「違う…けど…殺し合いなんてダメだよ」
「綾香、止まって!」
プリンセス・アリスに攻撃を加えようとしたアヤカを祭神が止めると、アヤカはプリンセス・アリスから少し離れた場所で止まる。
プリンセス・アリスはほっとした表情をするが、プリンセス・アリスに庇われていた魔法少女はニヤリと笑いながらプリンセス・アリスに背後から襲い掛かった。
「チッ…」
襲われるプリンセス・アリスを助けるようにアヤカは魔法少女を蹴り飛ばしてそのままトドメを刺した。アヤカの飛び蹴りで地面に強く打ち付けられた魔法少女は口から血を吐き出して少しすると消滅した。
残り-94人
「え…」
「私たちは襲われたから戦っただけだ。今のでわかっただろう?」
呆然とするプリンセス・アリスにアヤカは冷たい声で言った。
「でも…殺さなくても…」
「殺さなければ殺される。覚えておけ…それに、私が殺さなくてもあいつが殺していたぞ」
アヤカはプリンセス・アリスから少し離れた位置で剣を地面に突き刺していたドリームを指差して言う。アヤカの言う通り、アヤカが殺さなければプリンセス・アリスを護るためにドリームが先程消えた魔法少女を殺していただろう。
「貴様が甘いといずれ大切な者を失うことになるぞ…その時、後悔しないように甘さを捨てるんだな…私は護る者のために甘さを捨てた。戯言を語るな。話せば先程の魔法少女が貴様を殺そうとすることはなかったと思うか?そんな保証はない。最悪の場合を考えろ…人が護れるものは少ない…綺麗事を捨てて優先順位を付けろ…そのために、甘さを捨てろ…戯言を語るな。これは警告だ。次はないからな…」
「綾香、言いすぎです。えっと…ごめんなさいね。あなたが、すごく良い人だから…心配しているだけなの」
アヤカに次々と言われて困惑していたプリンセス・アリスに祭神は言う。祭神が、なんと言っても、先程、アヤカがプリンセス・アリスに放った言葉はプリンセス・アリスの心に根強く残ることになる。
「私の仲間を助けてくれたこと、感謝する」
アヤカに言われた言葉が心に打ち付けられ、震えていたプリンセス・アリスの肩にドリームはそっと手を置いてドリームはアヤカと祭神に礼を言う。ドリームの後ろにいたラピスラズリも軽く頭を下げていた。
「私は護れる者を護っただけだ。礼を言う必要はない」
「この人、基本的に良い人は好きですから…そちらの方を気に入ったみたいです」
祭神がプリンセス・アリスを指しながら言うとアヤカは照れくさそうに「余計なこと言うな」と祭神を睨んだ。
「そうか…それでも、感謝する。それで、いきなりで申し訳ないが、私たちとパーティーを組んではくれないだろうか?5人でパーティーを組めばミッションをクリアできる」
「私たちにメリットはあるがそちらは…君はいいのか?見た感じ、そこの白い魔法少女と騎士のような魔法少女は信頼関係が築けていそうだが、もし、4人しか生き残れない事態になったら…私は君を殺すぞ…」
ドリームの提案に対してアヤカはラピスラズリを指差して尋ねる。そして断言した。4人しか生き残れない場合は…ラピスラズリを殺す。と…
全員の視線がラピスラズリに集まった。アヤカは真剣な眼差しでラピスラズリを見つめて、祭神は心配そうな表情で、プリンセス・アリスとドリームは困惑した表情でラピスラズリを見つめる。
「まずは自己紹介からだねぇ。ラピィはラピスラズリだよぅ。ラピィって呼んでねぇ。そちらの白い子はプリンセス・アリス、アリスちゃんって呼んであげて、そっちのかっこいい子はドリーム、ラピィたちは3人でパーティーを組んでるんだよぅ。ラピィたちの目標はカーロスの撃破による試験終了、そのために強い味方、強いアイテムが欲しいんだよぅ。カーロスを倒して試験終了させるからアヤカちゃん?が、心配してくれたようなことにはならないよぅ。それに、万が一、カーロスを倒せなかったとしても…アヤカちゃんはラピィを殺したりなんてしないでしょう?本当に、ラピィを殺すつもりなら宣言なんてしないだろうし…もし、アヤカちゃんがラピィを殺そうとしても…アリスちゃんとドリームが止めてくれるだろうしねぇ。それに…ラピィは強いんだよぅ」
ラピスラズリは言い切った。だから、心配しないで…と。それを聞いたアヤカは溜息を吐く。
「えっと…ラピィさん、アリスさん、ドリームさん、気を悪くしてしまったらごめんなさい…この子、ちょっとひねてるから…ラピィさんたちを試すようなことをして…」
「志穂…余計なことを…」
