第14話 始まりの季節

「では、男女でペアを組んでくださーい!」


担任の京ちゃん先生の明るい声が教室中にこだました。京ちゃん先生とは音無 京子(おとなし きょうこ)という新米の先生のあだ名だ。まだ学校に慣れていないことのあり、日々わたわたしていてかわいい先生だ。そんな先生から耳を疑うようなことが聞こえた気がした。


「早く男女ペア組んで〜!」


現実だった。

頭がお花畑ということを聞いてはいたがまさかここまでとは。

俺はため息を小さく吐きゆっくりと腰を起こした。



ー1時間前ー


京ちゃん先生が重大発表!と言っていたので期待は大きいが何となく予想はわかっていた。

今日は4月8日。

水高は5月の始めに校外学習が年次予定で含まれている。毎年行く場所がランダムと生徒の期待を爆発させる体制をとっており、実際皆浮き足立っているように見えた。


まぁ俺は何処でもいいんだけどな。

男子に友達と呼べるやつが居ない俺は1人で景色を楽しめる場所がいいなと思案するぐらいだ。


富士山とか…いいかもな……。


富士山。

日本一高い山で世界にも名高い綺麗な形をしたお山である。日本人として死ぬまでに一度は是非行きたい場所の1つだ。


すると授業を開始するチャイムがなり、京ちゃん先生が教室に入ってきた。


皆の緊張が強ばるのを感じる。


そして先生は皆が気になっているであろう内容を淡々と、さも興味無さそうに伝えた。


「えー来月の校外学習……行く場所は富士山でーす」


反応は様々だった。

喜ぶもの、肩を落とすもの。寝てるもの……。


俺とはいうと、とてもはしゃいでいた。

(もちろん心の中でだが)

まさか願った通りになるとはな。京ちゃん先生に感謝だぜ!

俺は自然と京ちゃん先生にウインクしていた。

すると俺に返すように可愛げにこっそりウインクしていた。俺は5歳以上年上の人にすこしばかり”キュン”としてしまった。


「でー富士山に行くって言うのも重大発表なんだけどねー。私の重大発表はそれじゃありません!」


ん??

違うのか?

それは………まさか結婚!?

おいおいそんなこと発表されたらクラスから何人泣き寝入りする人が出るかわからないぞ!!


「1日目の午後にウォークラリーをしてもらいます。男女ペアで♡」


ぁぁ青春だわぁ〜!


京ちゃん先生はとてもニヤニヤしている。

訂正この人にはやはり感謝などしてはならない。

男女でウォークラリー……だと?ぼっちの俺にどうしろと………?話せるのは桃井ぐらいだが桃井は人気なためおそらく無理だろう。

ひとまず俺は腰を起こし、辺りを見渡す。


そして今に至る。

どうやら皆ペアが決まって来ているようだ。

俺はと言うとまだ決まって居ない。どうしようかと迷いながら京ちゃん先生と目が合った。もう先生と組みたい的なノリで乗り切るか…!!

そう思案していると俺の制服の裾が軽く、小さく引かれた。誰かと思い俺は慌てて振り返る。すると意外な人物がそこにはいた。


桃井春乃。


クラスの中心人物の彼女だがどうやら俺と組みたいがために来る男子をことごとく退けてきたと言う。他の男子からは怒りと嫉妬が混ざった視線が送られてくる。


めんどくさいな……。


でもここで誘わなければ男じゃないだろう。


「俺と組む…か?」

「う、うん…!!」


春乃は”やったぁ”とにっこりと笑う。


”春乃はやはり笑うと可愛いな”


春乃は急にりんごのように赤くなった。

……どうやら声が漏れていたようだ。

俺は参ったなっ。と頭をかいた。


(楓夏もかっこいいよ……)

(キーンコーンカーンコーン)


丁度というタイミングでチャイムが重なりこの声が俺に聞こえることはなかった。

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