第10話 電話とパンツ
ー夕方ー
私はお風呂に入っていた。水より少しばかり暖かいものが体の汗を落としてゆく。浴槽に入ると体に溜まった疲れが滲み出てくる。私はぼぉっと天井を見上げる。
(フーちゃん……まさかシスコンだったとはね…。)
私は今日の朝の出来事を思い浮かべていた。
フーちゃんの発言が蘇ってくる。
「俺はシスコンだっ!」
あの時のフーちゃん、少年のようにキラキラした目してたな。全く、私と言う存在がありながらなんでそこまで妹にご執心なのかね。
ほんと変なの………。
気がつくと1時間が経過していた。
どうやら私は少し寝てしまっていたらしい。
雨が窓ガラスを打ちつける音が強くなっており、時間の経過を感じさせられた。
体を拭き終えると近くのスマホが震えているのがみえた。その間隔の長さで私は電話だと気付き慌ててスマホを開く。
”フーちゃん”
画面にはそう表示されていた。
え?え?え?
ドウイウコト??
私はフーちゃんとはそれなりに話す方だが実は電話はまだした事がなかった。私からそれなりにかけようとアプローチしてみてはいたが天然なのか全て上手く躱されていた。
出ようか否か迷っている間にコール数はどんどん増してゆく。
3コール…4コール……5コール……。
鳴り止まないコールに私は慌てて出る。
「もしもしー?」
「もしもしー今大丈夫だったか?」
「うん!どうしたの?」
ほんとは全裸で全然大丈夫じゃないんだけどねっ!
「今全裸だから!」なんていえるかあああ!
そして私は電話してきた理由を聞く。
状況はある程度把握した。………パンツのことも。
「桃井はなんかいい案ないか?」
「んーフーちゃんが好きな物あげればいいんじゃないかな??」
「俺が有栖に今渡したいものか。」
そこからは数分間の沈黙が流れた。そして止まっていた時間がフーちゃんの発言により再び動き出した。
「”新しいパンツをあげる”というのはどうだ?」
え?…………………………え??
ちょっと待って頭が追いつかない。
パンツの件で揉めたんだよね?
それなのに何で新しいパンツ送るの??
「さすがにそれはちょっと違うんじゃないかな?また有栖ちゃんに怒られるよ?」
「ふふふ…。わかってないな桃井。有栖はな、俺に恥ずかしいパンツを見られたのが嫌だっただけで俺に見られて嫌だった訳じゃないんだよな。
つまりだ!俺が少し大人のパンツを買ってあげれば有栖は大喜びに決まってるではないか!!」
私はしばらく呆然としていた。
大喜びに決まっているのか……。ただフーちゃんの妹だ。充分に有り得る。私もこのパンツ主義者ことフーちゃんに染められたのかパンツが素晴らしいプレゼントだと思ってしまっていた。
「いいと思う!!やっぱパンツは最高だよ!プレゼントにパンツほど似合うものなんてないよね!!うん、私もパンツ欲しくなっちゃったよ……。」
「よかった!大人の素晴らしいパンツを買って見るわ!桃井のパンツも俺に任せておけ!!」
「ほんと!?嬉しい!!私も楽しみにしてるね!」
「おう!ありがとうな、また明日!」
「うんまた明日!」
ここでフーちゃんとの通話は切れた。
そして私は疲れたのか少し横になら眠りについた。
”春乃ーご飯よ〜”
お母さんの陽気な声に目を覚ます。
どうやら2時間ぐらい眠りについていたようだ。
フーちゃんは妹と仲直り出来たのだろうか。
寝起きと言うこともありまだ意識が朦朧としていた。
そして私は少しずつ思い出してゆく……
パンツは最高だよ!
パンツほど似合うプレゼントなんてないよ!
私もパンツがほ、欲しい…………?
え?
私は何を言ったんだぁぁぁあ!!
この日を境に私とフーちゃんの関係はただの友達ではなくなっていた。
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