13.神獣

 ヒコヤと神獣はどうだったのか、とか、ソータと神獣はどうなったのか、について少し語ります。



飛龍ひりゅうレクス

 ヒコヤが三女神から貰った神獣。寿命は三千年ほどです。

 飛龍も廻龍と同じく最初は一頭だけでしたが、「生物はオスとメスが番い、子孫を残していくものだ」というヒコヤの意見を聞き入れた女神テスラにより、レクスに伴侶が与えられました。


 現在ヤンルバにいる飛龍は、レクスとサンの他、オスが6頭、メスが3頭です。大半がレクスの子供で、一部はさらに次の世代の飛龍、ということになります。(飛龍に兄弟の概念はない)

 昔、ダイダル岬で卵を遺して死んでいた飛龍というのが、このレクスの伴侶になります。(だからサンはレクスの最後の子供、と説明されていた)


 女神テスラとヒコヤがフィラへと去る際にはついていこうとしましたが、すでに何頭かの飛龍も生まれており、その長として束ねていかなければならない状況でした。

 ヒコヤは「自分の代わりにこの国を見守ってくれ」と言い残し、エルトラから去って行きました。

 ヒコヤの魂をモーゼから受け取り、それを天界に届けたのが、ヒコヤと会った最後です。



廻龍かいりゅうモーゼ

 ヒコヤが三女神から貰ったもうひとつの神獣で、寿命は同じく三千年ほどです。

 モーゼは広い海をつねに廻り続ける宿命を持っていたので「伴侶は不要」と断りました。その代わり、自らの分身を生み出す力を授かりました。

 一年かけてパラリュス中を廻っていたので、三つの国が離れてからも時折ヒコヤの元を訪れては、その様子を知らせていました。


 やがてヒコヤが死に……モーゼはその亡骸を受け取ると、長い間、別れを惜しんでいました。

 そのときに契約の笛を見つけたモーゼは、ヒコヤの力が宿っていることに気付き、自らの体内に遺しておきました。

 神の領域や三つの国の不穏な様子にも気づいていたため、いつか必要になるかもしれない、と大事に守っていたのです。

 そろそろ寿命だと言っていましたが、恐らく亡くなる時はレクスと同時だと思います。



飛龍ひりゅうサンと廻龍かいりゅうヴォダ

 まず、サンから。

 エルトラの飼育士ではなく「フィラ三家筆頭・ファルヴィケン」のしかも「当代」であるユウからフェルティガを貰い成長したので、まず基本ステータスが他の飛龍とは全然違います。

 飛ぶ速さ、高さ、飛び続けられる体力、そのすべてが他の追随を許しません。スーパー飛龍です。

 ただ、卵のときにガラスの棺で過ごしていたので、デュークの干渉も受けています。ですので、残念ながらサンは繁殖できません。


 さて、ヴォダはサンより二年ほど遅く生まれました。廻龍はあくまで分身ですから、ステータスは父や祖父モーゼと変わりませんが、ソータとの旅でかなり鍛えられたので、泳ぐスピードは子どもの割に早いです。

 サンとヴォダの関係は……そうですね、兄と弟みたいな感じですかね。


 運命の日――ミリヤ女王をキエラ要塞に連れてきたあと、サンはすぐにテスラから離れるように言われました。フェルティガと馴染みやすい性質のある飛龍は、デュークから遠ざけるべきだったからです。


 一方ヴォダは、ソータに言われた通り、離れた海上から三女神の降臨の様子も、デュークの封印の様子もずっと眺めていました。

 それこそ映画でも鑑賞するような気分でいたのですが、その後ソータは女神たちと共に天界に昇ってしまいます。


 何が起こったかわからなかったヴォダはニューニュー鳴いてパニくりました。そこへ、その声を聞きつけたサンがやってきて、ヴォダから話を聞きます。

 ユウがいなくなったことにも気づいたサンは、慌てて暁の元へ。そして、ソータの笛を手にしていた暁はサンと共にヴォダの元へ行き、事情を説明します。


 あと何百年か待てばユウが帰ってくる、とわかったサンは落ち着いていましたが、ヴォダの方は暁の話を信じることができませんでした。そのまま、パラリュス中の海を廻る旅に出てしまいます。

 ソータとの旅で鍛えられていたヴォダは、半年でパラリュスのすべてを廻りました。そんなヴォダを、サンは慰めたり励ましたりしていたようです。


 ソータが駆龍くりゅうドゥンケを伴い、パラリュスに帰ってきたあとは、その気配を察して落ち着きを取り戻し、元気になりました。

 神殿ができてからもまだ力不足のソータは神殿からあまり離れられませんでしたので、海にいるヴォダに直接会うまでには時間がかかりました。

 ですが、三千年の寿命を持つヴォダにとっては、それはたいした時間ではなかったようです。ソータの使いとしてやってきた弟分、ドゥンケと共に遊んだり……遊び過ぎて叱られたりしつつ、やがて立派な廻龍になった……はず(笑)。

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