第16話 やるな耀ちゃん
「はっ……マジか。やるな耀ちゃん」
佑君は見下ろして、僕を見つめて言う。
「はぁ?いや……」
僕が佑君を見て、状況を説明しようとすると
「お、奥田、お前達本当は、付き合っていたのか?」
相変わらずの阿部が、驚く程に呆れる事を聞いてくる。
「はぁ?」
バカな阿部が、ギャグの様な返しをしているが、寝耳に水どころか途轍もない濡れ衣を着せられてる感しかない僕は、口を開けたきり、思う存分馬鹿にした顔を作って睨みつけてやるが、阿部は小さくつぶらな瞳を真剣に向けている。
「イヤー?耀ちゃんなら?あり得んと思ってたんだわ。瑠璃ちゃんが断る口実?的な?」
「断る口実?それは何の口実だ?」
全然僕より落ち着いている阿部が、其処はキチンと聞いている。
「えー?当然、付き合って欲しいって告白した時の?」
佑君は、もっともっと落ち着いている瑠璃花を見て言った。
「こ、告白したんだ?佑君……」
愛菜も、全然動ずる様子のない瑠璃花を見つめて言った。
「中学三年の夏休みだったっけ?」
「………塾の帰りに唐突にね?」
瑠璃花が、佑君を見て言った。
「そうそう……コンビニでアイス食べてて……」
「付き合っちゃおうか?俺達?……そしたら瑠璃花が『耀ちゃんと付き合ってるから無理』バッサリ……」
バッサリ感を大仰に出して、戯ける様に言った。
「………だって、どうせ耀ちゃんと付き合うもの」
瑠璃花は、ニコリと笑うと僕を見た。
こうちゃん・こうちゃん・こうちゃん・・・・・
瑠璃花は、僕と佑君を両手で手を繋ぎ、狭いお部屋を何度も周る。
「瑠璃ちゃん両手に花だねー」
窓から覗いて、他のお部屋の先生達が、笑いながら言って行く。
「
お部屋の先生達も朗らかに笑う。
そんな日々を経て、瑠璃花は或る日お姉ちゃんになった。
「瑠璃ちゃんおめでとう、お姉ちゃんになったんだね」
お部屋の先生達は、何回も瑠璃花に言うから、瑠璃花はとても嬉しそうだ。
「瑠璃ちゃん、弟ちゃんのお名前、言えるかな?」
「こうちゃん」
「こうちゃんって言うの?」
先生達が、瑠璃花に何人も聞いている。それを答えながら、瑠璃花はとても嬉しそうに笑顔を見せる。
「瑠璃ちゃん、こうちゃん可愛い?」
或る先生が窓越しに聞いた。
「うん。かあい」
「耀ちゃんとどっちが可愛い?」
瑠璃花は少しも考えもせずに
「こうちゃん」
と、満面の笑顔で答えた。
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