第10話 耀ちゃんも一緒に、映画見に行く?

 期末テストが終わった頃、何時もの様に机をくっ付けて、阿部達と弁当を食べていると、立川が


「瑠璃ちゃん、映画見に行かない?」


 と、ソボロに炒り玉子にほうれん草のベーコーン炒めを白米の上に乗せ、赤いタコさんウインナーが二個炒り玉子にめり込む様な、可愛らしい弁当を広げた瑠璃花に言っている。


「あっ?今話題の?」


「話題の話題の……」


 立川はコクコクと頷きながら言った。


「え〜?阿部君と行けばぁ?」


 瑠璃花は二人の事を知っている様で、ジト目で阿部を見つめて言う。


「阿部君さぁ……」


 すると立川が、同じ目つきで阿部を見る。


「あ?いや……だから愛菜ちゃ……立川ちゃん……行けるから……」


「はぁ?……土日は部活でしょ?」


「部活だけど、土日は早く終わるから……」


「試合とかあったらさぁ……」


「そ、それは……」


 活動が多い運動部所属の高校男子は、彼女とデートをしている暇は無いらしい?


「……とか言って愛菜ちゃん、阿部君の練習試合の応援とか行ってるよね」


 瑠璃花は一瞬にして、挙動不審になる二人を見比べて言った。


「耀ちゃんも一緒に、映画見に行く?」


 瑠璃花がちょっと、何時もと違う雰囲気を醸し出して言った。

 まるで高田先輩が、醸し出した雰囲気の様な……。

 だけど僕には、まったく違って感じる雰囲気……。

 ………絶対僕に拒否をさせない雰囲気……

 ………絶対僕が拒否をしない確信に満ちた……だから僕は瑠璃花を見つめて


「行く……」


 当然の様に答えたから、瑠璃花は微かにほくそ笑みを向けた。




 愛菜ちゃん・愛菜ちゃん・愛菜ちゃん・・・・・・




 それから直ぐにクラスが上がって、お部屋が変わった。

 新しいお友達も増えて、新年度とやらになった。

 そして泣いていた新しいお友達が、段々と泣く事が減って来る頃、瑠璃花が二歳の誕生日を迎えた。

 先生は、ハッピバースデーのお歌を歌ってくれる。

 そして乗りのいいお友達は、そのお歌に合わせて身体を揺すり手を叩いて、下手なりに歌えるお友達だっている。

 瑠璃花は、それは嬉しそうに顔を輝かせていた。

 お人形の様に白くて可愛い顔にある、少し紅のさした頰が可憐に輝いて見えた。

 そしてその大きくてつぶらで、黒目がちの瞳を僕に向けて微笑んだ。

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