気が付いたら夢中になってた。登場人物誰もが愛おしくなる物語。

王道ファンタジー小説。よく練られた世界観と、そこに生きる個性的な登場人物たちが魅力的な作品です。話のテンポも良く、引きがうまいため、続きが気になって一気に読み進めてしまいました。

ファンタジー小説は、設定を詰めすぎると、読者が置いていかれてしまうことも多いですが、この作品は記憶喪失の主人公の視点で話が展開されるため、読み進めるだけで自然とこの世界のことを知ることができます。

また、主人公やその仲間たちはもちろんのこと、敵対する人物や、登場するシーンの少ない脇役まで、きちんと個性があり、彼らもまた彼らの人生を全うしていることが伝わってくる点を高く評価したいです。

とても個人的な解釈になりますが、この作品は「アイデンティティ」について考えさせられる場面が多いです。自分にとっての正義は誰かにとって悪なのではないか、というような、二面性についても考えさせられます。

深いテーマ性と、シンプルに面白いストーリー展開、時に切なく、時に笑える登場人物たちの掛け合い、そんな魅力が存分に詰まった作品です。

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