10、魔術師のレクチャー-Magician's lecture-

「まず、魔術には大きく5つの種類、属性があります」

 ゲネロスが空中を指でなぞると、五角形が浮かぶ。


「それぞれ………、!?」

 恵美利と亜子は「おお~」と言わんばかりのわくわくした顔でゲネロスの方を見つめていた。


(や、やりにくい………!)

「………それぞれ、水、火、風、土、雷の5属性です」


「NA○UTOね! NAR○TOにインスパイアされているのね!」

 恵美利は鼻息を荒くする。


「なる………? 何ですかそれは? というかインスパイアってなんですか!? 私たちのオリジナルの種別です!」


 ゲネロスは恵美利のペースに巻き込まれないようにいったん落ち着いてから説明を続ける。


「属性それぞれにカテゴライズされた魔術がありますが、人によって属性には適性があります。例えば私は、風の属性が最も適性があり、水と雷が平均、土と火の適性が低いです」


「……ぽいわね」

「はい?」


「あ、あの!じゃあ昨日の魔術も風属性なんですか?」

 何が地雷になるかわからないので亜子はゲネロスの気を逸らせる。


「はい。空間移動は風属性の魔術です。……その、自分で言うのもなんですが、王の座椅子のような高質量の物質を瞬時に転送できる魔術師は帝国でも片手で数えるほどしかいません」


 ゲネロスは少し照れたように目線を外す。

 亜子は内心ガッツポーズをとる。


「なるほどね。じゃあ、私もやがてそこに名を連ねることになるでしょう。燃えてきたわ!」


 恵美利の自信にゲネロスはむっと口を尖らせる。


「やれるものならやってみてください。戦力はもちろん多い方が好ましいですから」

 恵美利とゲネロスの間に火花が散る。


「あの、レクチャーの続きを……」

 亜子はおずおずと手を挙げる。


「……そうでしたね。属性以外にも魔術の種類分けがあります。大きくは、攻撃魔術とそれ以外に分けられます。前にもお話した通り、悪魔族に魔術以外でダメージ与えることは不可能なので、その意味で攻撃魔術は最も重要な魔術と言えますね」

「メ○とかギ○ね。わかるわ」


「攻撃魔術以外の魔術としては、自身を強化する強化する強化魔術や他者を回復させる治癒魔術、私の空間移動ワープのような空間魔術等、たくさんの種類があります」

「バイキ○ト、ホ○ミ、ル○ラね。わかるわ!」


「………亜子さん、さっきから恵美利さんは何を言っているのですか?」


「さあ、私にもよくわからないですけど、たぶんアニメや漫画の話をしてるんだと思います………そうですね、空想上の物語といいますか………」


 亜子は苦笑いをする。


「お二人の世界そのものには魔術がなくとも、想像の上では魔術やそれに似たものが存在すると………恵美利さんの理解が早い理由もなんとなく分かってきました」


 恵美利は「もっとウェルカム」という顔でゲネロスを見つめている。


「まあ、亜子さんもいることですし、今日のところは最後に、私が魔術を扱う上で最も重要だと考えていることをお伝えしてレクチャーを終えましょう。それは………」


 ゲネロスは自分の頭を指さした後、拳を握って胸を叩く。


「ここと、ここです。どんな状況でも頭は冷静でなければならない。冷静であることが自分を、ひいては自分の魔術を高めることにつながる。そして、心は熱くなければならない。成長したいという願い、他者を想う気持ちが魔術には反映される」


「「………」」


 恵美利と亜子は無言でゲネロスを見つめる。


 ゲネロスは頬を赤らめる。

「あの、何か反応してください。恥ずかしいので………」


 恵美利はにっ、とゲネロスに笑いかける。


「恥ずかしいことなんかないわよ? ゲネロスさんはクールで熱くてかっこいい人だわ」


 はい、私、案内役がゲネロスさんで良かったです!」


「恵美利さん、亜子さん………。褒めたって何もでませんからね!」


 仲を深める一行は、休憩と移動を繰り返し、そして、恵美利と亜子にとってこの世界二度目の夜が来る。

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