アヤカが、祭神を睨むと祭神は人差し指をアヤカの口に当てる。これをされると、アヤカは祭神に口答えできない。志穂と綾香の鉄則だ。
「私は祭神、こちらはアヤカ、ラピィさん、アリスさん、ドリームさん、先程はアヤカが試すようなことをして失礼致しました。アリスさんは先程、アヤカが倒した魔法少女を助けようとした時点で、アヤカはアリスさんのことを気に入っていました。その、アリスさんを護ろうとしていたドリームさんも同様でしょう。でも、あとからやってきたラピィさんのことはまだ、信用できなかったみたいで…この子、あまり人のことを信用しようとしないから…」
「志穂、余計なことを…」
祭神は再びアヤカの口に人差し指を当てた。
「こちらの失礼をお詫びします。その上でこちらからもパーティー登録をお願いしたいです。私とアヤカも…最善手はカーロスの撃破だと考えていましたから…同じ目的を持つ仲間ができることはありがたいです」
祭神はアヤカの背から降りてドリームの前に立ちドリームに手を伸ばした。ドリームは祭神の手を取る。
その瞬間、ドリームたち5人は、虹色の箱に閉じ込められた。
「アゥア、よく静かにしていてくれたな。偉いぞ」
プリンセス・アリスたちが、拠点作りをしていた頃…
魔法少女スナイプはアゥアと共に人気のない野原のような場所に身を潜めていた。
スナイプの移動中にスナイプの言うことを聞いて静かにしていてくれたアゥアをスナイプは褒めていた。スナイプに褒められたアゥアは嬉しそうに無邪気に微笑んでいた。もし…生き残って少しすれば…自分にも、こんなにかわいい……
「こんなところで隠れんぼ♪ですかぁ?」
無邪気に微笑むアゥアを微笑みを浮かべながら見つめていたスナイプは…背後から声をかけられてゾッとした。この声…よく、覚えている……
スナイプはすぐにアゥアを抱えて足を動かす。
「今度は鬼ごっこ♩ですかぁ?」
黒の魔法少女はレイピアを抜き笑みを浮かべてスナイプとアゥアの後を追う。
「アァアァアァアァーーーー」
スナイプの表情を見たアゥアは、泣き始めた。
その瞬間、アゥアは無意識に魔法を発動した。スナイプにはちょっとうるさいくらいで無害だったが、黒の魔法少女カーロスには超音波としてアゥアの鳴き声が脳内に響き苦しそうにその場でふらついたが、カーロスはアゥアを睨みつけて狙いをアゥアに定めた。
「待って欲しい。取引をしたい」
自分の命とアゥアの命を救うためにスナイプは賭けに出た。
「取引?取引がしたいのなら、これを止めるのが筋ではありませんか?」
カーロスの言葉を聞いて、スナイプはアゥアに泣き止むように優しく語りかけた。スナイプの言うことを聞いてアゥアは泣き止み、泣き疲れたからか軽く眠りについた。超音波を止めることにデメリットはないように感じた。カーロスはすでに、超音波に慣れて少し身体がふらつく程度で、普通に歩いたりしていたから…アゥアが超音波を放ちながらスナイプが全力で逃げても2人は間違いなく殺されていた。なので、取引を持ちかけたことはスナイプができる最善手だったと言える。
「それで、取引とは?」
「見ての通り、こちらはあなたに対抗する手段を持ち合わせていない。私は狙撃専門で、この子の魔法はあなたに効いていない。あなたは強い魔法少女と戦いたいのだろう?ならば、私を今、殺さずに入り組んだ地形で私に狙われるスリルを味わいたくないか?」
「スナイパーは一度姿を発見された時点で三流…三流に用はありません。その程度では取引になりませんよ」
「わかっている。だが、チャンスが欲しいのだ。私とこの子を見逃して欲しい…見返りに情報を提供しよう。強そうな魔法少女の情報提供だ」
「詳しく聞きましょうか…」
ちょうど退屈していたカーロスは強い魔法少女の情報に興味を示した。しばらくして、スナイプとアゥアの前からカーロスは消えた。スナイプは恐怖から解放されて安堵の溜息を吐く。
「まあ、情報に加えて…ピクセルが気にかけていた魔法少女への温情って感じですね。わかりました。チャンスをあげましょう。次は…見つからないようにしてくださいね。あなたに狙われるのを楽しみにしてますよ♪」
最後にカーロスに言われた言葉を思い出してスナイプは震えた。次に見つかれば確実に殺される…と…
スナイプは再び町に戻ることにする。隠れ場が多い町の方が狙撃して身を隠すのに向いていたことに気づいたからだ。
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