第19話 ■面接練習

■面接練習

例年通り今年も、2・3学年を対象とした進学や就職のための面接練習が行われる。

男尊女卑法が施行されてから、初めての面接練習だったため、彼女たちに重要性を伝えるために、体育館には前列が3年生、後列が2年生になるようにきちんと整列させた。

チャイムの音と同時に彼女たちの大半が私語を慎んだ。

わずかに私語を続けた者は、藤木先生からの渾身の平手がスカート越しの尻に振るわれた。

校長講話では、女性としての自覚を高めるようにと、校長の理想の女性像を散々と聞かされた。校長の講話が終わると、数学の黒崎先生と家庭科の安藤先生が壇上に上がり、黒崎先生がマイクを手に取った。

「今日は皆さんの進路先を大きく決める面接についてしてお話します。皆さんも既にご存じの通り、私たち女性、あ、失礼しました。女達は常に男性様に対して敬意を払い続ける義務があります。それは何故だと思いますか?心の中で考えてみてください。私たちが力で男性に勝てますか?子供の時期はあまり気づかないかも知れませんが、大人の女になると男性に奉仕できる力があるかどうかが社会的価値となります。そのため今日は社会人である私たちが皆のお手本となるために今日は壇上にあがりました。それでは、面接官役の藤木先生、よろしくおねがいします」

藤木は「え?俺ですか?」と、とぼけた様子を見てにやけていた。これはすでに打ち合わせ済みだということを確信した。


壇上の上には長机とパイプ椅子が置かれ、その向いにもパイプ椅子が置かれた。

安藤先生はマイクも持たずに「コンコン!」と体育館に声を響かせ、「失礼します!」と続けた。

彼女はパイプ椅子の横に立ち、藤木が「どうぞ」と言うと、彼女はそのパイプ椅子の横に跪き、マイクのスイッチを入れた。

「みなさん、いいですか、このように面接官の方が座るように促してくださっても、まずは床に座りましょう。椅子に座ることを勧められたり命令された場合は素直に従いましょう。また床に座った状態で足を崩してといわれたら、このようにします。」

「足を崩してください」藤木がかすかににやけた。

安藤先生はその場で足を崩し、体育座りになったかと思うと、両ひざをつけたまま足を左右に開いた。

「はい、この時の注意点なのですが、下着がさりげなく見えるか見えないかにすることがポイントです。下着は見られても減るものでは無いです。これからの時代の女は下着などの武器も十分に活用できることが必要です。また面接官の方などに凝視していただいている場合には、さらに股を見やすくアピールすると好印象にもつながります。」

「では早速ですが、志望動機と自己PRをお願いできますか?」藤木がカンペを読むようなトーンで言った。

「はい。ここではあなたの志望動機を素直にわかりやすく述べましょう。また自己PRの際は体系に自信のある子は、身長、体重、スリーサイズなども発表して、学生時代に担当していた委員、自分の得意なことや貢献できる分野などを精一杯アピールします。この時に男性の多い職場の場合は男性様に対しての心得など、この学校で習ったことなどをアピールするのもいいと思います。」

「では、ここからは安藤先生の男性に対しての心得をアピールしていただいてもよろしいでしょうか?生徒の皆もよく見るように。」

「はいっ、わたくしは普段から男性様を尊敬いたしておりまして、学生時代に男尊女卑法が施行していたら奉仕委員をしたかったです。なので、男性様の役に立つことや、喜んでいただけることを私の喜びとしています。もし貴社に採用していただけましたら、全身全霊を尽くしてご奉仕させていただきたく思います。よろしくお願いいたします!」

安藤先生はそう言い終えると深く頭を下げた。

「はい安藤先生ありがとうございました。同じ女性としても関心するアピールでした。面接では常に我々が何に貢献できるのかを問われています。今の安藤先生のアピールだときっと面接官のかたは、安藤先生がきっと誠意をもって尽くす人だということが伝わっていますよね。ここまではほんの一例となりますが、皆さんも自分なりのアピールできるポイントを日々心掛けてくださいね。では、3年生の西村さんお手本として壇上にあがってきてください?」

黒崎先生はそう言って西村を見て手招きした。


つづく

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