第11話 有栖と楓夏

俺は今聖域にいる。

どこかわからない?ふむふむ。

ではヒント①、男性が見当たらない。

何?全然わからない??

ではヒント②だ。

薄い布地のものが綺麗に陳列してある。

なんだと……これでもわからないとは。

俺だったらお前らの考えている間に100回はそれを被れるぜ。


ふふふ。ようやくわかったようだな。


そう俺は今、夢の場所。


下着コーナーにお邪魔している!!


男なら1度は入りたい、気になってしまう下着コーナー。だが今回の俺の目的はあくまでプレゼントだ。俺は恥を知らず、女性店員さんに声をかける。


「あのー、プレゼントにパンツを贈りたいのですがおすすめの大人のパンツはありますか?」


店員さんは”少々お待ち下さい”といい店の裏手に消えていった。はっきりとは見えなかったがその横顔は少し笑っていた。俺にはそれが理解出来なかった。


待つこと5分後…


「お待たせいたしましたー。こちらでどうでしょうか?」


お姉さんが持ってきてくれたのはフリルが付いていなく清楚感を演出する白のパンツだった。シンプルだがそれがまたいいと評判が良いらしい。俺もそれがお宝のように見え、被るのを耐えるのに必死だった。


ラッピングをしてもらい、店員さんの計らいで手紙も同封した。


そして1時間後の待ち合わせの時間を迎えた。

雨音がまだ弱く響いてはいたが先程よりかはましそうなのでこれなら歩いて帰れるだろう。

外に出て遠くを眺める。雨で夕日はかすみ、独特な色が俺の世界を覆っているように感じた。

右側から足音がすると頬っぺたに冷たい感触が走った。気がつかなかったがそこには有栖がいた。


「はい」

「ありがとう」


有栖は俺にぶどうジュースをくれた。ちなみに有栖自身はミックスジュースをごくごくと飲んでいた。歳は1歳しか変わらないのだが有栖のチョイスはややお子様寄りだ。そんなとこがまた可愛かったりする。


「さっきはごめんね。私、嫌な女だった。」

「そんなことないよ。俺が悪いんだし。」

「そんな……でもうん。」


謝罪は済んだようだし俺はプレゼントを取り出した。


「有栖、俺からのプレゼントだ!受け取って欲しい。」


俺が手渡すと有栖は無言で受け取った。


「中身………見ていい?」


俺が笑顔で頷くと有栖は目を輝かせながら袋をあける。

そして”アレ”をみた途端、有栖の目から光が消えた。


「どうだ有栖。いいだろう。お兄ちゃん真剣に考えたんだ。有栖も気に入ってくれて嬉しいよ。」


有栖はしばらく黙って下を向いていたがしばらくするとにこやかな表情を作り、


「ありがとうお兄ちゃん。」

「ちょっと後ろ向いてくれるかな。」


有栖の意図はわからないが俺は従い後ろをむく。

その途端、俺の背中に激痛が走る。

振り向くと有栖が泣きながら笑っていた。

どうやら俺は有栖に蹴られたらしい。


(……妹に蹴られるとか…最高すぎて言葉が出ない…………)


いつもならこのふざけた口が暴走しかねないのだが今日はギリギリのとこで留まった。それは有栖が今俺から見ても明らかにおかしな状態だからだろう。


「有栖……大丈夫か……?」


俺は有栖の頭に手を回す。

それを有栖が叩いて防ぐ。


「も、もう……お兄ちゃんのバカぁああ!!」


有栖は怒って先に帰ってしまった。

外に出てみると雨はやんでおり水溜まりが月明かりに照らされていてとても綺麗だった。





◇◆◇




私は家に着いてもまだ涙は止まらなかった。

大好きなお兄ちゃん。そのお兄ちゃんからの初めてのプレゼント。


だったのに。。


まさかの”白のパンツ”


私の中で怒りより笑いの方が大きかった。

でも悔しくて。気がついたら涙が出ていてお兄ちゃんを置いて帰っていた。


お兄ちゃん大丈夫かな……。


私はお兄ちゃんからもらったパンツを広げてみる。するとパンツの中から紙が1枚現れた。

それはお兄ちゃんからの手紙だった。


有栖へ


俺は有栖が妹でとっても嬉しい。

有栖といると毎日が楽しいし、いつも嫌いだった登下校もこれから楽しそうになる予感がする。

俺たちの距離は近すぎるぐらい近いけど俺はこれからもこの距離間でいたい。

今日はこんな初めてのデートだったけど次があればもっと上手く立ち回りたいかな!

親愛なる有栖に俺はこのパンツを贈ります。


楓夏


なんであの時気がついてあげれなかったのだろう。お兄ちゃんは多分悩んで…悩んで……パンツに行き当たったのだろう。それなのに私は……。


”ガチャ”


お兄ちゃんが帰ってきたみたいだ。

私はすぐに階段を下りお兄ちゃんの元へ駆け寄った。


「お兄ちゃん手紙読んだよ。ごめん、私誤解してた。お兄ちゃんのこと。パンツ本当にありがとう……。」

「………………」

「で、でもね。私はパンツよりもお兄ちゃんが好きなの!お兄ちゃんがいいの!!」


そう言いながら気がつくと私はお兄ちゃんに抱きついていた。お兄ちゃんはそんな私の背中に優しく手を回してくれた。


あぁ、なんて幸せなのだろう。


お互いの体を離し、目が合うとお兄ちゃんが微笑みながら私に言ってくれた。


「ただいま。」


「おかえり。」


私もお兄ちゃんの笑顔に負けないぐらいの笑顔で言葉を返した。



ーーーーーーーーーーー



更新遅れてすいません!!


お久しぶりです。唯月莉奈です。

いよいよ義妹の関係が発展してきた!って感想の人が多いと思います。

ですがご安心を。まだまだ続きます!!


この話を制作するにあたってまた妹の可能性に一歩近づけた気がします。

これからの展開も是非期待しながらお読みください!


以上あとがきでした。

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