第7話 お前らいい雰囲気だったって?だ〜が!俺は絶対許さんからな

「奥田!」


 阿部は部活のユニフォームを身に纏い、物凄く真顔を作って帰り支度をしている僕に近づいて来る。

 それもかなり、声のトーンを落として……。


「お前……」


 阿部は言いかけて、珍しく僕の腕を掴んで教室の窓際の奥に押しやった。


「高田先輩と付き合うの?」


 もっと声を落として囁いた。


「えっ?なんで?」


「部活の先輩がチラッとな……チラッと……お前らいい雰囲気だったって……だ〜が!俺は絶対許さんからな」


 阿部は急に声を荒げて僕を見る。

 その顔が物凄く真剣で、そして小さくつぶらな瞳がほんのちょっと大きくなって、まるで鳩が豆鉄砲……の諺を思い出してしまう程だ。

 ……それに、お前に許してもらわんでもいいんだが……。

 妙な突っ込みを入れながら、思わず凝視だ。


「……高田先輩には言われたが……」


「は?」


「まっ、冗談はさておき……的な……」


「バーカか奥田?」


 阿部は、もっともっと声を荒げて僕を罵った。




 高田・高田・高田先輩・・・・・・



 瑠璃花は


「まんま」


 が好きだ。

 よく食べよく食べ、そして順調に成長をきたす。

 だからママゴト遊びのジュースやピクニックセットには、異常な思い入れが存在するのだろう。

 お友達が手にしていようものなら、直ぐ様手にして横取りをする。

 大体女子が瑠璃花といざこざを起こすのは、それが原因の事が多い。

 あとは……。


「いやぁー」


 瑠璃花が先生に抱かれて、ひっくり返ってだだをこねるのは


「今日は……耀ちゃんは、茉由ちゃんと遊びたいんだって……」


「いやぁーようちゃーん、ようちゃーん」


 瑠璃花は先生に抱かれながら、必死の形相で僕に手を差し伸ばす。

 瑠璃花……たったお部屋の中で、クラスの女子の茉由ちゃんとお散歩遊びしているだけで、そんなに泣き叫ばないでくれ……。

 僕は大きな溜め息もどきを吐いて、それでも瑠璃花より優しい茉由ちゃんと手を繋いで、やっと歩き始めた歩をゆっくり進めた。


 ……お前と歩いたら絶対転ばされる……


 事を僕は知っている。

 だから絶対お前とは、手を繋いで歩かない。

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