18、魔術学校-Magician's school-
「せっかくなので、もしよかったら私たちを魔術学校まで案内してくれますか?」というゲネロスの一言に二つ返事でOKを出し、フィーナは恵美利、亜子、ゲネロス隊を案内することになった。
「私たちとゲネロスさんとでは随分と違う態度をとるのね、フィーナさん?」
恵美利はにやにやしながらフィーナに話しかける。
「な、なんのことですか? 私にはよくわかりませんね……」
フィーナは引きつった笑みを浮かべる。
(……それにしても、この二人が異世界人!? ゲネロス様の言うことだから事実なんだろうけど…………思ってたのと全然違う! 異世界人はとてつもない魔術の素養をもってるんでしょ? この二人、私と同じ普通の人間じゃない!)
「フィーナさんは魔術学校でもかなりの成績上位者だったと記憶しています。持つべきものは好敵手と書いて友と読む友人。フィーナさん、ぜひ恵美利さんと亜子さんと仲良く、切磋琢磨してくださいね」
「いえいえ、それほどではありませんが……。ゲネロス様の頼みとあらば!」
(まあ…………ゲネロス様の頼みであってもこんなよくわからないやつらと仲良くなんか……てかなんでこの二人こんなにゲネロス様に目かけられてるの!? うらやましい~!)
「言ったわね、フィーナ! その言葉、ばっちり私の耳に残ったわよ! さっきの魔術、絶対教えてもらうわ!」
「教えないし気軽に呼び捨てするな! …………はっ! もちろん、いつでも教えますよ! 友達ですから!」
「…………ふふふ、約束よ」
にやにやが止まらない恵美利。
「え、恵美利ちゃん…………」
亜子は苦笑いを浮かべる。
(くっ……特にこのオレンジ髪、いけ好かない! この状況を楽しんでるし、魔術を使わずしてあの脚力! 魔術の素養がある異世界人で、それに、私ほどじゃないにせよ顔もスタイルも良いですって!? このままじゃ学校のアイドルの座が危うく……)
「あ、見えてきましたね……」
ゲネロスが前方に見える建物を指差す。
「あれが、魔術学校……!」
亜子の目に見えたのは、中世ヨーロッパを思わせるまさしくファンタジーの世界に出てくるような建物であった。
「とっても素敵な建物ね!」
恵美利のテンションも上がっている様子であった。
「あんなの珍しくもなんともないけど、あんたたち、ほんとに異世界から来た住人のようね」
フィーナは恵美利と亜子を見てため息をつく。
「あそこが私たちの学び舎になるのね……!」
「……先に言っておくけど、魔術学校は『学び舎』なんて生優しいものじゃないわ。1日でも長く生き残り、1匹でも多く悪魔を倒す。そのためき皆、己が魔術を磨き上げている……異世界人だかなんだか知らないけど、あんたたちにそれができるかしら?」
フィーナは今までとは違う雰囲気で恵美利と亜子に話しかける。
「……やっと、あなたの『顔』が見れた気がするわ、フィーナ。私たちはこの世界を救って、必ず生きて帰る。そのためならどんな努力も惜しむ気はないわ」
恵美利の言葉に、少し遅れて亜子がこくこくとうなずく。
「……ならいいけど。まあ、あんたたちなんていなくても私が世界を救うから、嫌になったらいつでも出てっていいわよ」
話している間に、一行は魔術学校の正門にたどり着く。
「あまり大勢で敷地に入るのも気が引けますね。皆は先にテッラに戻っていてください、私ならすぐに追いつけます」
ゲネロスは隊員の方を向いて言う。
「ですが隊長、お怪我は……?」
ミーティスが心配そうな顔をする。
「足を怪我したわけじゃないですし、魔術を使えばすぐに追いつけます。それに、ここには優秀な魔術師がたくさんいる。むしろ危険なのはあなたたち、だったりして」
ゲネロスはフィーナを横目で見ながら冗談っぽく笑う。
「はあ……わかりました。我らゲネロス隊、死なないように頑張ってテッラに帰還します」
やれやれ、という顔でミーティスはゲネロスに敬礼する。
「はい。私もすぐに後を追います。異世界人2名の護衛任務、お疲れ様でした!」
「お世話になったわ、ありがとう!」
「ありがとうございました!」
ゲネロスの隊員への労いの言葉に続いて、恵美利と亜子もゲネロス隊の面々にお礼を言う。
「またね!」
「また会えるのを楽しみにしてるぜ!」
隊員たちは恵美利と亜子に声をかけながら魔術学校を離れていく。
ゲネロス隊が見えなくなるまで見送って、恵美利と亜子は学校に向き直る。
「ここから、私たちの戦いが始まるんだね……!」
「亜子、それじゃあまるで最終回よ」
「……え?」
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