第3話 俺は瑠璃色の瑠璃花さんに、告りたい訳ではない!

「奥田……」


 昼休みに阿部が窓から校庭を見ながら、それは遠い目をして言った。


「お前さ。瑠璃色の瑠璃花さんに告れ」


「はっ?何言ってんの?」


「はっ?じゃねーだろ?」


 遠い目をしていた阿部は真顔を作って、少し笑える小さいがつぶらな瞳を向ける。


「瑠璃色の瑠璃花さんは、何故だかお前が好きだ。だからさっさとくっ付いてくれ……そうじゃなきゃ、俺は気が気じゃなくて、勉強に身が入らない」


「ど、どう言う理屈だか、わかんないんすけど……」


 唐突に言われて狼狽える僕に、阿部の小さな瞳が鋭くなる。


「恋に理屈なんてねぇーんだよ奥田」


 阿部が真顔で言うから、ちょっと笑えなくもないが……。いやいや、それよりこの展開がおかしいだろう。


「……だったら阿部が告れば?」


「バッカか?奥田!俺は瑠璃色の瑠璃花さんに、告りたい訳ではない!」


 阿部は真剣に言うが、その真剣さが笑える。

 第一瑠璃花の前に付く、瑠璃色の……は一体何なんだ?と突っ込みを入れたくなった。入れようとした途端に


「……じゃないと、他のヤツに盗られてしまうぞ」


 阿部がガシリと僕の肩を掴んで詰め寄ったから、突っ込みを入れる処ではなくなった。


「瑠璃色の瑠璃花さんはモテるんだぞ」


 噛み締める様に言うから、僕は阿部を直視して


「知ってる……保育園の時からモテたから……」


 と答えた。


「そうか……二人は幼馴染だったな……」


 いやいや阿部、皆んなそう言うが、保育園で一緒だったヤツ等は皆んな、幼馴染という事になるぞ?

 小学校から一緒のお前もだ、阿部。



 瑠璃花・瑠璃花・瑠璃花・・・・・・




 瑠璃花はお喋りも上手だ。クラスには他に四人程いるが、ダントツの喋りっぷりだ。

 特に


「まんま」


 は瑠璃花の好きな言葉だ。

 何を指しても


「まんま」


 と言っている。

 ……が、それで先生達もお母さんも大喜びだ。

 そんなある日、僕がママとお部屋に入ると


「ようちゃん!ようちゃん、ようちゃん」


 と、飛び跳ねて叫んでいる。


「あらぁー瑠璃ちゃん、耀ちゃん好きねぇ」


 と勝手な事を先生は言っているが、瑠璃花の嬉しそうな表情は半端無い。


「えっ?もしかしてお前、僕を好きなのか?」


 僕はママにしがみついて、恐れを持って瑠璃花を見た。

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