3.禁忌
各国で言われている「ミュービュリと関わることは禁忌」。
これは、それぞれの国の事情に基づいています。それについて、少し語ってみたいと思います。
《エルトラにおける禁忌》
エルトラの女王の王家では過去の歴史がきちんと管理されていましたから、ヒコヤがミュービュリから現れたことも、その後女神たちの間でいろいろあったことも把握していました。
……とは言っても、女神ウルスラがなぜ狂ったのか、女神ジャスラがなぜ壊れたのか、といった内容まではわかっていません。事実としてそういうことがあった、という程度です。
ですので、「異世界と関わることは世界のバランスの崩壊に繋がる」と判断し、女王の血族の中での秘密、ということになりました。
その後、あるフェルティガエが泉から現れる、という事件がありました(東の大地は立ち入り禁止ですが、飛龍が見つけて連れてきた)。これはウルスラからミュービュリに落ちた人の子孫で、先祖返りのような形で強い力を持った結果、世界を繋げて来てしまったようです。
これを機に「ゲート」「
ミュービュリを秘密にする以上、これらの能力についても熟知する必要があると考えたエルトラ王家は、このフェルティガエを隔離し、言葉は少し悪いですが研究しました。
ですので、エルトラ王宮では女王の他、中枢のごく少数の神官の血筋では、これらの能力が伝えられています。しかしフィラの民に比べると純粋なテスラのフェルティガエでは能力にも限界があったと思われます。
『想い紡ぐ旅人』で夜斗や理央を送り出すのに使われたり、朝日を探すのに使用されましたが、二人がかり、三人がかりでやっと、という状況でした。
《フィラにおける禁忌》
フィラの三家、および次元の穴の管理者は把握していました。
しかし彼らはヒコヤを崇拝していたので、ミュービュリに関わることはヒコヤの恩恵を失うことに繋がるのではないかと恐れ、徹底的に排除していました。
元々ヒコヤの子孫でもありますから、ゲートや
フィラ侵攻でキエラに連れてこられた中には三家の直系の人間、および管理者はいませんでしたので、ミュービュリの存在を知っているのは最長老だけでした。
カンゼルはミュービュリの存在すら知らなかったので特に問題はなかったのですが、ヒールがユウと共にミュービュリに行ってしまったために、長老は尋問されることになりました。
そして、これらの知識はカンゼルの物になりました。カンゼルがエルトラより先に朝日を見つけたのも、ディゲを派遣できたのも、エルトラより数段優れたフィラの知識と能力者を手中に収めていたからです。
メシャンとハイトもミュービュリについてはあまり把握していませんが、これは彼女たちが成長する前に両親が亡くなってしまい、「とにかく次元の穴をしっかり守れ」ということしか伝えられなかったからです。
《ウルスラにおける禁忌》
女神ウルスラが狂ったのは女神たちがヒコヤと関わったせいだと憤慨していましたから、当然ミュービュリと関わることには大反対でした。
しかし次元の穴があちこち開いており、いろいろな人が入り乱れていたので、関わりたくなくとも関わってしまう、という状況が長く続きました。
何代目かの女王が「ウルスラの扉」として穴を封じたことでようやく平穏が訪れました。
これらのことは時の欠片を通じて代々の女王には伝えられていたので、女王の「直系」はミュービュリの存在やその行き来については把握しつつも、あくまで極秘事項として胸の内に治めていました。
ヴィオラは
それ以降は、時の欠片の行方を追うために、女王一族すべてにその存在と監視が言い渡され、千年以上も探し続けていました。
《ジャスラにおける禁忌》
ヤハトラの巫女は昔に起こった女神ジャスラに関することは完全に把握していましたし、ミュービュリについては当然知っていました。
それに代々のヒコヤをミュービュリから呼び寄せなければなりませんので、
『旅人達の錯綜』第2部の『異国六景』で、ネイアが「昔、一度だけテスラのフェルティガエが紛れ込んだことがある」と述べていたことを覚えていますか?
これはネイアの代よりもはるか昔に起こった出来事ですが、このときにゲートの知識は確立されました。
しかしここで、巫女の血筋の純粋性などいろいろと問題があり、以降、ヒコヤを呼び寄せる以外はミュービュリと関わることは禁忌、となりました。
さて、この後この『禁忌』についてはどうなっていくのかですが……。
やはり、各国とも『禁忌』のまま続けていくのではないかと思います。
暁が二つの世界をつなぐ最後の一人で、彼が亡くなった時が扉が閉ざされる時、ですかね。
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