さとくんの決意

その頃。間宮コンツェルンでは。

「何?ブルーレッドもハイジャックに失敗しただと?!」

「は、はい・・。」

部下の一人が言った。

「仕方ない、こうなったら、新堂の一人娘を先に始末し、屋敷を破壊せよ。」

「かしこまりました。」

その時、武の兄の、武流がちょうどその部屋を通りかかる。

「しかし、あのガキには、武ぼっちゃんもついていらっしゃいますが・・。」

「構わん、一緒に始末しろ。」


武・・武が危ない!


それは二年前の事だ。

「もう我慢できへん。こんな家、出てったるわ。」

「私に歯向かうと、後悔することになるぞ。武。」

「父ちゃんと、母ちゃんがいなくなってから、この会社を自分の物のようにしおって。あんちゃんが可愛そうじゃないか。まさか、乗っ取る気じゃ、ないだろうな。」

武流がそれを制した。

「武、何てこというんや。叔父さんは、俺達の世話をしていてくれるというのに。」

叔父が怒鳴った。

「出ていけ! お前の顔など、見たくない。」


まさか叔父さんが、新堂財閥だけでなく、武まで狙っているなんて・・・


嫌な雨が、降ってきた。武流は、武の元へ急ぐ。

その時、武も、妙な胸騒ぎに襲われていた。

「武、どうした?」

圭二が尋ねた。

「ああ、何だか、嫌な予感がするんや。あんちゃんの身に、なにか起こってなければええんやけど・・・。」

その時、さとるが言った。

「もう我慢できないよ。僕、その叔父さんに話をつけてくるよ!」

「え? さとくん大丈夫か! 叔父貴はそんな生易しい人間じゃあらへんで。」

「これ以上、るーちゃんにつらい思いをさせたくないんだよ。」

「なら俺も行くわ、さとくん。」

「たけちゃん・・・。」

それを聞いた圭二が言った。

「見直したよ、さとくん。俺もお供するよ。」

「けいちゃん、みんなありがとう!」


「そうやない。俺は本当は、叔父貴に対抗するのが怖かったんや。それが三人の未来をぐちゃぐちゃにしてしまった・・。兄貴もおらん。俺のせいや・・。堪忍してや。」

嫌な雨。そして、スマホが鳴った。北条さんからだ。

武が真っ先にスマホに出た。

「武君か・・。いま、屋敷に怪我をした青年が現れて、看病に当たっている。幸い、命に別状はないと思うが、武、武と呼んでいる。急いで屋敷に来てほしい。」

「あんちゃんや、すぐ行くで!」

「皆も一緒に屋敷に行ってくれるか?」

『もちろん!』

「おおきに、ありがと。」

「そうだよ、屋敷で、北条さんたちの知恵も借りようよ。」

さとるが思いついたように言った。

「るーちゃんも守れるしな、さとくん。」

圭二が言った。そして、努めて冷静に、

「武! 屋敷へ行くぞ!」

と、言った。

「はよ行かな、あんちゃんが!」

焦る武だった・・。



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