第15話 有栖の挙動
桃井に”一緒に帰ろう”と声をかけてみたが断られてしまった。部活が忙しいという。
俺はスマホを取り出し電話をかける。
するとワンコールもしないうちに彼女は出た。
「も、もしもし!どどどうしたのお兄ちゃん!?」
「急にすまんな、そ、そのだな。今日よかったら一緒に帰らないか?」
俺はこの時即答で答えが返ってくると確信していた。だが即答の答えは俺の想像を超えるものだった。
「ご、ごめん!今日はおと……じゃなかったと、友達と約束があるの!!」
「そ、そっか、有栖にも付き合い……とかあ、あるもんな。」
「う、うん、またねお兄ちゃん。」
通話が切れた。
………と思ったが何故かまだ繋いであった。
さては有栖……切り忘れたな。
そんなことあるのか?と思うが有栖は時々抜けたようなとこがある。たまたまそれが今回働いたのだろう。俺はしましまと切ろうとする。
すると……
(おまたせー神田さん!)
(あ、高野くん!うんうん大丈夫だよー)
(それじゃ行こっか!)
(うん!!)
俺は盗聴していた。
盗聴させられてた?どっちでもいいが男女2人の声がした。1人は俺の妹である有栖。もう1人は………誰だ??
有栖のことだから野蛮な野郎ではないとは思うが不思議だった。学校が始まってまだ2日だが有栖が男の子と話していたのは初めて聞いた。
ひょっとして有栖……。
……………………。
いやないない!だって有栖はお兄ちゃん、つまり俺の事が世界で1番大好きなのだから!昨日の夜中俺のパンツを被って嗅いでいたことも俺は知ってるんだぜ!!
でも………もしかして……
もしかした………ら?
やだやだやだやだやだやだ。
俺の中で有栖への愛のキャパシティが膨張してゆく。
有栖……有栖……!!
俺は急いで下駄箱へ向かうと有栖が例の男子といるのが見えた。俺はその2人の様子を隣の棚から垣間見ていた。
(洋一くんはどこ行きたい?)
(俺は有栖ちゃんが楽しいとこなら何処でも。)
(じゃあ映画とか行こっか?)
(いいね、行こっ!)
ふむふむ……映画館か。悪くないチョイスだ。
ってえ!?な、名前呼び!?
さっきまで苗字だったよな……。
ほ、本当に有栖に彼氏が……。
そ、ソンナバカナ。
でも今考えてみれば自然なことだ。有栖は可愛い。つまり有栖がモテるのは必然。彼氏がいても別におかしくはないのだ。
ここは兄として素直に応援し、見守ってやるべきだろう。
俺は2人の後を追う。
勘違いするなよ?
これはあくまで監視だ監視だ。
有栖にもしバイ菌がついていたら取り除かないとだからな!そう、それこそ俺が生まれた意味!!
俺は距離間に気をつけ妙に距離が近い2人に苛立ちながら
2人の後を静かに追った。
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