第4話 瑠璃ちゃん〝ようちゃん〟の事好きだったよね?

 席替えで立川愛菜が隣になった。

 立川愛菜も同じ保育園の一人だから、瑠璃花と幼馴染ならば、立川とも幼馴染という事になる。

 そして僕の前に阿部が座っている。

 阿部は立川と瑠璃花が、席を替えればいいのにと煩いが、何だかんだと小中学校と一緒だったから、立川とも仲が良い。


「お前ら三人幼馴染って事?」


 昼食はなぜか机を四つくっ付けて、瑠璃花を交えて弁当を一緒に食べる様になって、阿部は大きな弁当を広げながら言った。

 この学校は購買があって、パンとかも置いてあるが、朝注文書に書いてクラスの外のポストに入れておくと、この学校出身のパン屋さんが、昼休みになると届けてくれるのだ。そのパンが抜群に上手いと評判で、弁当をやめて注文する生徒が増えているらしい。

 阿部は弁当の他にも、そこのパンを必ず一つ注文して食っている。

 今日はメロンパンを、四つに分けてくれた。

 意外と気配りのできる阿部である。


「なんか、一般的な幼馴染のイメージと違う気がするけど、幼馴染かなぁ?」


 瑠璃花が阿部のお裾分けメロンパンの、四分の一を手に取って言った。


 ……いや瑠璃花、たぶん他のクラスメイトからしたら、阿部も幼馴染みだぞ?……


 僕が言おうとしたら、


「そうそう同じ保育園でさ……瑠璃ちゃん〝ようちゃん〟の事好きだったよねー」


 立川が途方も無い事を言うから、阿部のみか僕も呆気にとられて固まってしまい、言葉なんて引っ込んでしまった。


「……だって〝ようちゃん〟可愛いんだもん」


 瑠璃花は、弾ける様な笑顔を向けて言った。





 耀・耀・耀・・・・・・



 長年保育士をしている、という人は凄い人だ。

 瑠璃花が僕を好きな事を的中させた、その眼力に脱帽しか覚えない。

 瑠璃花は、やっとハイハイができる様になった僕の側に寄って来る。

 そして、気に入りのガラガラ的なおもちゃを、僕が手にすると直ぐにそれを取り上げる。

 僕が


「返せよ」


 と言わんばかりに手を出すと、瑠璃花は僕を叩く。


「あなたの物は全て私の物よ」


 と、その黒目がちで大きくて、何時も潤んでいるような目が物語る。


「瑠璃ちゃん、耀ちゃんの物取ったらダメよー。どうぞして……」


 先生が言うと瑠璃花は僕を一瞥して、ヨチヨチとおもちゃを持ったまま歩いて行ってしまった。

 その後ろ姿の不恰好な事を、おまえは知らないだろう。





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