5.創作裏話(前編)
最終的に130万字を超える大長編になってしまった訳ですが、最初からそのつもりだった訳ではありません。
どうしてこうなったのだろう、ということで振り返ってみたいと思います。
そもそも私は、小説を読む趣味はないんですね。マンガは大好きです。
だから小学生の頃はマンガを真似して女の子の絵を描いたりはしてましたけど、絵心はないので本格的なコマ割りのマンガを描くまでには至らなかったです。
で、中2のあるとき、小学生時代から物語を書くことを趣味としていた友人が
「加瀬も書いてみたら? 文字なら誰でも書けるし」
と言ってくれて、それから書くようになりました。
その子を中心として7人ぐらいの仲間内で物語を書くようになって、みんなで回し読みしたり、勝手に余白にカットを描いたり、はたまたみんなでリレー形式で物語を書いたりといったことをしていました。
高校は全員別々の高校に進学したのでこの活動はなくなってしまったんですけど、高校に進学する春休み、私は「さよならの瞬間」という物語を書きました。
中学時代に書いた物語を練り直し、当時どこかの賞に出してみようかと原稿用紙に書いてみたんですね。確か100枚強……4万字程度だったと思います。
結局応募はしなかったんですけど、高校で仲良くなった人にそれを見せたところ、クラスの女子でそれが回りまして
「加瀬さんは物語を書くらしい」
みたいな感じになり
「何か新しいのを書いて」
と言われました。
このときに書いたのが『華鏡』という平安時代の恋愛モノと、『ガラスの時空』というSFモノ。
『華鏡』は第2部の途中でエタりまして(笑)、代わりに書いたのが、中学時代に書いたSFをリメイクした『ガラスの時空』です。
高校時代の読者はなかなか手厳しかったです。まぁ、この頃はノート1冊分書いたら回す、という「書いて出し」状態ですしね。web小説で言うと書きながら連載、ということですから、不備もいっぱいある。
ノートの巻末が感想のページになっていたのですが「このシーンは説明不足」とか「ここが矛盾してるよ」とか。はたまた「字が見づらい」とか(笑)。
先読みされて急遽予定から変えたりもしましたね。でもそっちの方が結果として話が盛り上がった(気がする)ので、リアルタイムでの意見というのはためになりますね。
なお、『ガラスの時空』は大学受験目前になり慌てて終わらせたので、
「最後が駆け足過ぎて物足りない」
とビシッと言われてしまった……。
でも、忌憚のない意見をくれる大事な人達でしたね。
そして大学進学によりみんなバラバラになり、物語を読んでくれる人はいなくなり、私もやがて書かなくなったんですが。『ガラスの時空』を書き直したぐらいですかね。
……あ、長い? いつ旅人シリーズの創作の話にいくのかって?
もうすぐです、ちょっと待ってください(笑)。
○○年を経て、ラノベ好きの親友Nがあるときこう言いました。
「小説……私も書いてみるかな」
これを聞いた私。どうしても聞き流せませんでした。
大昔に趣味として書いたことがあり、しかもエタらせたこともある私としては、そんな簡単なもんじゃねぇぞ、と言いたい。
「そんな急には書けんよ。どんなにいいアイディアを思いついたって最後まで書ききるのって大変なんだから」
「何でそんないきなり……」
「私、中学と高校のとき書いとったもん」
「嘘だ!」
「ほんとだよ!」
「A4たった1枚の報告書でさえひぃひぃ言ってるくらいなのに……」
「悪かったな……。でもほんとだもん」
「えー……」
すんごく疑われました。そりゃそうです。紹介文だの挨拶文だの報告書だのという文章を書くの苦手。超・嫌いですもん。
でもそれと物語は違うのですよ(多分)。
「じゃあ、昔書いてた話があるから、それを元に書いてみる」
「マジで?」
「その代わり、書いたら絶対に読んでよね!」
……ということで、これが○○年振りに物語を書き始めたきっかけ。
この『旅人シリーズ』を始めた経緯です。(長かった……)
* * *
①想い紡ぐ旅人
久しぶりなのでイチから作るなんてできない。だけどラノベ好きのNは異世界モノじゃないと読んでくれないだろう。
そう思い、高校時代に書いたSF『ガラスの時空』を異世界に舞台を移し、組み直したものが本作になります。
ですので、通算四回目。コスり過ぎやろ!
