第2話 登校初日

男尊女卑法が施行されて初の登校日

この法律の施行は検討から実行に至るまでのスピード感は、これまでの国会では例のない速さできまり、そのために法律施行後のはっきりとしたガイドラインが政府からは当然のように示されてはいないため

どのように振舞ったらよいのかの混乱が各地では起き始めていた。

現状は市町村各々に倫理判断を委ねているような状態でもあった。



朝のテレビは男尊女卑法のことで持ち切りだった。

通勤電車内での聞こえる話題も皆同じだった。

スカートを短くした女子校生の二人組は、ハリボグミを分け合いながら、法律を軽視するように笑っていた。

その表情に微かな苛立ちを覚えたのは不思議な気持ちだった。


職員室へ入ると、昨日までの日常とは違った空気が張り詰めていた。

この法律について知らない者などは居なかった。


そのため、大半の生徒は不安になったりして休むんじゃないかと心配していた。

今日からの学校生活についての問い合わせが保護者たちからは当然のようにあったが、校長と教頭は頭を悩ませながらも校則の見直しを求められているようにも思えた。

意外にも保護者からの要望は、今後の社会を想定した男尊女卑的な教育を是非おこなってほしいとのことで、今後は男尊女卑の美徳や、差別などとの違いについての授業を要望する声もあった。


朝のホームルームの時間

教室へ入るとと今までは大多数の生徒が着席せず、先生が来ても私語が止まらなかったのに対し、半数以上の生徒は既に着席を終えていて、しかも正面を向いて座っていた。

着席をしているなんてのは、一昔前では当たり前のことだったが、今となっては着席するだけで感心されていた。着席をしていてもスマホなどを見てるのは当たり前の光景になった。

しかし全員がいい子というわけでは無い。勿論生徒の中には相変わらず机に座り、いつも通り友達と話を続けてるものもいたので

「はーい、席についてくださーい」というと

「ちっ、だりぃ」と不良ぶってる一部の女子が言い

「やめなよっ。笑」と他の生徒が制し、何人かの生徒からのクスクスとした笑い声がいつものように僕の耳に入る。何も変わらない日常にどこか安心した。

「起立、礼」

「はい、おはようございます」

「おはようございます!」いつものようなだらけた声では無く、心なしかいつもより、大きな声でのあいさつが帰ってきた。

「はい、着席してくださーい。」いつものように着席を促し、ざわめきを沈め話始めた「皆さんもすでにご存じかとは思いますが、我が国では男尊女卑法案が本日より施行されることとなりました。これからは立派な女性になるためにも学園全体でも厳しく男尊女卑の教育を徹底していくこととなりました。」

「ふざけんなよ!そんな法律私は知らねーし。」クラスで一番口のうるさい今仲が生意気な笑みを浮かべてヤジをいれたが

「えー、最後まで聞いてくださいね。本日よりクラスのルールは先生となります。先生は皆さんが男性を敬う態度が出来ていなかった時には、時に厳しく指導いたします。何度も指導しても改善余地などが見られない場合は、保護者はもちろん警察に通報させていただきます。逮捕されてしまった場合は人権については保障されてないですので、くれぐれも注意してくださいね。また学園からの指導や指令は随時みなさまにお知らせいたします。何か質問のある人は?」

クラスには多少のざわめきが生まれたものの、皆小言を言うだけで、誰も質問をしてくるものはいなかった。

「まぁ、初めてのことなので、今すぐに質問は無いと思うが、今日からはこれまで以上に校則も厳しくするからな?まずは、茶髪とスカート短すぎる今仲と加藤と佐々木、前に出てこい」

「は?ふざけんな?私はあんたなんかに従わないよ?」

先ほどもヤジを入れた今仲は相変わらず威勢を張っている。

加藤と佐々木は今仲と共にクラスカーストの上位に入るものたちで

加藤は身長150㎝程の小柄な体系で膝上20㎝しか無さそうな短いスカートを履いたギャルでこの3人の中では、いやクラス内でも一番の美人といっても誰からの文句は出無さそうだった。

一方の佐々木は、どうやら加藤に憧れて身なりや持ち物などを真似していた。よく言えば「お揃い」なのかも知れないが、佐々木が加藤の真似をすることはあっても、加藤が佐々木の真似をすることは決して無く、一見対等な立場のように思えるこの二人にも実はスクールカーストが存在するのだとわかったのは最近のことだった。


僕の指示に素直に従ったのは、加藤と佐々木だけだった。

今仲は、相変わらず強がった様子を見せているが、普段ではフォローしてくれるはずの友達は我関せずといった感じで、今仲本人もどうしていいのかわからないようだった。

「今仲ぁー、前に来ないんだな?加藤と佐々木は先生になんか言うことは無いのか?」

「せ、、先生っ、明日までには髪の毛は染めてきます、スカートも戻してきます。許してください。」

普段は今仲に便乗して生意気だった二人の、頭を深々と下げる姿を見た途端、どこかから優越感がふつふつと湧いてきた。

「ほぉ…改善する気はあるんだな、いい心がけだな。先生は感心しました。しかし、髪の毛とスカートは戻さなくていいぞ。校則が変わったんだ。それに化粧をしてもよくなったし、これらは全て平常点にも左右されます。どんな髪型がいいのか、どんなスカートがいいのか、どんな化粧をすると男性は喜ぶのかを自主的に考えてください。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る