第5話 ■全校集会【前編】

■全校集会

男尊女卑法が施行されてから初めての週末を迎えた。

この土日曜日は歴史にも刻まれる日となったことだろう。

欲望の渦にまみれ、この日を待ちわびていた男たちのターゲットとなったのは、この施行を甘く見て外を歩き回る女、特に征圧しやすい等の理由からか、女子校生はよく狙われた。

そんなこともあり、多くの生徒たちにとっては男尊女卑法の恐ろしさを改めて知る機会となり、大人の男性に逆らうということがどういった結果をもたらすのかを既に知る生徒も少なくは無かった。

そのためもあってか週明けの月曜日には、普段ならざわついているはずの体育館も、今日はやけに静かで緊張感がある。その中でも唯一吠えていたのは三年生のヤンキーで馬鹿な西村だった。この生徒は法が施行されてからは学校に殆ど姿を見せなかった。どうせ不良の彼氏の家かたまり場にもいたんだろう。彼女が何を叫んでるのか耳を澄ませてみると、どうやら友達たちが急に大人しくなったことや、先生達の態度が変わり始めたことに苛立ちを見せてるようで、友達が忠告するたびに苛立っているようにも見える。

しばらくするとしびれを切らした三年一組担任の石田先生が西村にかけより口元を手のひらで覆いかぶせて壁に押さえつけて制圧し、力づくで体育館の外へ運び出していった。西村のわめき叫んでいた声が無くなった体育館はそれこそ静寂で、皆我関せずといった赴きで立っていた。


全校集会はいつもと何も変わらないように始まり、校長がマイクを手に取った。

「えー、今日は私から皆さんに大切なお話をしたいと思います。はい、では皆さん着席してください。」生徒を体育館床に座らせると校長は続けて「皆さんもご存じの通り、先日男尊女卑法が施行されました。それにともない時代の変化というものをとても強く感じとられております。この法が施行される遥か前の日本では、このような法律がなくても男尊女卑を重んじる女子たちは沢山いました、それがこの間の日本ではどうでしょうか?男女平等だなんだのを訴える女性は沢山存在してきましたが、彼女たちが何をできたのでしょうか!?そのせいにより男性の地位というものは下がり、日本の経済も衰退していってます!今こそ、この日本の為にも、男尊女卑の志を取り戻したく思います!!これから辛いこともあるでしょう、もしかすると望んでいないこともあると思います。しかし、それは全てをよくするためなのです。あなたの行いは全て正しく、誰かのためになっています。」

校長のスピーチに藤木以外の皆は圧倒的にひいていた。まるで先人たちが残してきた負のつけを女性に押し付けるような解釈だったのは言うまでもない。しかし学生の彼女たちにとっては、威厳のある校長がそれっぽくいうと、少なくともそう思ってしまう生徒もいる。私は自らの担当教科以外の教育方針を心配をしてしまってる。しかし、そんな心配とは裏腹に校長はつづけた。

「その証拠に、今日は特別に!本校の女性教員からの指導があります。では皆さんどうぞ」

黒崎、安藤、滝川先生が小走りで出てきた。その僅かな動きだけで練習してきたのが伺って見えた。

「皆さん、本日は本校における、変更及び追加されることになった校則を紹介いたします。後でこの校則についてのプリントは配布していますが、実演の動作はこの場で覚えておいてください。」黒崎先生はいつものように落ち着いた様子で話していく

「まず学校生活における制服の基準ですが、特に校則としての指定はございません。ただしスカートが長すぎることは平常点の減点対象となりますので、気を付けましょう。

そして、これからは常に男性にどう見られてるか、何を求められているかを意識して生活し、秩序ある女性となれるように心がけましょう。

また本校において男性というのは男性教員しか居ないため、特に男の先生をしっかりと敬うようにしましょうね!」安藤先生はいかにも元気いっぱいといった様子で淡々と説明し、最後に滝川先生が

「それでは理念と校則の発表を致します。難し事は言わないつもりですが、よーく聞いてくださいね。まず、皆さんもご存じのように勿論男性に逆らうことは許されません。それは仮に年下だとしてもそうですよ。勿論年上の男性には最上級の敬意を常に表し、先ほど安藤先生からもあったように男性に何を求められているのか?自分はどうすれば男性に喜んでいただけるのかを日常的に考えれる生徒を育成とすることを目的として本校の理念は『男性崇拝』とさせていただきたいと思います。

また、男性に逆らうようなことがあった場合ですが、最悪、退学及び警察への通報となりますので、お気を付けくださいね。全てはあなた達の態度次第です。

これからの日本はこれまでの日本とは、明らかに変わります。決してこれまでの日常があるとは思わないで行きましょう。それは私たちも同じですから。。。」

細かなことはプリントを配られるということだが、一言で表すと『女は男には逆らえない』ただそれだけのことを、丁寧にオブラートにつつむかのように複雑に言っただけに過ぎない。

3人の話が一通り終わると教頭が現れ

「えー生徒の皆さんわかりましたか??はい、静かにー。戸惑ってる生徒も数多くおられます、どうしたらいいのかわからない生徒も多いでしょうから、これから先生たちに各TPOに合わせた謝罪、挨拶、、お礼のやりかたの見本を見せていただきます。では黒崎先生は謝罪のポーズ、安藤先生は挨拶、滝川先生はお礼のポーズをお願いいたします。しっかりお願いしますね。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る