19、学長登場-President Appearance-
「さて」とフィーナが切り出す。
「じゃあ、私も鍛錬があるからここまでね。学長室は中央棟の最上階にあるわ」
(ほんとはもっとゲネロス様といっしょにいたいけど!)
「フィーナさん、2人を案内してくださってありがとうございました!」
「い、いえ!ゲネロス様のお願いであればいつでもお聞きします!」
フィーナはゲネロスに深々と頭を下げる。
「フィーナさん、ありがとう!」
「フィーナ、ありがとう!また学校で会いましょう!」
亜子と恵美利もそれぞれお礼を言う。
「別に私は、ゲネロス様に頼まれたからやっただけだから。では、ゲネロス様、失礼します!」
フィーナは3人に背を向けると走ってその場を離れる。
「……『また学校で会いましょう』、ね。果たしてそれが叶うかしら?」
フィーナは呟いて口元に笑みを浮かべる。
フィーナが見えなくなるのを確認すると、ゲネロスは恵美利と亜子を連れて歩き出す。
「敷地内には東棟、西棟、南棟、北棟、そしてその中央に中央棟があります。お忙しい方なので本来の編入では学長にはお会いできませんが、お二人は英雄たりうる異世界人ということで学長にはお時間を作っていただきました」
「そ、それはすごいプレッシャーだね、恵美利ちゃん」
「直々に見定められるというわけね……望むところだわ!」
燃える恵美利を見て、ゲネロスは「ちなみに」と付け加える。
「学長は元大隊長で、魔術師としても最高クラスの実力を持っています」
「元大隊長!まさかこんなに早くトップクラスの魔術師と会えるなんて、燃えるわね!」
わくわくという擬音が恵美利の周りを取り巻いている。
「……元大隊長さん。私もちょっと気になるかも…………」
「亜子さん、少しずつ思考が恵美利さんに寄ってきていませんか?」
「うんうん、人生を楽しむことは良いことだわ!」
恵美利は亜子に向けてビッと親指を立てる。
「さあ、着きましたよ。ここが中央棟です」
3人の目の前に、とても背の高い建物がそびえ立っている。
「遠くからでも高いとは感じていたけれど、近くで見るとすごい威圧感ね。スカイツリーを思い出すわ!」
「あんなに高くはないと思うけどね……」
知らない単語にゲネロスはクエスチョンマークを頭に浮かべる。
「上層階への移動には自動昇降機を使います。すごいスピードで階を移動できるんですよ。お二人もきっと驚くと思います」
建物に入り、ゲネロスは得意げに説明する。
「それってエレベーターのことよね? 私たちの世界にもあるわよ」
「え?」
3人が自動昇降機に乗ると、体に軽い力がかかり、景色が上へと上がっていく。
「この世界にもエレベーターがあるんだね」
「お二人の世界にもあるんですか!? でも、だとしたら動力源は一体……? 異世界人は魔力をエネルギーに転換できないと聞いていますが…………」
ゲネロスは驚いたり頭に疑問符を浮かべたり忙しい。
「ここで生活して何となく感じてはいたけれど、この世界のエネルギーは魔力をその源としたものが多いみたいね。大規模な火力発電や原子力発電は行われてないみたい」
「原子力……? それは一体……?」
「魔術がない私たちの世界にも優れた技術があるってことよ。…………使いようによって人の生活を豊かにしたり、争いの道具になるって点では、魔術と同じだけれどね」
「…………そうですか。お二人の世界も、常に平和に包まれているわけではないんですね…………」
ゲネロスは恵美利の表情を見て、何かを感じ取る。
「…………そろそろ、最上階に着きます」
昇降機が止まり、ふわっとする感覚が3人を襲うと、昇降機の扉が開く。
「学長室はすぐそこです。心の準備はいいですか?」
最上階は異様な雰囲気に包まれていた。二人はごくり、と唾をのむ。
ゲネロスはドアを3回ノックする。
「ゲネロス隊分隊長のゲネロスです。異世界人二名を連れて参りました」
するとドアからカチャ、と鍵が開くような音がする。
「失礼いたします」
ゲネロスがドアを開き中に入る。恵美利と亜子も続いて中に入る。
そこには…………。
「お主らが異世界から来たものか。私がメルクリス魔術学校の学長、インテゲルじゃ。歓迎するぞ、若人たちよ」
そこには、ピンク色の髪をした、小学校低学年くらいの外見をした女の子がいた。
「ロ、ロリBB……」
恵美利が何かを口に出そうとした瞬間、恵美利は宙を舞い、壁に叩きつけられた。
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