青年ランテを中心に描かれる、壮大な王道幻想冒険譚です。
ランテが見知らぬ平原で目覚めるところから、物語は始まります。
記憶を失っているランテは、ここが何処なのかも、自分が何者なのかも分かりません。立派な剣を所持していても、どう戦っていたのかすら覚えていない。そんなランテは、助けてくれる様々な手に導かれ、出会い、別れを経験します。
仲間と共に失われた記憶を、そして秘められた歴史の謎を追いながら、守りたいものをその手で守るために奮闘するのです。
とても高い文章力で描かれた物語であり、小説を書く基礎がしっかりと出来上がっている安心感があります。これほど長い物語でありながら、途中で飽きさせることなく、いつもすぐに物語の空気の中に引き込んでくれる筆力の高さは圧倒的です。
彼らが使う呪の説明も、優秀な先生が適宜分かりやすく教えてくれますから、ご心配には及びません。
それぞれの心理描写も丁寧です。彼らの抱える苦悩や、喜び、掴み取りたい希望を我が事のように感じながら、物語を楽しむことができると保証しましょう。既に私の中では、ランテたちが息づいていると言ってよいほどなのですから!
ランテは本当に応援したくなる主人公で、その一生懸命さがとても愛おしく感じる人物です。勿論、彼以外の人たちも、どうかその希望の光を掴んで欲しいと願ってやみません。
人と人との関わり合いが生む縁。それらが紡がれていき、さらに絆となり、世界の歪みを正す力となっていく。その様を、まるで肌で感じるような感覚で読ませてくれる傑作です。
ぜひとも総文字数に怯むことなく、この物語に飛び込んでみて欲しい。
自信を持ってお薦めします!
細部までよく練られた世界観や構成、一人ひとりの生き様が丹念に描かれた本格的な戦記物です。正直、このレベルの作品が無料で読めるなんて!と声をあげて伝えたい作品です。
舞台は白女神率いる「白軍」と黒女神率いる「黒軍」が何百年にもわたって戦い続けている世界。序盤から登場人物が複数登場し、また世界観や地名など入ってくる情報が多いのですが、主人公のランテが記憶喪失である為に、ランテと一緒に一つ一つ理解していきながら物語に入っていくことができます。おそらく何度か校正を重ねており、情報量が多いのに読者が一読して理解できるような配慮が随所で見受けられるので、情報量と文字数に怯まずに挑んでほしい作品です。
この作品の見所は、何と言っても心理描写が巧みで、物語への没入感が群を抜いている点です。
人の感情は悲しみや怒りなど一言では表現することができず、複雑に絡み合っているもの。好きという感情の中に苦しみや羨望、悲しいという感情の中に怒りや安堵が混ざるように、人の心というものは相反する感情を同居させる生き物です。この作品ではその些細な心の動きや感情をあますことなく丁寧に書ききっている為、読んでいくうちに彼らと一体となって戦いに挑んでいるような気持ちになります。本を読んでいる、という感覚ではなく、彼らと一緒になって世界を切り拓いていくような感覚です。
もちろん、物語の構成も秀逸で、次第に明らかになっていくランテの過去や、本当の敵達。特に中盤では仲間が分断されたり、大切な仲間が去っていくなど、読者を心を大きく揺るがせる展開を挟んでいきますが、彼らの心情描写が巧みである為「ああもう、確かにあなたならその道を選びますよね」とついつい納得してしまいます。ゆえに読んでいて苦しい展開が続きますが、ランテが希望を捨てずに立ち向かってくれる為、読者も踏ん張ることができます。
そして苦しい展開があったからこそ、後半の巻き返しが輝く。最新話まで拝読しましたが、謎の答えが開示され、最終決戦に向けての盛り上がりを最高に感じます。まるでここまで読んできた読者にはご褒美のような熱い展開の連続。読者が受け取る感情はリアルですが、それでも物語の構成と展開はエンタメ寄りで、苦しいシーンの後は読者が興奮して熱くなるようなシーンをしっかりと挟んでくれる所も時間を忘れて夢中になって読んでしまう秘訣かもしれません。
物語の世界とは思えない、リアルな感情と共に世界に没入しながら読みたいあなたに、ぜひ読んでもらいたい作品です。
平原のど真ん中(?)に倒れているところを助けられた主人公ランテが、記憶喪失というところから話が始まります。
