第19話 休日の予定

時間は流れ、桜の花が段々と散ってゆく。春の温もりを感じながら少し雨の匂いも感じるこの季節。

俺は5月を迎えていた。

窓から微かに入ってくる太陽の光で俺はぼんやりと目をあける。


10時。


ち、遅刻だぁぁ!!

とはならない。

だって今日は日曜日なのだから。

普段ならもうひと眠りするところだが俺には今日つめ約束があるので体を起こす。

重たくフラフラと足を運び、洗面台で顔を洗う。


冷たい水が俺の目を否が応でも覚まさせる。


その時携帯が震えた。


「今日1時に駅前でね!」


俺は1時に千葉駅にいけるように支度を始める。

そういえば桃井とは初めてのお出かけかもしれない。そう思うと少し胸が高まった。

なぜ休日に?

それは昨日の夜に巻き戻る。






土曜日ということもあり、勉強にゲームに素晴らしく充実した日を過ごしていたその夜、俺のスマホが突然鳴った。


慌てて出てみると、馴染み深いやつの声がした。


「もしもし?今大丈夫だった??」

「大丈夫だよ。それより桃井から電話とか珍しいな、どうしたの?」

「え、あ、うん。フーちゃん明日暇?」

「だからフーちゃんって言うな………って明日?」


急に明日と言われて俺は少し取り乱すが特に予定もないので落ち着いて返す。


「特に予定ないけど。」

「そ、そう、では私に明日付き合いなさい!」


は?は?は?


「え、どゆこと。」

「もう〜察しなさいよー。明後日校外学習でしょう?だからその買い出しよ。」


あーなるほど。

察しなさいとか言うから……てっきり俺に気があるのかと思っちゃったぜ、、。


「了解、じゃあ明日の午後なー。」

「何?午前は予定でもあるの?」

「あぁ、睡眠って予定がなっ!!」


はぁぁ。

と長い息が通話口から聞こえてくる。

そんなに呆れないでくれよ、、


「もう、しっかりしなさいよね。でもわかったわ、じゃあ1時に千葉駅の前集合ね。」


「了解、いい夢見ろよ。」

「何バカなこと言ってるのよ。おやすみ!」

「おう。おやすみ」






こんな具合で今日の予定が決まったのだ。

少し予定より早く起きれたこともあり俺は待ち合わせより30分程早く着いた。


10分程たったところで桃井が姿を現す。長い髪は程よくまとめられ。白い大きめワンピースを見に纏い、少し深めにサーフハットを被るその姿は多くの人を魅了しているようにみえた。もちろんだが俺も見惚れていた。


「やほ〜おまたせ〜。」

「いや早く来過ぎただけだから」


桃井が俺に話しかけたのを見るとギャラリーは段々と散ってゆく。きっと願わくば…!という人もいたのだろう。なんか……悪いな。

俺はその人達に心の中で土下座した。


「それじゃぁ、行こっか!」

桃井は歩き始める。俺も歩こうとすると桃井が俺に耳打ちしてきた。


「今日だけは春乃って呼んでね。」


イタズラしたあとの子供のような顔をしながら春乃は笑う。

俺は仕返しに耳打ちする。


「楽しむぞ、春乃っ」


春乃の顔がどんどん赤く染まってゆく。

りんごのように真っ赤な春乃に俺は堪えきれず盛大に笑う。


ただそれは耳打ちの照れ隠しでもあった。


ほんとに可愛すぎんだよ、、バカ。


見上げるとそこには青空が広がっている。

雲のひとつもない空。

夏のおとづれを感じるような、そんな空だった。

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