4.フェルティガエの特徴
フェルティガエ……まぁ、言うなれば能力者、ですが、「女神の祝福を受けた者」の意味です。
作中でも何回かその性質について触れる機会があり、また『旅人達の永遠』の第2部『まくあいのこと。』で「カンゼルの資料」にも載せた訳ですが、もうちょっとイロイロあるので、それを書いていきたいと思います。
まず、フェルティガエの特徴として作中で挙げられていることは
①身体が弱い
②フェルティガエ同士で意思の疎通ができる
③フェルティガエはミュービュリの人間と波長が合わない
④フェルティガエの女性は気持ちの強さにより懐妊率が変動する。そして多くの
子供をもつことができない。
……ですね。これらについて、もう少し詳しく説明していきたいと思います。
①身体が弱い
能力が発現すると、その生命維持はフェルティガが確保できているかどうかですべて決まります。身体の強さはフェルティガを蓄える器の強さなのですが、フェルティガの消費・回復が繰り返し行われると、それだけ器も脆くなっていきます。
作中でシャロットが「フェルティガエの老化には身体の老化とフェルティガの老化がある」と言っていますが、大半は「身体の老化」を発症し、フェルティガを維持できなくなることで命を失います。(ヒールやフレイヤ女王がこの例)。
「フェルティガの老化」はキエラとウルスラでしか見られない現象ですが、それは何故かというと、作中にもあるようにデュークの干渉が原因だからです。
②フェルティガエ同士で意思の疎通ができる
最初に登場したのは『想い紡ぐ旅人』での夜斗と理央の通信ですが、通常はミジェルのように、触れることで意思を伝えることを指します。誰もができる訳ではなく、かなり高位のフェルティガエにしかできません。ましてや朝日や暁、夜斗や理央、シィナやシャロットのように触れずとも意識を伝え合うことができるのは、三家と女王一族に限られます。
作中で夜斗が説明したように、パラリュスとミュービュリを繋ぐことは彼らにとってはあまり難しくはありません(ただし、力はあるものの不器用な朝日は、夜斗に自分の「携帯電話」を渡すことでそれを媒介とし、連絡をとっています)。それは世界が違うために、絆の強ささえあれば、逆にその距離を限りなく0に近づけられるからです。
難易度が高いのは、同じ世界の中で実際に距離が遠く離れている場合です。作中の登場人物の中でこれができるのは、シィナと朝日、そして暁だけです。
なお、エルトラにいる夜斗からウルスラにいる朝日に連絡を繋げるシーンがあります(『旅人達の永遠』の第1部『還る、トコロ』にて)が、これは「携帯電話」という媒介があったことと、夜斗がかなり必死だったこと、そして朝日の力が強く受信する体制が整えられていたこと、などが理由として上げられます。
③フェルティガエはミュービュリの人間と波長が合わない
『旅人達の錯綜』第2部『異国六景』の「暁2013」で初めて明らかにした性質ですが、元から設定としてはありました。
これについては個人差がかなり大きく、夜斗のように普通に交流する分には問題ない人、暁のように極端に居心地が悪く感じてしまう人、様々です。
ただし作中で夜斗が述べているように、これは「自分のフェルティガをうまくコントロールする」すなわち「むやみにフェルティガを放出しない」ことで軽減することができるので、暁は修業不足ですね(ついでに言うならユズも)。暁が成長するにつれ、気にならなくなったのもそのためです。
④フェルティガエの女性は気持ちの強さにより懐妊率が変動する。そして多くの子供をもつことができない。
これは作中でリュウサとネイアが説明した通りです。
ところで、これらとは別に、本文中では特に触れていなかった設定があります。
それは、フェルティガエは「食欲」「睡眠欲」「性欲」のいわゆる「三大欲求」がかなり低い、という設定です。
(※ただし「性欲」は少々語弊があるので……私の中では「恋愛欲」と言い換えて考えていました。以降はそちらでいきます。)
食欲については、作中で「フェルティガエは朝食だけでしかも小食」とユウがコメントしていました。そしてユウが倒れた際、「食事は二の次でとにかく休んでフェルティガを回復させること」という夜斗の説明があります。
睡眠欲については、作中で「フェルティガエは眠らない」とユウがコメントしています。これは長引く戦争の中で常習化してしまった悪い習慣なのですが、そもそも眠らなくても目をつむって休むだけで生きていける、そういう身体のつくりになっている、ということです。
