紡いだ絆が、世界を変える力となる。

青年ランテを中心に描かれる、壮大な王道幻想冒険譚です。
ランテが見知らぬ平原で目覚めるところから、物語は始まります。
記憶を失っているランテは、ここが何処なのかも、自分が何者なのかも分かりません。立派な剣を所持していても、どう戦っていたのかすら覚えていない。そんなランテは、助けてくれる様々な手に導かれ、出会い、別れを経験します。
仲間と共に失われた記憶を、そして秘められた歴史の謎を追いながら、守りたいものをその手で守るために奮闘するのです。

とても高い文章力で描かれた物語であり、小説を書く基礎がしっかりと出来上がっている安心感があります。これほど長い物語でありながら、途中で飽きさせることなく、いつもすぐに物語の空気の中に引き込んでくれる筆力の高さは圧倒的です。
彼らが使う呪の説明も、優秀な先生が適宜分かりやすく教えてくれますから、ご心配には及びません。

それぞれの心理描写も丁寧です。彼らの抱える苦悩や、喜び、掴み取りたい希望を我が事のように感じながら、物語を楽しむことができると保証しましょう。既に私の中では、ランテたちが息づいていると言ってよいほどなのですから!

ランテは本当に応援したくなる主人公で、その一生懸命さがとても愛おしく感じる人物です。勿論、彼以外の人たちも、どうかその希望の光を掴んで欲しいと願ってやみません。

人と人との関わり合いが生む縁。それらが紡がれていき、さらに絆となり、世界の歪みを正す力となっていく。その様を、まるで肌で感じるような感覚で読ませてくれる傑作です。

ぜひとも総文字数に怯むことなく、この物語に飛び込んでみて欲しい。
自信を持ってお薦めします!

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