初対決!

さとるはしばらく考えていた。

そして、瑠璃にこう言った。

「表で見張っているようだから、裏口からこっそり出ようか。

僕が家まで送って行ってあげるよ。」

瑠璃は笑顔になった。

「ありがとう、お兄ちゃん。」

そして、こう尋ねた。

「お兄ちゃん、お名前は?」

さとるは、自分が名乗ってないことに気付いて、恥ずかしそうに答えた。

「ごめんね、るーちゃん。僕の名前は、天上さとるっていうんだ。よろしくね。」

「さとる・・さとくんでいいかな?」

「もちろん。」

さとるは、笑顔で頷いた。

「じゃあ行こうか、るーちゃん。送っていくよ。」

「うん、さとくんありがとう。」

2人は裏口からこっそり抜け出した。

「さっ、早く見つからないうちに、お家に帰ろう。」

「うん。」

その時だった。


「甘いわ!」

見ると、黒ずくめの男二人が、目の前に立っているではないか。

同じ顔をしているようだから、双子に違いない。

「お前達、何者だ?!」

さとるは、とっさに瑠璃を庇った。

「アタシ達は、ブラック&ブラーック!」

「おーほっほっほ!」

ブラック&ブラックと名乗ったその男達は、両手をつなぎ、意味のないポーズをとった。

「何、この人達・・・。」

さとるは、むしろ笑いをこらえるかのように瑠璃に言った。

「知らない。」

瑠璃も笑っている。

ところが。

「天上さとる、新堂瑠璃、まとめて誘拐させてもらうわよ!」

と、ブラック&ブラックは言ったのだ。

「え?! 僕もなの?」

何で名前を知ってるのか・・。

「当たり前デショ!」

さとるは驚いた。なぜ自分まで誘拐されなければならないのか謎だった。


とりあえず、このおねぇコンビから逃げなければならない。さとるは言った。

「逃げよう、るーちゃん。」

「行こうー、さとくん。」

2人は手をつないで走り出した。後ろから、

「お待ち―!」

と、変なコンビの声がするが、気にしていられない。

しかし、間が悪いことに、瑠璃が石につまづいて、転んでしまった。

「わーん、ごめんね。」

「るーちゃん! だいじょうぶ?」

膝をすりむいて、血が出ている。走ることは不可能。おんぶするにも、追いつかれてしまう。

「そこまでよ、お二人さん。おとなしくつかまりなサイ!」

あーあ、追いつかれた。


万事休すか? さとるはそう思った。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る