恋愛欲については、作中で「フィラでは割と淡々としているので、朝日とユウのような大恋愛は珍らしい」と夜斗がコメントしています。特にフィラやヤハトラはかなり小さなコミュニティですから、この傾向が顕著です。
ですが、好き嫌いがない訳ではなく……要するに、草食系の人たちが圧倒的に多いということなのです。「意地でもこの人を自分のものにする」みたいなアグレッシブさはなく、嫉妬なども恋愛の中では殆どありません。
ですから、夜斗に嫉妬したユウや、言い寄って来た男を殴り飛ばした理央、朝日を妬んだメシャン・ハイト姉妹は、フェルティガエとしてはかなり元気な方と言えます。これは、彼らのもつフェルティガにも関係しています。
表に出していない設定として、「もともと持つフェルティガの性質により、基本性格に違いがある」というものがあります。実は、これに基づいて登場人物の性格をある程度、決めていました。
フェルティガの詳しい分類については次に説明するとして、系統としては
①攻撃系 ②視覚系 ③察知系 ④防御系 ⑤幻覚系 ⑥その他
に分けることができます。
何が開花するかは環境によっても変わりますから、テスラの女王一族、およびヤハトラの巫女一族以外は、複数の系統を併せ持っています。ですが、私の中ではそれぞれ「基本系統」というものを設定していました。
①攻撃系……ユウ、暁、理央、ミジェル、コレット
フェルティガエの中で一番、我が強い人達です。心の安定、平穏な生活を望むフェルティガエの中にあって、多少争ってでも自分の意見を曲げない、といった特徴が挙げられます。
自分を抑え込む人が多いフェルティガエの中で、気にせず積極的に動くので目立つ人が多いです。人に好かれやすいため、リーダーシップを取って纏めていくタイプの人もいれば、元気過ぎて一人で爆走するタイプの人もいます。
②視覚系……シャロット
知識欲が非常に高く、努力家です。「人の役に立ちたい」という思いが強い、という特徴が挙げられます。
その分「自分を認めてほしい」という思いも強いので、シャロットのように好奇心が旺盛で、積極的に知識を吸収していくタイプの人もいれば、逆に注目されないことでひねくれてしまい、暗くなってしまうタイプの人もいます。極端から極端に走りがちなので、扱いが難しいタイプです。
③察知系……ユズ
頭の回転が非常に速い人達です。フェルティガを使わずとも「一を聞いて十を知る」ということがそもそも備わっているタイプ。特にユズは高レベルなので、その傾向が顕著です。すべての系統の中では少数派になります。攻撃系の補佐をすることが多いです。
④防御系……シィナ、水那
頑固で頑なな人達です。攻撃系が表に出してアピールするのに対し、感情が内側に向く傾向があります。
煮詰まってくると人の話もあまり聞かなくなるので少々扱いづらいですが、極度の安全志向なので大きな失敗をすることはありません。すべての系統の中では多数派になります。
⑤幻覚系……夜斗、レジェル、ヒール、ヨハネ
本当の自分を周りには見せたがらない人達です。自分の気持ちは二の次に、周りと迎合することが最善、と考えているフシがあります。
自分の本心を自分すら理解していないことがあるので、追いつめられて急に爆発するのがこのタイプです。
⑥その他……朝日、トーマ
ミュービュリ育ちであり、フェルティガが発現する前に性格が出来上がってしまったので、いずれにも入りません。ただ傾向としては、わりと神経質な人が多いフェルティガエの中でも際立って「大雑把」であり、「細かいことは気にしない」という点が挙げられます。
そもそも発現が遅いのはフェルティガの干渉にも動かされない、つまり、かなりマイペースな性格の表れでもあるからです。
あくまで基本性格ですから、育った環境によって個々の性格は変わります。ですが、根っこの部分はこの性質だ、ということです。
ユウは『想い紡ぐ旅人』登場時はかなり穏やかに見えるので、この基本性質とはそぐわないように感じるかもしれませんが、それはヤジュ様による徹底した教育と「朝日を守る」という強い意志のためであり、元々はなかなか激しい、好戦的な性格なのです。
シィナは『あの夏の日に』では無邪気で素直、という感じでしたが、それはトーマ向けの、恋する女の子としてはそうなるだけであって、元々の性格としてはかなり頑固で慎重です。『まくあいのこと。』ではこちらの方が顕著になっていますね。
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