第12話 何時もとちょっと違う
立川愛奈が普段と違い、ちょっと大人びた服装で阿部を見つめて言った。それに返す阿部の表情が、やっぱりちょっと大人びていてカッコいい。
野球少年のトレードマークの坊主頭なのに、カッコいいのは何でだ?
そして見つめ合う二人は、同時に視線を僕と瑠璃花に向けて笑う。
それよりもっともっと目を惹く、楚々としたワンピースに淡いカーディガン姿の瑠璃花は、まるで其処だけ昔テレビで見た、ティンカーベルが飛び交っている様な、キラキラ感いっぱいだ。
思わず二人の視線など忘れて、見入ってしまった。
すると愛奈が、阿部を気遣う様に
「あべちん、先輩に怒られなかった?」
とか、恋人感をモロ出しで聞いている。
「怒られるわけないだろ?先輩もデートだと……」
「あー?間宮先輩?」
またまた……二人だけしか知らない話題に、知らないうちの親密度を確認させられてしまう。
「部長は間宮先輩の下僕だから……第一県立校の
とか言いながら阿部は立川と、慣れた感じで並んで歩く。
そんな二人に従う様に、ぎこちない僕と瑠璃花が並んで歩いた。
「耀ちゃん、何時もとちょっと違うね?」
瑠璃花が意味有りげに、可愛く笑って言った。
その笑顔に僕は、またまた囚われてしまった。
佑君・佑君・佑君・・・・・・
佑君はよく、瑠璃花と手を繋いで歩きたがった。
瑠璃花が機嫌のいい時は、瑠璃花は佑君と手を繋いでお部屋を歩いたり、先生と一緒に廊下を歩いたりした。だけど、ちょっと機嫌が悪かったり、ムシの居所が悪いと、わざと手を振り払って佑君を拒絶した。
すると佑君は、思いっきり瑠璃花を押し倒して、ワッと声を出して泣いた。それとハモる様に、押し倒された瑠璃花も泣くから、その時は大騒ぎとなる。先生は佑君をなだめる様に叱り、押されて泣いた瑠璃花に
「ごめんなさい」
を言わせた。
佑君は何時もいつも瑠璃花に拒絶され、悲しく泣きながら〝ごめんね〟を言った。
そんな瑠璃花が、佑君と手を繋いでお部屋を歩いている時、何時も瑠璃花が僕と手を繋ぎたがるから、だから僕の方から手を差し出すと、瑠璃花はフィッと顔を背けて、佑君と行ってしまった。
そんな状況に慣れない僕は、当然瑠璃花の後を追って手を繋ぎたがった。
すると瑠璃花は、面白がる様に走って僕を追いかけさせた。
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