なので、本当に何も分からない。まるで目隠しをされたまま物語を歩かされるという状態ではあるのですが、その主人公の不安と読者の「どんな物語なんだろう?」という期待が絶妙に重なる訳ですよ。
主人公のランテは、記憶喪失という不安な状態にもかかわらず、素直で真っ直ぐな心の持ち主。何も分からない中、それでも直感で選び取る決断がいろいろな人と深い繋がりをつくり、そして世界と自身の運命の謎を解いていきます。
信頼を置くに足る人たちとの出会を通して、キナ臭い政治的な動きなどが徐々に明らかになっていく中、「何も分からない」という不安な気持ちは、いつの間にかミステリーを解くかのようなわくわく感や手応えに変わっていきます。
出てくるキャラも格好いいんですわ!(惚れる)
「まず何よりも大事なものは、己を突き動かす思いだという事」
私が主人公のランテに感じたものは、それでした。
全ての記憶を失った主人公「ランテ」
そのランテが、ポンと放り出されて立つスタートの場所は、殺し合いが絶え間なく続く戦乱の大陸でした。
そのような戦の世ならば、初めから強いことに越したことはありません。
剣の捌きも鋭いことに、越したことはないでしょう。
ですがランテは、腰に差すマイソードの扱いもままならない状態です。
(ランテは己の習得した剣技さえも、思い切り忘れていますっ)
私ならそんな状態が恐ろしくて引きこもり、強くなってからデビューしようかなと思います。
ですがランテは、そんな事は考えませんっ。
例え己が弱いと自覚しながらも、記憶を失った自分を支えてくれる仲間たちのため、その恩へ報いるために剣を抜きます。
驚愕の魔術を使う者たちと、対峙していきます。
傷つき死にかけても、立ち止まりはしません。
周りが無理だと思うことがあっても、「それでもっ」という強い思いでランテはあがきます。
その思いが周りを動かし、大きなうねりを作り上げていきます。
「まず何よりも大事なものは、己を突き動かす思いだという事」
大事な事なのでタイトル含めて、三度リフレインです。
弱いと思っていたランテが、支えられながら強くなって行き、人の思いを動かしていく。
このド直球な青年(イケメン)の思いの行く先を、あなたも見たくはありませんか?
私はぜひ見たいので、ページをクリックし続けております(・v・)
記憶喪失の状態で目覚めた主人公ランテ。親切な軍人たちに無事(?)拾われ、彼は寝床と仕事を得ます。任務をこなしていく日々の中でやがてランテは自身に宿る力に気づき、世界を巡る陰謀へと足を踏み入れていく――という王道ファンタジー。
軍や政治が息づく骨太な世界観。ですが何も知らないランテの視点を借り、順序よく読み込んでいけるのが心地よいです。剣や槍を使った豪快なアクションに加え、『呪』と呼ばれる魔法のような力が活躍。しっかりとしたファンタジーを魅せてくれます。
天真爛漫で好奇心旺盛なランテは主人公として申し分ないですし、彼を取り巻くキャラクターたちも本当に魅力的。ランテを優しく導いてくれる兄貴分のセト、強気だけど面倒見の良いユウラ、そして柔らかい物腰と手厳しい指南術をもつテイト(推し)。彼らが所属する北支部をはじめ、ほかの支部の面々も実にバランスよく個性的な人々ばかりです。これほどの登場人物を的確に動かしつつ個性付けができるだけでも、作者さまの筆力の高さが窺えます。
そして何より、熱いストーリーが一番の魅力!この世界は「白軍」「黒軍」という二大勢力に分かれて長い争いを続けているのですが、それに身を投じる人々にはやはり強い信念が宿っています。自分のため、大切なひとのため――そして、世界を変えてしまうほどの欲望のため。全員が何らかの意思を貫くため、誰かとぶつかっていく展開はアツいの一言。一度は剣を交えた者同士が組むことになったと思えば、寝食を共にした者と袂を分かつ厳しい場面もあり、1話たりとも見逃せません。
決して単純明快な物語でもなければ、一発逆転の爽快さを求める話でもありません。幾多の苦難と、正解の出せない問題が次々に襲いかかってくるような厳しさをもつ物語、という印象が強いです。
けれど読み進めてしまうのは、この争いの果てに何が待ち受けているのか――そして愛してやまないキャラたちが、それぞれにどんな結論を出すのか気になって仕方ないから。絶対に最後まで追いかけたい!と思わせてくれるパワーがある作品です。
秋の夜長にぴったりな読み応えのある深い作品をお探しの方に、ぜひ!
