第15話 なんて恐ろしい呪文を唱えてんだよ!!

 ショッピングモールの上階にある、フードコートの一画にある店に僕達は入った。

 ウインドウには、パスタやピザやオムライスや、それは目につくビックサイズのハンバーグが並んでいた。


「ねー瑠璃ちゃん、ここのパンケーキ美味しいんだよ?」


「えっ?ほんと?」


「うん。あとでデザートにしよ?」


「えっ?そんなに食べれないよ」


 すると愛菜は、ニンマリと笑んで阿部を見た。


「阿部ちんも食べるでしょ?」


「おー、食えなくなった物は言って……幾らでも食えるから」


 ………なんか、本当に付き合ってる感を醸し出す二人だ………

 阿部のくせに………


「いらっしゃいませ」


 愛菜と阿部を、ジト目で見つめつつ思っていると、店員が水を持ってやって来た。


「えっ?マジでお前ら付き合ってんの?」


 メニューに視線を落としていると、店員が言ったので僕達は視線を上げた。


「えっ?」


 僕と瑠璃花と愛菜が、異口同音で声にする。


「えっ?佑君?」


 小学校は別になったが、中学でまた同じになった、木下佑馬がそこにいて、僕は同じクラスになった事はなかったが、二年生の時に同じクラスだった愛菜が名を呼んだ。




 人生の大先輩・保育士先生・・・・・・




 瑠璃花達は言葉も早くて、ご本や紙芝居とかも理解ができる。

 一年近く違いがある僕は、最初は皆んなと一緒に座って聞いているが、直ぐに飽きて違う遊びを始める。

 すると先生達は、僕を抱いて本に集中させようと四苦八苦だ。

 何せ落ち着いて聞いている事も苦痛だ。だが瑠璃花は夢中になって聞いていて、時たま先生のお話を遮る様に


「象さん」


 とか


「うさぎさん」


 とか、本を指差して言っている。

 そしてその隣には必ず、佑君が座って瑠璃花と同じ事を言う。

 僕は先生のお膝の上から、瑠璃花と佑君の間に座ろうとして、佑君に小突かれ瑠璃花に


「ダメ〜」


 と言われて、それが悲しくて瑠璃花を叩いたりした。

 赤くなった瑠璃花の顔を、先生達はタオルで冷やして、そしてお迎えに来た瑠璃花のママに、頭を下げながら説明をする。

 ある日僕のママと、瑠璃花のママが一緒にお迎えに来た。

 先生達は特別僕が瑠璃花を、傷つけていると告げたりしないが、お喋りの上手な瑠璃花は、いつも僕の名を告げているらしい。


「ごめんなさいね………」


 と詫びる僕のママだが、瑠璃花のママは大きく首を振る。


「瑠璃花が、耀ちゃんにしつこい事してんのよ」


「………でも大事な女の子の顔に………」


 ママは、ジッと瑠璃花を見つめると


「瑠璃ちゃん、こんなに可愛いかったら有り得ないと思うけど、もしも結婚できなかったら、耀が貰うからね……責任取るから……」


 ママ!何て恐ろしい呪文を唱えてんだよ!!


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