秘めた力の意味を問え。仲間を守り、歴史の謎を探る、幻想戦記・冒険譚。

 記憶喪失の主人公とともに戦い、仲間と交流し、謎を解いてゆく。神話が根差す世界にて隠された歴史の真相をたどる、王道冒険ファンタジーです。

 主人公のランテは、自分の名前以外の記憶を失っていました。呼びかけに揺り起こされて目覚めたランテは、そこがよく晴れた草原であること、起こしてくれたのが若い男性であること、自分の持ち物が彼らの手に渡っていることに気がつきます。
 緊張感なく「盗賊団ですか?」と尋ねたランテに、セトと名乗ったその男性は笑いながら答えるのでした。自分たちは【白軍】――白女神の使徒である、と。

 何もかもを思い出せないながら、大きな動揺も混乱もなく誘いに乗るマイペースなランテ。一見気さくで面倒見が良さそうなのに、実はとんでもなく危なっかしい人物であるセト。ツンツンしながらも情が深い槍遣いの女性ユウラ。物腰が穏やかで気の回る青年テイト。
 ランテが仲間入りした【白軍】のエルティ支部は個性的ながらも気のいい面々が揃っていて、記憶のないランテを温かく迎えてくれます。しかし、さほど時を置かずして、ランテは中央と支部のいさかいに巻き込まれ――。

 神話が息づき、【黒獣】が闊歩し、精霊との契約により人々は【呪】を扱う。そんな、懐かしさと新しさが織り交ぜられたファンタジーです。
 主人公の記憶喪失、歴史の謎、身に秘めた特殊な力、などの要素が物語に謎解きの趣を添えていて、考察好きな方の好奇心を刺激してくれるでしょう。
 長く丁寧に織られた大長編ファンタジー、じっくりと読みふけってみませんか?

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