第17話 騒動の結末
カフェでくつろぎながら談笑している2人をみていると有栖からの視線を感じた気がした。どうしたのかと思いうかかうと高野が有栖の手を優しく握っていた。
あ、あのバイ菌野郎、アリスの手を………。
許さねぇ、、。その手に触れていいのは俺だけだ!!
ふ、、どうやらバイ菌くんには俺からのお兄ちゃんパンツ、、いやお兄ちゃんパンチをくらわせてやるか。
俺は軽快に2人のもとに歩み寄る。だがあと一歩のところで、有栖の行動が俺の足を止める。
有栖はその手を握りかえしたのだ。
え?まさか付き合ってるのか?
お兄ちゃん以外の人と手を繋ぐということはそういうことなの……?
にわかに信じがたいがそうなのだろうか。
俺は頭の整理が追いつかず、物陰に隠れた。
少し落ち着いたことで俺は冷静な判断力を取り戻しつつあった。
物陰から高野のことを一瞥する。
高野はイケメンだ。人柄も良さそうな印象だ。だからなのかトイレでの会話がとても引っ掛かった。あれはどういう意味だったのだろう。
もしもあれがそのままの意味なら高野はただのバイ菌だ。
そんなこと俺が許さない。誰の妹だと思っている。
有栖は俺の妹だぞ!!
俺の足はもう動きだしていた。有栖のもとに。
今度は堂々と歩いているため有栖は俺に気づき驚きの表情を浮かべている。
「おおおお兄ちゃん!?どったの??」
「帰るぞ有栖」
俺は有栖の腕を半ば強引に掴むとそれに対抗するように高野が俺の手首を強めに掴みながら言葉を選ぶ。
「お兄さん、、でしたっけ?急にどうされたんですか。」
「お前にお兄さんと呼ばれる筋合いはないはずだが?」
「どうやら僕は嫌われてしまったようですね。」
少し長めの髪をかき分け余裕そうな笑を見せる。
こいつが……有栖を……。
俺の怒りはヒートアップしていく。
有栖の前で。
有栖は戸惑い口を開く。
「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて!洋一くんはもう少し抑えて。お兄ちゃんは……ってそもそもなんでいるの!?」
「そんなの有栖がいるからに決まっているだろう。」
「この人恐ろしい程にシスコンだな……。」
バイ菌に引かれてしまった。
ん?そうだバイ菌だ、有栖に伝えなくては、
「有栖………高野くんと付き合ってるのか?」
「……………………」
有栖の反応がない。
しばらくの間沈黙が続く。
それを解いたのはなんとバイ菌の一言だった。
「違いますよ。俺はただ彼女の練習に付き合っていただけです。」
「ちょ、ちょっと洋一くん!!」
「おい有栖、それはどういうことだ?」
「…………………」
「も、もう!わかったよ!いえばいいんでしょいえば!」
「私………女優になりたいの。」
「だから……演技が得意で俳優志望の洋一くんにちょっとが付き合ってもらってたの」
「そういうことです。お騒がせしました。お兄さん。」
なんだ……。
そういうことだったのか。
てか高野くんいいやつじゃないか。
バイ菌なんて言ってた俺が恥ずかしいな……。
有栖が初めて自分のことを、将来のことを語ってくれたからか、いいやつと認めた相手にお兄さんと呼ばれる歯がゆさからなのか。
俺はこの時とても気分がよかった。
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