しかし当時の作品はすべて処分してしまい、手元には何一つ残っていませんでした。だから頭の中に残っているのはコレぐらいしかなかったんですよね。
そして、当時は「少年を守るために少女がやってくる」と役割が逆だったのですが、今回書くにあたり「少女を守るために少年がやってくる」に変えました。
ただ、少女の名は一貫して『朝日』です。
「異世界って言葉は同じなのかな?」
というのが最初の疑問で(何しろ全く読んだことが無いので)、Nに聞いたところ
「異世界転生が多いし、最初から分かるケースが殆どかな」
という答えだったのですが、自分の設定だとそうではないので
「言葉も文字も違う」
という設定にしました。
ラスト、高校時の『ガラスの時空』ではユウ(リメイク前は性別が逆なので『朝日』ということになりますが)は死んでしまっていました。
だけどそれは悲しすぎるし、せっかく『ガラスの棺』というアーティファクトもあるので、眠らせる方向に変えました。
何年後かにはきっと会えるでしょう、みたいな。
……でも、まさかその「きっと」を書くことになるとは、このときは微塵も思ってなかったんですけどね。
②あの夏の日に
『想い紡ぐ旅人』を書いている途中で、高校進学の春休みに書いた『さよならの瞬間』のことを思い出しました。
で、『想い紡ぐ旅人』を書いたあと「どこかに出してみるか」と「投稿者全員に講評がもらえる公募」を見つけたのですが、20万字を超えていたために応募できなかったのです。
そのときに、どの公募もだいたい10万字~15万字ぐらいと知って
「じゃあ、その範囲内で収まる話を書こう」
とこの『さよならの瞬間』を引っ張り出しました。
こちらは三回目ということになりますね。
最初はタイトルも『さよならの瞬間』のままだったんですけど、Nに
「タイトルでネタバレしてる」
と言われ(笑)、泣く泣く変えました。
そして、
「一つの異世界に一つの国とは限らないだろう、別の国が遠くに存在してもいいんじゃないか?」
ということで『ウルスラ』を設定しました。
これについては、もう原作の面影はないですね。流用したのは『本当の姿は金髪で紫の瞳だけど日本人の姿に擬態している』ということと、『過去の時空に還す』というエンディングぐらいでしょうか。
当初は『ユズ』を主人公として書こうとしたんですが、あまりにも物静かなキャラが肌に合わず、また『ユズ』の一人称では最初からネタバレし放題なので、『トーマ』を主人公にしました。
人見知りで不思議な力もあるユズが誰かと友人になるとしたら、それはどういう状況でどういう性格だろう、と考えたら、あのような田舎のおおらかな少年になった訳ですね。
そうなんですよ。主な登場人物の中で一番最後にできたキャラが、主人公であるトーマなんです。
③漆黒の昔方
『想い紡ぐ旅人』『あの夏の日に』をNに読んでもらったところ、
「まぁとにかく、話を書くことはできるんだってことはわかった。一応いろいろ考えてるんだなってのも伝わる」
と言ってくれました。
そして
「だからリメイクじゃなくて、新しく話を書いてみればいいのに」
……とも。
「え、新しく?」
「普通、異世界モノっていうとさ、最初に異世界に飛ばされて、そこからその世界で冒険するっていうのが王道だと思うんだよね。行き来する話もないわけじゃないけどさ」
「ふうん……」
「今だからこそ、新たに何か書けるかも」
「……わかった……」
ということがあり、〇〇年振りにイチから作ったのがこの物語になります。
「じゃあ、テスラ、ウルスラときたので、同じ世界の三つ目の国にするか。3という数字は座りがいいし」
……と思ったのですが、ここでまたまた疑問が。
「異世界『パラリュス』と繋がる現実世界『ミュービュリ』は、つねに日本でいいのかな?」
何しろ三つ目ですしね。彼らにとっての『ミュービュリ』が現実世界の地球全体を指すのなら、日本以外の外国でもいいんじゃないのか、常に日本なのは都合がよすぎるのではないか。
そう考えたんですよね。(Nには考え過ぎ、と後で言われましたが……。)
そこで、彼らの言う『ミュービュリ』とは『日本』である(つまり、繋がるのは必ず日本国内になる)という根拠を作るために、『ヒコヤ』と『三種の神器』の設定を作りました。
作中では述べられていませんが、ヒコヤの持ってきた『三種の神器』とは、勿論、今日本に伝えられて奉られている三種の神器とは別物です。
しかし、『鏡』『剣』『勾玉』というのはなかなかいいし、前作でちょうど『不思議な剣』も登場しているので、三種の神器がそれぞれ三つの国にある、ということにしよう、と考えました。
そして合わせて、三女神の設定も考えました。
『現在』『未来』と来たので、ジャスラは『過去』です。そうすると、大昔に起こったことをすべて把握し、その上で今のヤハトラを築いていることになります。
……という訳で、この一つの話を書くために、全部の国の成り立ちも含めた背景を考えないといけなくなり、なかなか大変でした。
ですのでこの時点で、三女神とヒコヤの物語はだいたいできあがっていました。
殴り書きしてあったメモを見ると
・『想い紡ぐ旅人』に出てきた北東の遺跡は女神テスラの最後の地
・フィラは女神テスラとヒコヤの子孫の国
・女神テスラと鏡は東の大地に眠っている
……などは、この時にできたものです。
さて設定はいいとして、主人公をどうするか。
前作で登場した『剣』が三種の神器であるならば、ヒコヤにも関係があるということになります。
ですので、「主人公はトーマの父親にしよう」というのは、割とすぐに決まりました。
トーマのキャラを作ったとき、「山奥の田舎でじいちゃんと二人暮らし」という設定は大らかな彼らしい背景だよな、と思って決めただけだったんですが、もしものときの設定の余白として「両親については定めないでおこう」という意図もあったのです。
もしものとき、というのは、例えば
・トーマとユズが出会ったのは偶然か必然か。
・トーマがウルスラの剣を使えたのは何故か。
という部分に根拠が必要になったら、生い立ちから考えないといけない。だからここを決め過ぎると後で困ることになるな、と。
結果的に、唯一の読者であるNが特にツッコまなかったので、あえて決めないままになっていたんですけどね。
こんな感じで、わりとあちこちに『設定の余白』を作りながら物語を創るタイプです。あとで言い訳できるように、みたいな(笑)。
さてそうなると、トーマ18歳の時点で、父親はミュービュリには帰ってきていない訳です。
ジャスラで何があったのか……というところから、この話のエンディングは決まりました。
* * *
何だか長くなってしまいました……。
という訳で、次回に続きます。申し訳ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます