第11話 解らんちんの阿部が、ほんのちょっと大人に見えてカッコ良く見えた
土曜日、映画を観に行った。
駅に繋がった、ショッピングモールに在る映画館。その映画館に行く為に、駅で待ち合わせする。
阿部の部活の試合の無い、練習が早く終わる土曜日……それでもだいぶ昼を過ぎてしまった。
だけど一番忙しかったであろう阿部が、一番楽しそうに改札口で待っていた。
「奥田。俺は実に嬉しい」
「………………」
「瑠璃色の瑠璃さんと、映画を観る事ではないぞ」
阿部は未だ来ないから、女子達が居ないにも関わらず、顔を近づけ声を落として言う。
「俺達は奥田と、瑠璃色の瑠璃さんを応援している」
僕は阿部の、この思考回路に圧倒される。
一体立川愛菜は、こんな阿部の何処に惹かれたのだろう?
純粋な処?正直な処?多少次元の違う処だろうか……?
「あ、あべちん」
立川が、そう言って手を振っている。
その様子が、どう見ても似合いの二人だ……ガチのヤツだ。
……なぜだ?……
僕が思うより早く、阿部が隣で手を振っている。
その横顔が、何時もの阿部とはちょっと違うから、だから僕は少しの憧憬を抱いてしまう。
何時も解らんちんな事しか言わない阿部が、ほんのちょっと大人に見えて……ほんのちょっとカッコ良く見えて……
耀・耀・耀・・・・・
クラスが新しくなると、お友達が増える。
一クラス六人だったクラスが、十五人になった。
新しく入った佑君は、クラスでボス的存在と化した瑠璃花に、ちょっかいを出しては瑠璃花を怒らせた。
「佑君、瑠璃ちゃんにおもちゃ、はいして」
先生が叱る様に、佑君の両手を持ってしっかり目を見て説明している。
佑君はウンウンと頷きながらも、持ったおもちゃを離さない。
そのうち佑君は、瑠璃花と遊ぶ様になった。
瑠璃花がお友達の持っている物を欲しがって騒げば、佑君が取り上げて瑠璃花に渡した。すると取り上げられたお友達が泣くから、佑君は先生達に注意を受ける様になる。それでも佑君は、瑠璃花の望む物を、お友達から奪い取って差し出した。時には叩いたりしたから、佑君は毎日の様に先生に叱られた。
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