第16話 有栖に彼氏??

有栖と高野くんという少年は俺たちが昨日訪れたショッピングモール内に消えてゆく。俺は見失わないように慎重に距離を近づける。すると有栖の楽しそうに笑う顔が俺のスクリーンに写る。


…………………。


やはり有栖は……。

ま、まさか昨日の俺とのデートはこの男との予行練習……なのか?ソンナバカナ……。


2人はそのまま映画館に向かう。

チケットを購入しスクリーンへと向かっていた。俺も少し痛い実費だが妹の為と気を持ちチケットを購入し後を追う。

上映が始まると同時に室内がほぼ暗くなる。カップルどもはこの空間を最大限利用しイチャイチャするのだろう。有栖たちの距離が更に近づいているのがわかり俺は映画の内容よりそっちに気を取られていた。

映画の内容は高校生の生活を舞台としたラブストーリーだった。甘々しく、じれったい、そんな物語だった。俺でさえ恋愛したいと思えてしまうほどに。


2人がカフェでくつろぎ出したので俺は桃井に電話をかける。まだ部活前だったのか休憩中だったのか3コールもしないうちに出てくれた。


桃井から聞いた情報はこうだ。

高野洋一(たかの よういち)。有栖と同じ1年生で同じクラス。容姿、体格は優れていてとてもモテているらしい。それに俳優志望で事務所にも通っているんだとか……。

この情報量の多さにさすがの俺も驚きを隠せない。クラスカーストトップの女とはここまで凄いのかと。改めて俺に絡んでくるのは何故かと疑問に思うぐらいだ。まぁでも素直に感謝だな。俺は心からそう思った。


監視に戻ろうと思ったが黒い噂が無いようなので一安心して自分の用を足すことにする。すると聞き覚えのある声が奥の個室から聞こえてくる。


(彼女はいいですよー絶対うちに入るべきですって!)


誰かと思ったら高野じゃないか。

それも有栖と話す時とちょっとトーン違くないか?もうしばらく様子をみよう。


(彼女、とてもいい顔するんですよ。これは押せば多分いけますよ!!)


………………。


え?何を言ってるんだこいつ。


押せばいける……だと?

妹に出だしたらお兄ちゃんただじゃすまないぞ!

やはりバイ菌だったか……。

まぁイケメンなんて皆バイ菌のようなものだ。

俺は監視をやめ、いつ介入するか思考する事にした。

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