舞台は、「白軍」「黒軍」と呼ばれる二大勢力が戦争を繰り広げ、不気味に息をひそめるもう一つの勢力「中央」が暗躍する世界。主人公の少年ランテは記憶喪失で、倒れていたところを白軍の一部隊に拾われるところから、物語が始まります。
何も知らないランテの視点に合わせて、RPGをプレイする感覚で開けていく序盤は、謎解きも多く含まれているので、考察を楽しみながら読み進められます。また、彼を囲む様々なキャラクターが顔を見せてくれます。人望が厚い実力者で、ランテを拾ってくれたセト、厳しくも優しい面を見せる女性の槍兵ユウラ、穏やかだけど実は鬼教官のテイト。ランテは彼らと、仲間として絆を深めていきます。
白軍にいる以上、ランテは黒軍との戦いや、何かを企む中央と関わり、巻き込まれ、けれど自分の意志で身を投じます。そんな彼の前に現れるのが、儚く不思議な雰囲気をまとった少女ルノア。彼女はランテが戦いに赴くことを嫌がっているようですが、いつも謎めいた言葉を残して去っていく。眼差し一つで心を捉えるような彼女に止められながらも、ランテは歩みを止めません。
そんな彼の行く先には、辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、痛ましいこと……真っ直ぐすぎる彼には強く響く、暗い展開が待ち受けています。ランテだけでなく、彼が大事に思う仲間たちにも。個人だけでなく、仲間としてのこれからにも。
思い合うのにすれ違い、届かない。誰もが誰かを思いながら、けれどそう上手くはいかない関係。一人の中に秘められた複雑さや葛藤まで、丁寧に描かれています。だからこそ、キャラクターたちが愛おしく、身近にいるようで、肩入れせずにはいられません。
世界に秘められた謎、その答えに、ランテたちは傷だらけになりながら、それでも逃げずにどう向き合うのか。まだまだこれから、追いかけがいのある王道ファンタジー、ぜひご堪能ください。
主人公の青年ランテ。彼には記憶がなかった。自分の正体も、なにもかも。
彼が目覚めた世界は「白軍」「黒軍」なるふたつの派閥が争い続けていると、彼を助けた人達……セト・テイト・ユウラ……から聞く。
彼は彼ら彼女らの仲間となり、自分の正体を求めて、この世界の謎を解くべく、戦いの渦中に乗り込んでいく……。
まだ序盤までしか読み進めていないのですが、印象に残るのは、ランテたちが属する「白軍」内とて一枚岩ではなく、その内部には「人間同士」の策謀と対立が渦巻いているところです。これが現実の紛争のなかにもありそうな人間模様、人間ドラマを醸し出しており、リアルの世界とどこかシンクロするものを感じました。そこに立脚した物語世界ですので、ファンタジーといえども、絵空事のように思えない迫力や説得力があり、ついつい読む者を引きずりこみます。
よって、読み応え十分。
この先も長く続く物語のようですが、末永くこの世界観を堪能し、共有していきたい欲求に駆られています。
みなさまも、ぜひご一緒に。
とある平原で目を覚ました青年、ランテ。
しかし彼には記憶がなく、自分が誰なのか、今居る場所がどこなのかも分からなかった。
ランテは最初に倒れている所を助けてくれたセト、ユウラ、テイトと行動を共にし、自分の記憶を探すことを決意する。
しかし、「白軍」「黒軍」による争いが長く続いているこの世界で、ランテは様々な困難に直面していくことになる。
登場人物たちが生き生きと動いています。
彼らの信頼、友情の物語。お互いがお互いを大切と思うからこそ生まれる苦悩、悲しみ、切なさが胸を抉るほど上手く描かれています。
そして、圧巻の戦闘描写!チームワークが成せる技の数々は見どころです。
失くした記憶が多くの謎を呼び、物語が加速する。先の展開が気になって仕方ありません。
皆さんもぜひご一読を!
目覚めると自分の名前すら分からず、どこにいるのかも分からない。
そんな状態で白軍と呼ばれる一団に助けられた青年は自らの名がランテであることを知るのですが…。
といった出だしで始まるこの物語。
記憶を失ったランテはこの世界では白女神の使徒と黒女神の使徒が激しい争いを繰り広げていることを知り、違和感を覚えるのでした。
今、自分の見ている世界のどこかがおかしいと思うのにそれが何かが分からないもどかしさ。
何が正しくて、何が間違っているのか、それすら分からない不確かな記憶のまま、戦いに巻き込まれていく。
ランテに秘められた力の謎、不思議な力を操るヒロインといった珠玉のエッセンスが散りばめられており、特に王道ファンタジーが好きな方にお薦めします!
