瑠璃色の瑠璃花は僕を好きである

婭麟

第1話 どうにかこうにか入学した高校に瑠璃花がいた!

 高校生になった。

 どうにかこうにか入学した高校……。

 そんな高校に瑠璃花るりかがいた。


 僕より一年近く早く産まれて、僕より早く立って歩き、僕より早く話した。

 小学校の時から成績が良くて、高学年になるとクラスの上位に君臨していて、なのに私立の中学校に、何故か公立の同じ中学校に通い、そして中学校でも学年で上位に名を連ね、ほとんどの教師から


「お前ら幼馴染?」


 とか、意味深な言葉を投げかけられ続け、高校の進学では有名進学校の、私立の名門校の名前しか聞かず、第一志望の高校に合格したと聞いていたから、絶対私立の名門校に行くものだと思っていたのに、そんな瑠璃花が窓際の机に座り、こっちを見て微笑んだ。

 その黒くて潤む瞳が、優しく輝いて見えた。


「奥田君何ボーとしてんの?」


「えっ?」


 幼馴染の立川愛菜が、教室の入り口で立ち尽くす僕に言った。


「あーいや……」


「あ?瑠璃ちゃんに、見惚れてたんでしょ?」


 愛菜が揶揄う様に大声で言うから、顔見知りにすらなっていないクラスメイトの注目を浴びた。


「バカ違うよ?違うだろ立川……さん……」


 大慌てで否定している所に、小学校の時からの付き合いの阿部がやって来た。


「何しての?」


「あーいや……」


 僕が説明しようとしていると


「あれ?瑠璃色の瑠璃花さん」


 阿部は僕の事なんて忘れた様に、瑠璃花に手を上げて言った。




瑠璃花・瑠璃花・瑠璃花・・・・・・



 

 瑠璃花と知り合ったのは、僕が六ヶ月の時だった。

 八月の半ば、母親が仕事に復帰する事になって、僕は他の保育園児より少し遅い入園となった。

 寝返りは打てるものの、まだハイハイもできない僕は、ユラユラ揺れて音楽が流れるラックに寝かされていた。

 するともはやおぼつかないながらも、立って歩ける様になっていた瑠璃花は、毎日僕のラックの側までヨチヨチと歩いて来ては、面白い程不恰好に僕の所で転んで泣いた。


「あー瑠璃ちゃん!」


 保育士の先生達が大騒ぎをする。

 瑠璃花が運が良ければ、僕の上に転ぶから痛みも少なく傷も少ない。

 だが運が悪ければ、ラックの縁などにしこたま頭や顔をぶつけて傷痕を残す。

 女の子だから先生達が、顔に傷痕を残しては、とそれは戦々恐々となるのは当然だが、頼んでもいないのに、毎回巻き込まれる僕は何て不運なヤツなんだろう。

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