第9話 ■授業【社会・マナー、作法】1

■授業【社会・マナー、作法】1


男尊女卑法が施行されてから

日本のマナーや作法などは以前よりまして厳しくなり

まさに日本の古き良き文化の再来を予言しているようであった。


それに伴って私の学校でも社会的マナーや作法についての見直しが求められ

各担任は自らのクラスで生徒たちに独自のマナーを教えることが許されていた。

国からの指導は一枚のプリントを生徒に渡すことだけだった。

そのプリントに書かれたガイドラインを生徒たちに読み上げていく。

「はい、今日は皆さんが大人になるうえで、とてもとても大事なマナーや作法についてマナで行こうと思います。早速ではありますが、マナーや作法について!何のために必要だと思いますか?わかる人ー?」

僕たち教員は、いかにもいつも通り授業を進めているように見せるかが大きな課題だった。

大半の生徒がプリントを凝視し、こちらを見ようとしない。自分以外の誰かが手を挙げるのを待つ、他人任せな姿勢が伺えた。

誰も手を挙げるものはいないのかと、諦めかけた時、高木も何かを諦めたのか少し顔を赤らめて手を挙げていた。

「そ、それは、、相手に不快な思いなどを与えないためでしょうか?」

さすが優等生の高木、完璧に近い答えを返してきた。

「そうだ、マナーとは他者を不快にさせないための思いやりなわけです。みなさんは思いやりのもてる女性になりたいですよね。そのためにマナーを学んでいきたいと思いますっ。

の前に、なんですが、他者を不快にさせないためには他者を知る必要があります。君たちが最も不快にさせてはいけないのは?高木」

「男性です。。」

「そう!男性なんですね。なので今日のこの授業は男性がどのようなことを皆に望んでいるのかを知る時間にできればいいなぁと考えてます。。では、皆さんなりにまずはプリントの項目①に男性は常に何を望んでいるかを、個人で考えあってくださーい。時間は5分ほど与えます」


5分間の間、誰もが息を殺したように静かに必死にプリントに向き合っていた。

カサカサとなるペンと紙のすれる音だけが妙に心地よく聞こえた。

たかが5分とはいえ、ここまで彼女たちが集中できるということに感心した。

「えー、では、五分経ちましたので、まだ書いている途中の人もいるとは思うが、一旦手を止めて先生の話をきくよーに」

話し終えた後も、ペンを止めない生徒も居たが、必死に男性が何を望んでいるのかを考えて、いそいで書き示している姿勢は可愛らしいものであった。

もしかすると書き終わらないとバツが下されるとでも思っていたのかもしれない。

「では、次は今書いた内容をグループで発表しあっていただき、意見交換などをしてもらおうと思います。好きなグループでいいので5人で集まるよーにしてください。質問ある人いますか?。。ハイ!無いようですので、1分でグループを作り着席してください。」

生徒たちは一斉に立ち上がり、仲のいいメンツを求めて移動していた。

人数制限はあえて5人にした。偶数にすると多数決を取った時に割れる可能性が出てくるし、今後も何かと管理がしやすそうだったからだ。

そして普段から6人でつるんでいる女子たちがどう別れるのかも知りたかった。

3人づつ別れるのか、それとも1人がハブられることになるのか。


1分を過ぎたが、まだグループができてないメンツがいた。

「はい、1分が過ぎましたー。グループを作れた人たちは着席してますねー。1分が過ぎたのに、まだグループが作れてないという人たちは前に出てきてください。」

どうやら普段のグループから取り残されたであろう者や、普段から自主的に行動したり声をかけたりするのが苦手な女子達が5名前に出てきた。

この5名でグループを組めば良かったのだろうが、彼女たちにとってはそれは受け入れがたい事だったのかもしれない。

「では、時間を守れなかったらどうしますか?」僕はあえて高木を見つめて言った。

「しゃ、謝罪したほうが、、いいと思います。。。」高木は同級生に申し訳なさそうな表情を一瞬見せたが、その表情を殺し答えた。

「そうですね。はーい。では一人ずつ謝罪していると時間の無駄なので、横一列に並んで、クラスメイトの皆の時間を無駄にしたことを謝罪しましょう。いいですかぁ?」

横に並ばされた彼女たちは皆、活発的なタイプでは無かった為、一人ひとり謝罪をさせるよりも集団で謝罪をさせたほうが、彼女たちへの心理的負担が少ないことと、その謝罪をクラスメイトにさせることによって、他の者たちへの意識改革につながると信じてのことだった。

普段であれば、女子更衣室などでお互いの下着などを晒していたであろうはずの関係性の同級生に、今この場では、みずからスカートを捲り、ガニ股になり足をO字開脚させるように腰を出来る限り落としていることで恥じらいは何倍にも増しているだろう。

必死に言葉を隠し怯える彼女たちに追い打ちをかけるように

「はい、笑顔忘れんなよー!」と指導をした。

彼女達はひきつった笑顔ではあったが、それがまた媚を売ってるようで可愛く思えた。

「ごめんなさい。」

「すみませんでしたっ」

作り笑顔の彼女たちは何とも惨めだったので、もっと見ていたかったが授業を続けることにした。

「では謝罪のできたものから戻りなさーい。時間も無いしこの5人でグループを組むように

。いいな?」

「はぃ、、もうしわけありませんでした。」

僕は出来ることなら一人一人の心のうちを端から端まで読んでやりたい願望でいっぱいだった。。

きっとこの中には既に服従心を示しているM気質なものから、僕のことを死ぬほど恨んでいるものまでいることだろう。

まぁそれも、前回配ったアンケートを回収する日が来れば、少しはあからさまになることだろう。


続く



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