記憶喪失の主人公とともに戦い、仲間と交流し、謎を解いてゆく。神話が根差す世界にて隠された歴史の真相をたどる、王道冒険ファンタジーです。
主人公のランテは、自分の名前以外の記憶を失っていました。呼びかけに揺り起こされて目覚めたランテは、そこがよく晴れた草原であること、起こしてくれたのが若い男性であること、自分の持ち物が彼らの手に渡っていることに気がつきます。
緊張感なく「盗賊団ですか?」と尋ねたランテに、セトと名乗ったその男性は笑いながら答えるのでした。自分たちは【白軍】――白女神の使徒である、と。
何もかもを思い出せないながら、大きな動揺も混乱もなく誘いに乗るマイペースなランテ。一見気さくで面倒見が良さそうなのに、実はとんでもなく危なっかしい人物であるセト。ツンツンしながらも情が深い槍遣いの女性ユウラ。物腰が穏やかで気の回る青年テイト。
ランテが仲間入りした【白軍】のエルティ支部は個性的ながらも気のいい面々が揃っていて、記憶のないランテを温かく迎えてくれます。しかし、さほど時を置かずして、ランテは中央と支部のいさかいに巻き込まれ――。
神話が息づき、【黒獣】が闊歩し、精霊との契約により人々は【呪】を扱う。そんな、懐かしさと新しさが織り交ぜられたファンタジーです。
主人公の記憶喪失、歴史の謎、身に秘めた特殊な力、などの要素が物語に謎解きの趣を添えていて、考察好きな方の好奇心を刺激してくれるでしょう。
長く丁寧に織られた大長編ファンタジー、じっくりと読みふけってみませんか?
王道ファンタジー小説。よく練られた世界観と、そこに生きる個性的な登場人物たちが魅力的な作品です。話のテンポも良く、引きがうまいため、続きが気になって一気に読み進めてしまいました。
ファンタジー小説は、設定を詰めすぎると、読者が置いていかれてしまうことも多いですが、この作品は記憶喪失の主人公の視点で話が展開されるため、読み進めるだけで自然とこの世界のことを知ることができます。
また、主人公やその仲間たちはもちろんのこと、敵対する人物や、登場するシーンの少ない脇役まで、きちんと個性があり、彼らもまた彼らの人生を全うしていることが伝わってくる点を高く評価したいです。
とても個人的な解釈になりますが、この作品は「アイデンティティ」について考えさせられる場面が多いです。自分にとっての正義は誰かにとって悪なのではないか、というような、二面性についても考えさせられます。
深いテーマ性と、シンプルに面白いストーリー展開、時に切なく、時に笑える登場人物たちの掛け合い、そんな魅力が存分に詰まった作品です。
本作は黒と白の女神の使徒たちが対立する異世界を舞台として、記憶を失った少年が白軍の防衛都市の部隊に拾われるところから始まります。
自分が何者なのか、なぜそこにいたのかも分からない主人公でしたが、知勇兼備で心根が優しい隊長の世話を受け、これからの自分のあり方を考えます。
しかし、隊長の引き抜きを画策する軍幹部の陰謀により、人質として捕らえられてしまった主人公は、そこである少女と運命的な出会いを果たすのでした。
世界を取り巻く謎、主人公や少女の正体、全く新しい異世界の冒険が綴られています。
文体は落ち着いており、またいわゆる転生・転移ものではないことから、ハイファンタジー志向の方には特にお薦めです。
主人公は記憶喪失。謎の美女ルノアは、話すことが意味深で抽象的。
仲間たちも、それぞれに重いものを背負っている模様。
登場人物たちも謎なら、世界も謎に満ちています。中央の存在が不気味です。
と、まあそんな感想はさておき。私はミーハーですので、素敵な男性に目がいきます。
まずセト。お願いだから休んで。寝て。自分を大切にして。命を捨てるようなことしないで。生き急がないで。……とてもいい人ゆえに心配です。彼の背負っている過去が気になります。
そしてデリヤ。敵に回ってしまいましたが、恐ろしく格好いいのですよ。不思議です。やつれているし、病んだ雰囲気が漂っておりますが、根っこが純粋なのでしょう。毒を吐く台詞にもキュンとしてしまいます。彼の幸せを願うファンは多いでしょう。
謎はゆっくり明かされていくようです。
昨今のお手軽ファンタジーでは物足りない方におすすめの重厚な物語です。
主人公ランテは名前以外なにも知らない。草原にポツンといるところに白軍の隊長セトに手を差し伸べられついていくことに。
この世界がどんなところなのか聞いても違和感こそ持てども何となくしか分からない。いざというときに発揮される自身の力も未知数。
人と出会い、話しを聞いて本を読み解き、人を助け、人に助けられ戦っていく中で少しづつ世界が広がっていく。
このランテの状況、読み手である読者に限りなく近いと思いませんか? それ故に物語に入り込みランテと一緒に見て、聞いて、感じるそんな追体験している感覚に浸れると思います。
ゆっくりと、だけども大きく動いていく世界を体感出来る物語です。限りなく体験に近い読む感覚を是非味わって欲しいです。