私は春と秋が好きです。特に秋は語られていないことをいろいろ考えさせられてよかったです。四つのバリエーションで描いた「会えない」思いは、想像していた以上に広がりがあっておもしろかったです。
「焦がれる気持ち」が様々な角度から胸に迫ってきます。それぞれの物語の主人公が置かれている、冒頭の「欠けた状態」が、最後にどんな結末を迎えるのか……心が震えます。読むと心が綺麗に洗われた気がしてきます。(中でも私は冬がお気に入りです)
春が好きです。この、一瞬の間で会えない感じが好き。この会えない感は、聖願心理の特徴にして強烈で鋭利な武器なので、みなさんもお読みになって心を切り裂かれてください。
季節ごとの「会えない」を描く短編集。ときにビターに、ときに甘く。そのどれもが後を引く切なさをまとっている。勝手な想像だけど、春は桜の塩漬け入りのホワイトチョコレートかなぁ、とか。夏は柑橘で甘酸っぱくしてほしいし、秋はビターにプラリネを入れて、冬は思い切り苦いブラックチョコレートをホワイトチョコレートで優しく包んだ感じ……。珠玉の恋物語。お好きなところから召し上がれ。
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